ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

文字の大きさ
上 下
4 / 38

4. おとなしくしましょう (試合後は休日)

しおりを挟む
「エミディオ様の今日のご予定は?」
「私達は新婚だ。父から一週間の休みをもらってるよ」
「一週間も?その間は何をするのですか?」
「アリーチェ。休みという言葉の意味が分かるかい?ゆっくりと心と体を休める事だ」


一週間も休んだら二度と動けなくなるわよ。


「どうしてそこまで休みを嫌がる?」
「え……暇過ぎます……」
「……言いたくなかったのだが……この一週間は子作りの為の休みだ。残念ながらあまり外には出られないかな」
「!」
「それと。今朝、破瓜の印を付けたよね」
「…はい」
「血が出るということは怪我と同じだ。だから今日は?」
「……大人しくしてます」


まさかの暇か。この人とずっと一緒に?


「愛人さんは大丈夫なんですか?」
「さすがに仕方がないよ。それとモニカだ」
「モニカさん……私って会ってもいいのかな」


挨拶はした方がいいのだろうか。それともマウントを取ってると思われちゃう?


「まさか君から会いたいと言われるとは思わなかったな。平気なのか?」
「え、だって偽妻だし」
「確かに。そうだな、さすがにすぐには無理だけど予定しておこう。今日は室内で出来ることをしようか。何がいい?」


この人は本当に変な人だわ。最初の刺々しさはどこ行ったのよ。


「ねぇ、どうして棘が無くなったの?」
「君は本当にストレートに聞くな」
「だって口に出さないと分からないじゃない」
「まぁいいけどな。最初は申し訳無いけど、あの男の娘だから似ているのかと思って警戒してた」
「あぁ、なるほど。理解したわ」


アレの娘だからね。確かに、エミディオ様はよく分かってるわ。


「怒らないのか」
「怒ってほしいのですか」
「……君を殴ったのは父親なのか?」


なぜ知ってるのかしら。ストーカーか。


「声に出てるぞ。ストーカーじゃないからな。私に殴られると思って口を閉じて待っていただろう。
普通は顔を庇うとか逃げようとする。そうしないで受けようとするのは、逃げると倍以上にやられるからだろう」


凄いわ、探偵みたい。


「まあそうですね、この通りお口が素直なので」
「……殴られないように黙っていようとは思わないのか」
「だって、殴られない代わりに私の心が殺されます。そっちの方が嫌だわ」


あの男に唯々諾々と使われるのはごめんだわ。


「……気になっていたのだが……これ」


そう言って首すじを撫でる。


「ちょっと!」
「この傷はどうしたんだ」


あ……あー、キスマークの時に気が付いたの?


「……黙秘……」
「許さん。言わないとキスマークを首中に付けるぞ。嫌なら言え」
「酷い!セクハラ!暴君!」
「10、9、8、7、」
「わー!駄目!これは結婚したくなくて死んでやるって付けた傷です!」


首中キスマークなんて病気みたいじゃない!
あれ、エミディオ様が真っ青だ。


「……そんな……自殺を図る程私との結婚が嫌だったのか……私はなんて酷いことを……」


あら?


「ごめんなさい、違います!私が16歳になったばかりの時に、54歳離婚歴3回の金持ちだけど変態だと有名な男性の妻になれと言われまして。さすがに祖父と同じ年の方に嫁ぐのは嫌過ぎて、このまま縁談を進めたら死んでやる!と喉元にナイフを突き付けたらちょっと力を入れ過ぎて切れちゃいました」


あの時はめちゃめちゃ殴られたわ。でもさすがに元を取る前に死なれたら困ると思ったんでしょうね。跡が残る程の怪我はしなかったもの。


「……あの男は……!今後アレとは絶対に二人きりで会うなよ。何か合ったら必ず私に言いなさい。分かったね?」


え、なんで?さすがに人妻を売り飛ばしはしないと思うけど。というか、この人本当に顔が怖いわ。


「返事は?」
「……はい」
「よし。……大変だったな、ここではそんなことは絶対に起きないから安心しなさい」


……どうして頭を撫でてるの。
てか撫で方が下手だし。髪がグチャグチャになっちゃうじゃない。
……こんな人が父親だったら幸せなんだろうな


「そんな大変な目に合ったのに結局私に利用されて……本当に悪かった」
「ん~ん、あなた眉間にシワ寄っててちょっと怖い顔だけど案外いい人だし。悪くないよ」
「シワ?」
「うん、も少し笑いなさいな。にーって!」
「おい、止めなさい」


ただダラダラとおしゃべりして。
家族の団欒ってこんな感じなのかな。

この人は本当に怒らないわね。私はけっこう好き放題喋ってるのに。
最初は失礼で馬鹿な人なのかと思ったけど、意外とお人好しだし、本当に私を家族みたいに扱ってくれる。
これなら3年くらいあっという間かな?
……あんまり居心地がいいと困るなぁ。
3年……もしかしたらもっと早くに出ていかなくちゃいけないのに。


しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

処理中です...