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第二章
5.お迎え
しおりを挟む「お嬢様、本当にお綺麗です!」
「ありがとう。ふふ、少し照れ臭いわね」
お祖父様に買っていただいたドレスに着替え、髪も結い直してもらい、なんだかお姫様になった気分です。
コンコンコン
「お嬢様のお支度は終わりましたか?」
マルクがそんなことを尋ねるなど珍しいと思っていると、
「マイルズ様達がお迎えにいらっしゃいました」
続いた言葉に驚いてしまいました。
だって、『達』って誰。
「……ナタリー。誰だと思う?」
「マイルズ様とご一緒なら、やはりパスカル様では?」
そうよね。でも、あのパスカルが?と疑問に思う私はおかしくないと思うの。
そう思いながらも扉に向かうと、
「わっ、ブランシュ綺麗だね!」
「…ありがと。マイルズも格好良いわ」
無理に兄妹として振る舞うことを止めてしまうと、どういう会話が正解なのかが分からなくてギクシャクしてしまいます。
「初めての晩餐なんて緊張するからみんなで一緒に行こうよ」
「……分かった」
パスカルもそう言って無理矢理連れて来たのかしら。ものすごく仏頂面です。同じようにミュリエルも迎えに行くと、案の定驚いていました。
マイルズは案外と心臓が強いのかもしれません。
「……そういえば偶然、レイモン様のご次男のロラン様にお会いしました。明るくて気さくな方でしたよ」
何となく無言が辛くて、ロラン様のことを話しました。
「本当?よかった~。公爵家の子供ってどんな子なのか心配だったんだよね」
緊張するからというのはどうやら嘘では無かったみたい。
「ロラン様は剣術がお好きなのですって。二人も習ったりしているの?」
「ああ、パスカルが得意だよ」
「………そんなことないし」
「僕より強いじゃないか」
「マイルズが弱いだけだろ。うちで一番強いのはお前の騎士だよ」
お前の騎士──ってマルクのこと?
「マルクは侍従よ?」
「それでも一番はアイツだ」
「パスカルはよく稽古を付けてもらってたもんね」
マルクがそんなに強かったなんて。
……あれ?もしかして、パスカルが私に対しては敵対心を持ってるのって、マルクが私の専属になったせいもあったりするの?
チラリとマルクを見てみたけど、素知らぬ顔をしています。
「……今度、ロラン様の稽古を見学させてもらえないか聞いてみようと思うのだけど。
もし了承を得られたら、…その、みんなで一緒に行かない?」
まだロラン様に話してもいないのにと思いながらも、つい誘ってしまいました。
「うん!行ってみたい!」
「………どうしてもって言うなら行ってもいいけど」
「パスカルは素直じゃないなあ」
「うるさい」
よかった。ちょっとは距離が縮まるかな。
「………わたし、行かない」
「そっか」
声は掛けたけど、下手に出てまで来て欲しいとは思わないから断るならそこまで。年上なのに冷たいかな?とも思うけど、仕方がないと割り切ります。
すると傷付いた顔をされてしまいました。
今まではこうやってちょっと拗ねてみせたら、双子達がチヤホヤと甘やかしてご機嫌を取っていたのかなと思えてすっかりと気持ちが冷めてしまいます。
「ミュリエル、ここは僕達の家じゃないよ」
「……知ってるもん」
「ちゃんと敬語でごあいさつできるね?」
「…はい」
意外です。マイルズがちゃんとしたお兄さんです。ただの甘やかしではなかったのかな。
「ミュリエルには可哀想だとは思うけど、僕達も2週間しか一緒にいられないんだ。早くここでの暮らしに慣れるように頑張ろうね」
「……」
ミュリエルはまだ6歳なんだよね。
信頼できるのが双子だけなら……もう少しだけ優しくしてあげなきゃ駄目かしら。
それとも私に優しくされるのは嫌かな。
自分より幼い子なんてミュリエルが初めてなので扱いが分からなくて困ってしまうわ。
「ほら」
パスカルがミュリエルに手を差し出しました。
「……にいさま、行っちゃヤダ」
「ごめんな」
ぎゅっとパスカルの手を握り、ぽつりと泣き言を言うミュリエルに何となく胸がざわつきます。
すると、何故かパスカルがこちらを振り向きました。
「なに?」
「……べつに」
「ブランシュも手を繋ぎたいか聞きたいって」
「!」
ブワッと真っ赤になったパスカルが口をパクパクさせています。……まさか本当に?
どうして止めようと言ったのに兄振ろうとするのよ。逆に反応に困ってしまう。
「パスカルったらいつからそんなに格好付けになったの?僕、知らなかったよ~」
「ぅうるさいっ!僕は何も言ってないっ!!」
パスカルは真っ赤になって怒ってるし、ミュリエルは泣きそうな顔をしながら私を睨み付けてくるし、マイルズは楽しそうに揶揄ってるし。
何これ。たった数分の間にこんなにも揉めるものなの?
「…………子どもって疲れる」
後ろでマルクが「お嬢様もまだ子どもですよ」と指摘してくれたけど、返事はしませんでした。
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