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「もうよろしいですか?」
「え?」
「ですから、クラウディア様がおっしゃりたいことはもうありませんか?無いのでしたら私ももう結構ですので、早くセシリオを連れて来てください」
勝手に来てくだらない事をべらべらと。そんなものにいつまでも付き合っていられないわ。
「……本当なの?」
「何がですか」
「さっきあなたが言ったことよ!」
「さあ、私の想像です」
「あなた!私を馬鹿にしているの?!」
なぜ私が知っていると思うの?私はこの国の役人でも無いのに。自分で考える頭は無いのかしら。
「ですが、間違ってはいないと思いますよ。この国がよっぽど寛大か愚かじゃなければ、ですけど」
「そんな……」
「でもなぜ私の言う事を信じるのですか?ハッキリ言って私はクラウディア様に酷いことをされていますよ。そんな人間の言う事を頭から信じるっておかしいでしょう。
なぜ自分で考えないのですか?なぜ調べようとしないのですか?そんなことでは、今後もずっと利用されるだけの駒ですよ。なんの為に王妃教育を受けたんですか」
「……」
え、なんで反論しないの?
「まさか王妃教育を受けていないのですか?!」
「受けたわよ!ただちょっと難しくて……お父様には終わったって誤魔化してもらったのよ」
「恋してる場合ですか!」
「だって!セシリオの妻になるのに勉強なんて「料理も洗濯も掃除もできない!勉強もできない!ただの馬鹿が何を言ってるんです?!」
「そんなっ、ひどいわ……」
うわ、シクシク泣き出した。子供か。いや、子供の方が賢い。ラファの方が善悪の判断がつくもの。
「私の妻をずいぶんといじめているね?」
勝手に部屋に入っておきながら、わざとらしくドアをノックして見せる。出たな腹黒王子め。
錆色の髪に薄墨の瞳。泣きぼくろが色っぽい。
「王太子殿下、初めてお目にかかります。ウルタード国、医療魔法士のルシア・オルティスと申します」
「はは!まったく怯まないね」
「理由がありませんから」
「妻がずっと泣いているけど?」
「遅い思春期では?」
「なるほど。君は面白いね」
クラウディア様は殿下を見て固まっている。
さっきの話に怯えてるのかしら。
「失礼ですが、奥様をきちんと管理して下さい。巻き込まれて凄く迷惑ですから」
さっきの光景がチラついて口調がキツくなる。腹黒王子はどこまで把握しているの。どこまで貴方が手を回していたの?
「妻が誘惑したから怒っているのか?だが、その程度のことで駄目になるならやめておいた方いい。そういう人間は何度でも繰り返すよ」
もっともな意見を言われ、何も言い返せない。
「さて、妻は連れて行こう。クルス卿を呼ぶかい?」
「はい、もともと呼んでいたのは彼だけです」
「わかった。ああ、それ。その誓約書が有効なのは今だけだよ。最後に何か言いたいことはない?」
「そうですね、ではクラウディア様に1つだけ」
じっと彼女を見つめる。言いたいことはたくさんある。でもきりがないから1つだけ。
「もっと勉強しなさい!!」
「!」
「ハハハッ、最後に言うのがそれなの?もっと恨み言とかを言うと思ったのに!君は本当に面白いな!」
クラウディア様なんてどうでもいい。このまま関わらないでほしいだけよ。
「じゃあこのままここで待ってて。すぐ向かうように伝えよう」
「分かりました。……今度は盗み聞きしないで下さいね」
「ふっ、分かったよ。生意気はそこまでね。クルス卿には防音結界の使用許可を出すよ」
「ありがとうございます」
やっと腹黒王子が出て行った。あの人どこから聞いていたのかしら。失礼よね。
しばらく待っているとノック音がした。
「はい」
「……俺だ」
俺って誰よ。名乗りなさいよ。
「どうぞ、入って」
静かにセシリオが入ってくる。
やっと会えたわね。
「え?」
「ですから、クラウディア様がおっしゃりたいことはもうありませんか?無いのでしたら私ももう結構ですので、早くセシリオを連れて来てください」
勝手に来てくだらない事をべらべらと。そんなものにいつまでも付き合っていられないわ。
「……本当なの?」
「何がですか」
「さっきあなたが言ったことよ!」
「さあ、私の想像です」
「あなた!私を馬鹿にしているの?!」
なぜ私が知っていると思うの?私はこの国の役人でも無いのに。自分で考える頭は無いのかしら。
「ですが、間違ってはいないと思いますよ。この国がよっぽど寛大か愚かじゃなければ、ですけど」
「そんな……」
「でもなぜ私の言う事を信じるのですか?ハッキリ言って私はクラウディア様に酷いことをされていますよ。そんな人間の言う事を頭から信じるっておかしいでしょう。
なぜ自分で考えないのですか?なぜ調べようとしないのですか?そんなことでは、今後もずっと利用されるだけの駒ですよ。なんの為に王妃教育を受けたんですか」
「……」
え、なんで反論しないの?
「まさか王妃教育を受けていないのですか?!」
「受けたわよ!ただちょっと難しくて……お父様には終わったって誤魔化してもらったのよ」
「恋してる場合ですか!」
「だって!セシリオの妻になるのに勉強なんて「料理も洗濯も掃除もできない!勉強もできない!ただの馬鹿が何を言ってるんです?!」
「そんなっ、ひどいわ……」
うわ、シクシク泣き出した。子供か。いや、子供の方が賢い。ラファの方が善悪の判断がつくもの。
「私の妻をずいぶんといじめているね?」
勝手に部屋に入っておきながら、わざとらしくドアをノックして見せる。出たな腹黒王子め。
錆色の髪に薄墨の瞳。泣きぼくろが色っぽい。
「王太子殿下、初めてお目にかかります。ウルタード国、医療魔法士のルシア・オルティスと申します」
「はは!まったく怯まないね」
「理由がありませんから」
「妻がずっと泣いているけど?」
「遅い思春期では?」
「なるほど。君は面白いね」
クラウディア様は殿下を見て固まっている。
さっきの話に怯えてるのかしら。
「失礼ですが、奥様をきちんと管理して下さい。巻き込まれて凄く迷惑ですから」
さっきの光景がチラついて口調がキツくなる。腹黒王子はどこまで把握しているの。どこまで貴方が手を回していたの?
「妻が誘惑したから怒っているのか?だが、その程度のことで駄目になるならやめておいた方いい。そういう人間は何度でも繰り返すよ」
もっともな意見を言われ、何も言い返せない。
「さて、妻は連れて行こう。クルス卿を呼ぶかい?」
「はい、もともと呼んでいたのは彼だけです」
「わかった。ああ、それ。その誓約書が有効なのは今だけだよ。最後に何か言いたいことはない?」
「そうですね、ではクラウディア様に1つだけ」
じっと彼女を見つめる。言いたいことはたくさんある。でもきりがないから1つだけ。
「もっと勉強しなさい!!」
「!」
「ハハハッ、最後に言うのがそれなの?もっと恨み言とかを言うと思ったのに!君は本当に面白いな!」
クラウディア様なんてどうでもいい。このまま関わらないでほしいだけよ。
「じゃあこのままここで待ってて。すぐ向かうように伝えよう」
「分かりました。……今度は盗み聞きしないで下さいね」
「ふっ、分かったよ。生意気はそこまでね。クルス卿には防音結界の使用許可を出すよ」
「ありがとうございます」
やっと腹黒王子が出て行った。あの人どこから聞いていたのかしら。失礼よね。
しばらく待っているとノック音がした。
「はい」
「……俺だ」
俺って誰よ。名乗りなさいよ。
「どうぞ、入って」
静かにセシリオが入ってくる。
やっと会えたわね。
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