29 / 38
【番外編】
はじめまして 【前編】
しおりを挟む
今日はモニカさんが遊びに来てくれる。
ウィルフレドのお祝いと、それとは別で報告したいことがあるみたい。何かしら?
「奥様、モニカ様がお見えになりました」
「ありがとう、今行くわ」
よかった、ウィルがご機嫌だわ。楽しそうに手足をパタパタ動かしている。そろそろ3ヶ月、ぷくぷくのほっぺが可愛い。
「ウィル、お母様のお友達が来てくれたわ。
とっても美人さんなのよ。一緒に行きましょうか」
ウィルを抱き上げると、嬉しそうに笑った。思わずほっぺにキスしてしまう。
「あなたの笑顔は本当に素敵ね。さぁ、モニカさんをメロメロにしに行きましょう」
「アリーチェ、おめでとう。そちらの天使様にもご挨拶していいかしら?」
そう言ってくれたモニカさんはしばらく会わないうちに更に綺麗になった気がする。
というか、その人は誰。
モニカさんの隣に番犬のような黒髪の男がいる。
「あなた誰?」
「モニカの夫」
「……は?」
おっと……夫?本当に?!
「えっ?!ちょっと会わない間に何があったの!4ヶ月くらい?それで恋人じゃなくて夫ができるって!」
「もう、アリーチェったら。少し落ち着いて?」
え、無理。驚き過ぎて質問が止まらない。
「んっ、ごめんなさい。じゃあひとつだけ。
……モニカさん、幸せ?」
少し恥ずかしそうな、でも花が綻ぶような優しい笑顔。なんだ、言葉はいらないかも。
「ええ、幸せよ」
「そっか、それならよかったわ」
うん、嘘じゃない。モニカさんの心からの笑顔だもの。モニカさんにとって幸せになれる相手なのだろう。
「ご結婚おめでとうございます。
先程は失礼な態度を取ってごめんなさい。私はアリーチェです。モニカさんの友人なの。あなたとも仲良くなれると嬉しいわ」
「……アベルだ。祝いの言葉をありがとう」
ずいぶん無愛想な人ね。でも悪意は感じないし、ちゃんとお礼も言ってくれたし。
「さて、次は私の天使くんの番ね。
ウィルフレドよ。もう少しで3ヶ月になります。よかったら抱っこしてあげてください」
「……俺が?」
「はい、もちろんモニカさんもね!あ、ヨダレに気を付けて。はい、タオルよ」
少しだけ驚いた表情になった。やっぱり感情が表に現れにくいだけみたいね。
「すげ、ちっちゃい……」
赤ちゃんと触れ合うのは初めてなのかしら。ぎこちない感じが微笑ましい。
「モニカ」
モニカさんを呼ぶ声が優しい。その眼差しと声でモニカさんを大切に思っていることがよく分かる。
いい出会いがあってよかったわ。
あ、ガヴィーノどんまい。
「……可愛い。ウィルフレド様はじめまして。モニカよ」
アベルさんからゆっくりとウィルフレドを渡される。そして、とても愛おしそうに名前を呼び優しく頬にキスをした。
「あっ、ごめんなさい、つい!」
「しちゃいますよね、キス。私もなんです。抗えないんですよ!この子には皆メロメロですから」
今、モニカさんがどういう思いを込めてキスをしたかは聞かない。
エミディオ様そっくりのウィルフレド。もしかしたらモニカさんがずっと願っていた赤ちゃんの姿だったかもしれない。
けれど後悔ではないと分かっている。ただ、忘れられない感傷が残っていて当然だと理解しているから。
モニカさんが少しホッとした顔をする。
「それにしてもエミディオそっくりね。アリーチェ要素はどこにいったの?少し残念だわ」
「そうですか?余計に可愛いと思うけど」
「……アンタは変わってるな」
突然のアベルさんからの言葉に、あなたには言われたくない、と言ってしまいそうになるが何とか踏みとどまる。
「そうですか?」
「ああ、会ったばかりの俺なんかに赤ちゃんを抱かせるなぞ怖くないのか」
「何が怖いのです?あ、無表情だから?でも、残念ながら私の夫は眉間にシワがある強面さんなので、表情筋が固いくらいでは怖くないですね」
なんなら身長だって私より30cmも大きいし。
彼に比べたら小さくて細身のアベルさんは何も怖くない。
「だから言ったでしょう。アリーチェは素敵な子なの。身分なんて気にしないわ」
「……悪かった」
ああ、そういうこと。
「平民だから、ですか?どちらかと言うと笑顔で武装してお腹真っ黒の貴族の方が怖いですよ。殴ると問題になるし。それでも本当に失礼な人とは戦いますけどね」
「いや、なんで殴るんだよ」
「え、エミディオ様みたいに蹴り飛ばした方がいいですか?でもスカートなので流石に叱られるかなと」
「……攻撃しないという考えはないのか」
「攻撃は最大の防御ですからね」
なんだか呆れてる?でも、この人には素直に話した方が分かり合える気がするし。
「もともと父に嫌われて平民並みの生活を強いられて来ましたし、離婚したら平民になって他国に行くつもりでした。だから身分で相手を判断はしませんよ」
「ツッコミどころ満載だけど、ありきたりな貴族令嬢だと馬鹿にして悪かったな。さすがモニカの友人だ。これからよろしく」
おお!すべてはモニカさん基準ですか。でも、私もモニカさんとはずっと仲良くしたいので番犬に認められてひと安心かな。
モニカさんは素晴らしい護衛を手に入れたわ。
「ええ、よろしくね」
ウィルフレドのお祝いと、それとは別で報告したいことがあるみたい。何かしら?
「奥様、モニカ様がお見えになりました」
「ありがとう、今行くわ」
よかった、ウィルがご機嫌だわ。楽しそうに手足をパタパタ動かしている。そろそろ3ヶ月、ぷくぷくのほっぺが可愛い。
「ウィル、お母様のお友達が来てくれたわ。
とっても美人さんなのよ。一緒に行きましょうか」
ウィルを抱き上げると、嬉しそうに笑った。思わずほっぺにキスしてしまう。
「あなたの笑顔は本当に素敵ね。さぁ、モニカさんをメロメロにしに行きましょう」
「アリーチェ、おめでとう。そちらの天使様にもご挨拶していいかしら?」
そう言ってくれたモニカさんはしばらく会わないうちに更に綺麗になった気がする。
というか、その人は誰。
モニカさんの隣に番犬のような黒髪の男がいる。
「あなた誰?」
「モニカの夫」
「……は?」
おっと……夫?本当に?!
「えっ?!ちょっと会わない間に何があったの!4ヶ月くらい?それで恋人じゃなくて夫ができるって!」
「もう、アリーチェったら。少し落ち着いて?」
え、無理。驚き過ぎて質問が止まらない。
「んっ、ごめんなさい。じゃあひとつだけ。
……モニカさん、幸せ?」
少し恥ずかしそうな、でも花が綻ぶような優しい笑顔。なんだ、言葉はいらないかも。
「ええ、幸せよ」
「そっか、それならよかったわ」
うん、嘘じゃない。モニカさんの心からの笑顔だもの。モニカさんにとって幸せになれる相手なのだろう。
「ご結婚おめでとうございます。
先程は失礼な態度を取ってごめんなさい。私はアリーチェです。モニカさんの友人なの。あなたとも仲良くなれると嬉しいわ」
「……アベルだ。祝いの言葉をありがとう」
ずいぶん無愛想な人ね。でも悪意は感じないし、ちゃんとお礼も言ってくれたし。
「さて、次は私の天使くんの番ね。
ウィルフレドよ。もう少しで3ヶ月になります。よかったら抱っこしてあげてください」
「……俺が?」
「はい、もちろんモニカさんもね!あ、ヨダレに気を付けて。はい、タオルよ」
少しだけ驚いた表情になった。やっぱり感情が表に現れにくいだけみたいね。
「すげ、ちっちゃい……」
赤ちゃんと触れ合うのは初めてなのかしら。ぎこちない感じが微笑ましい。
「モニカ」
モニカさんを呼ぶ声が優しい。その眼差しと声でモニカさんを大切に思っていることがよく分かる。
いい出会いがあってよかったわ。
あ、ガヴィーノどんまい。
「……可愛い。ウィルフレド様はじめまして。モニカよ」
アベルさんからゆっくりとウィルフレドを渡される。そして、とても愛おしそうに名前を呼び優しく頬にキスをした。
「あっ、ごめんなさい、つい!」
「しちゃいますよね、キス。私もなんです。抗えないんですよ!この子には皆メロメロですから」
今、モニカさんがどういう思いを込めてキスをしたかは聞かない。
エミディオ様そっくりのウィルフレド。もしかしたらモニカさんがずっと願っていた赤ちゃんの姿だったかもしれない。
けれど後悔ではないと分かっている。ただ、忘れられない感傷が残っていて当然だと理解しているから。
モニカさんが少しホッとした顔をする。
「それにしてもエミディオそっくりね。アリーチェ要素はどこにいったの?少し残念だわ」
「そうですか?余計に可愛いと思うけど」
「……アンタは変わってるな」
突然のアベルさんからの言葉に、あなたには言われたくない、と言ってしまいそうになるが何とか踏みとどまる。
「そうですか?」
「ああ、会ったばかりの俺なんかに赤ちゃんを抱かせるなぞ怖くないのか」
「何が怖いのです?あ、無表情だから?でも、残念ながら私の夫は眉間にシワがある強面さんなので、表情筋が固いくらいでは怖くないですね」
なんなら身長だって私より30cmも大きいし。
彼に比べたら小さくて細身のアベルさんは何も怖くない。
「だから言ったでしょう。アリーチェは素敵な子なの。身分なんて気にしないわ」
「……悪かった」
ああ、そういうこと。
「平民だから、ですか?どちらかと言うと笑顔で武装してお腹真っ黒の貴族の方が怖いですよ。殴ると問題になるし。それでも本当に失礼な人とは戦いますけどね」
「いや、なんで殴るんだよ」
「え、エミディオ様みたいに蹴り飛ばした方がいいですか?でもスカートなので流石に叱られるかなと」
「……攻撃しないという考えはないのか」
「攻撃は最大の防御ですからね」
なんだか呆れてる?でも、この人には素直に話した方が分かり合える気がするし。
「もともと父に嫌われて平民並みの生活を強いられて来ましたし、離婚したら平民になって他国に行くつもりでした。だから身分で相手を判断はしませんよ」
「ツッコミどころ満載だけど、ありきたりな貴族令嬢だと馬鹿にして悪かったな。さすがモニカの友人だ。これからよろしく」
おお!すべてはモニカさん基準ですか。でも、私もモニカさんとはずっと仲良くしたいので番犬に認められてひと安心かな。
モニカさんは素晴らしい護衛を手に入れたわ。
「ええ、よろしくね」
2,368
お気に入りに追加
3,894
あなたにおすすめの小説
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。
※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
※単純な話なので安心して読めると思います。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる