6 / 38
5.娘か猫か (休日最終日)
しおりを挟む
朝起きるとアリーチェが絡まってる。
こいつはなぜくっついて寝るのが好きなんだ?
この一週間は子作りの為と伝えてしまったせいで、アリーチェは毎日共寝を要求してくる。
女性としての恥じらいはないのだろうか。
だんだんこの娘が側にいることが馴染んできてしまった。
「まだ一週間なのにな」
つい、頭を撫でてしまう。
不憫な家庭環境を聞いてしまったからだろう。庇護欲が増してしまった気がする。そんなに幼くは無いが、この子が貰えなかったであろう家族の愛情を与えたいと思うのはおかしいのだろうか?
娘……子供か……
モニカとの性交で避妊はしていない。だが、すでに11年。これだけの期間子どもが出来ないということは、どちらかに問題があるのだろう。
得られない子供。
だから余計にアリーチェが可愛く見えるのかもしれないな。
「ん~」
「そろそろ起きろ、アリーチェ」
「……おはよ」
「今日は君の希望していたパンケーキだぞ」
「あ、起きなきゃ!」
やはり子供だ。くっつかれて可愛いとは思うが性欲はわかない。娘か猫か。まぁ可愛いから良しとしよう。
「ん~!ふわふわで美味しい!」
「ほら、クリームがついてる」
「ん、ありがと」
うちの娘は手が掛かる。
口元に付いたクリームを拭いていると、
「……あなた本当にエミディオなの?」
「母上?突然どうしたんですか」
今日は天気がいいからと庭にある東屋で朝食をとっていた。まさかこんなに早い時間に母上が来るとは……
アリーチェも口の中の物を飲み込もうと慌てている。
「……ごめんなさいね、食事中に。帰るわ」
「え、お義母様?!まだ来たばかりなのに!」
「そうですよ、用があったから来たんじゃないんですか?」
「……いえ、もう確認出来たから大丈夫よ。……まさか本当に溺愛してるだなんて思わなかったわ」
溺愛……この娘か。確かにそうか?
「うちの子は可愛いでしょう」
「どうしてそんなに自慢気なの。なんだか腹立つ顔ね。まぁ、仲がいいのはよかったわ。
こんな無愛想なおじさんの妻になってくれてありがとうね」
「そんなことないです。エミディオ様は優しいですよ」
「……優しい……この顔が?」
私の顔がどれだけ怖いと言うんだ。
「でもまぁ、これだけ仲が良ければ早くに赤ちゃんが出来るわね。安心したわ」
「……いえ。まだ二人での生活を楽しみたいので子供はいりません」
「何を言っているの。後継ぎは早いにこした事がないわよ。アリーチェさんが嫌な思いをする前に頑張りなさいな」
「駄目です。見てください、この華奢な体を!子供なんて産んだら死んでしまいますよ。
もう少し大きくなってからでいいんです。後継ぎよりうちの子の方が大切ですから!」
やっとガリガリの子猫から脱したばかりなんだぞ!毛艶は良くなったがまだ体重が軽過ぎる。
「大きくって、もう17歳でしょう?」
「まだ17歳です。無理はさせられません。絶対に駄目です」
「……そんな子供を妻にしたのは貴方でしょう。幼女趣味だとでもいうのかしら!」
「な!幼女じゃありません!でも、まだ守るべき娘です。これ以上何を言っても無駄だから止めてくださいね」
「どうしてあなたはそんなに頑固者なの!もういいわ、帰ります!」
「どうぞお気を付けて」
何だアレは。これが噂の早く孫の顔を見せろ攻撃か。絶対に防いで見せるがな!
「……エミディオ様、申し訳ありません」
「なぜ君が謝るんだ?」
「だって、お義母様は……」
「謝るのは私だ。嫌な思いをさせてすまない。ほら、まだ残ってるよ、食べなさい」
これからはいっそ、ウチの可愛い娘は見せてやらん!くらいにすればいいかもしれないが……
「どうしたんですか?」
「いや、君を箱入り娘として扱おうかとも思ったが、行動を束縛するのは良くないからな。他に何か良い手はないかと考えていた」
「アハハッ、私が箱入り娘!」
「そう。大切に大切に育てないとな」
「……あなた絶対に親バカになって子どもに鬱陶しいって言われちゃうタイプね」
「!!」
「……ちょっと羨ましいかも」
アリーチェは意外と寂しがり屋だ。だからくっついて寝るのか。
「……ちょっと。エミディオ様は撫でるのが下手くそよ」
「撫でるのに上手い下手があるのか?」
「もう、髪型が崩れた!」
「悪かったよ」
なぜあの男はもっとこの子を大切にしなかったのか……いっそ、私とモニカの子供になれたらいいのにな。
こいつはなぜくっついて寝るのが好きなんだ?
この一週間は子作りの為と伝えてしまったせいで、アリーチェは毎日共寝を要求してくる。
女性としての恥じらいはないのだろうか。
だんだんこの娘が側にいることが馴染んできてしまった。
「まだ一週間なのにな」
つい、頭を撫でてしまう。
不憫な家庭環境を聞いてしまったからだろう。庇護欲が増してしまった気がする。そんなに幼くは無いが、この子が貰えなかったであろう家族の愛情を与えたいと思うのはおかしいのだろうか?
娘……子供か……
モニカとの性交で避妊はしていない。だが、すでに11年。これだけの期間子どもが出来ないということは、どちらかに問題があるのだろう。
得られない子供。
だから余計にアリーチェが可愛く見えるのかもしれないな。
「ん~」
「そろそろ起きろ、アリーチェ」
「……おはよ」
「今日は君の希望していたパンケーキだぞ」
「あ、起きなきゃ!」
やはり子供だ。くっつかれて可愛いとは思うが性欲はわかない。娘か猫か。まぁ可愛いから良しとしよう。
「ん~!ふわふわで美味しい!」
「ほら、クリームがついてる」
「ん、ありがと」
うちの娘は手が掛かる。
口元に付いたクリームを拭いていると、
「……あなた本当にエミディオなの?」
「母上?突然どうしたんですか」
今日は天気がいいからと庭にある東屋で朝食をとっていた。まさかこんなに早い時間に母上が来るとは……
アリーチェも口の中の物を飲み込もうと慌てている。
「……ごめんなさいね、食事中に。帰るわ」
「え、お義母様?!まだ来たばかりなのに!」
「そうですよ、用があったから来たんじゃないんですか?」
「……いえ、もう確認出来たから大丈夫よ。……まさか本当に溺愛してるだなんて思わなかったわ」
溺愛……この娘か。確かにそうか?
「うちの子は可愛いでしょう」
「どうしてそんなに自慢気なの。なんだか腹立つ顔ね。まぁ、仲がいいのはよかったわ。
こんな無愛想なおじさんの妻になってくれてありがとうね」
「そんなことないです。エミディオ様は優しいですよ」
「……優しい……この顔が?」
私の顔がどれだけ怖いと言うんだ。
「でもまぁ、これだけ仲が良ければ早くに赤ちゃんが出来るわね。安心したわ」
「……いえ。まだ二人での生活を楽しみたいので子供はいりません」
「何を言っているの。後継ぎは早いにこした事がないわよ。アリーチェさんが嫌な思いをする前に頑張りなさいな」
「駄目です。見てください、この華奢な体を!子供なんて産んだら死んでしまいますよ。
もう少し大きくなってからでいいんです。後継ぎよりうちの子の方が大切ですから!」
やっとガリガリの子猫から脱したばかりなんだぞ!毛艶は良くなったがまだ体重が軽過ぎる。
「大きくって、もう17歳でしょう?」
「まだ17歳です。無理はさせられません。絶対に駄目です」
「……そんな子供を妻にしたのは貴方でしょう。幼女趣味だとでもいうのかしら!」
「な!幼女じゃありません!でも、まだ守るべき娘です。これ以上何を言っても無駄だから止めてくださいね」
「どうしてあなたはそんなに頑固者なの!もういいわ、帰ります!」
「どうぞお気を付けて」
何だアレは。これが噂の早く孫の顔を見せろ攻撃か。絶対に防いで見せるがな!
「……エミディオ様、申し訳ありません」
「なぜ君が謝るんだ?」
「だって、お義母様は……」
「謝るのは私だ。嫌な思いをさせてすまない。ほら、まだ残ってるよ、食べなさい」
これからはいっそ、ウチの可愛い娘は見せてやらん!くらいにすればいいかもしれないが……
「どうしたんですか?」
「いや、君を箱入り娘として扱おうかとも思ったが、行動を束縛するのは良くないからな。他に何か良い手はないかと考えていた」
「アハハッ、私が箱入り娘!」
「そう。大切に大切に育てないとな」
「……あなた絶対に親バカになって子どもに鬱陶しいって言われちゃうタイプね」
「!!」
「……ちょっと羨ましいかも」
アリーチェは意外と寂しがり屋だ。だからくっついて寝るのか。
「……ちょっと。エミディオ様は撫でるのが下手くそよ」
「撫でるのに上手い下手があるのか?」
「もう、髪型が崩れた!」
「悪かったよ」
なぜあの男はもっとこの子を大切にしなかったのか……いっそ、私とモニカの子供になれたらいいのにな。
2,825
お気に入りに追加
3,906
あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる