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ただいま、バレリアノ。

あの後は特に問題なく、無事辺境にたどり着いた。夕食とお風呂をいただき、なんとなく寝付けなくて中庭を歩く。最初に来た時はヘロヘロですぐ寝ちゃったのよね。
駄目だなあ、いつの間にか気分になっている。1年だけでしょここは。
やがてウルタードに帰る。ん~、でも帰りたいのかな。今までは帰って結婚するって思ってたけどそれは無くなった。治癒院は好きだけど、医療魔法士長にはなりたく無い。私はずっと治療を続けたい。書類仕事ばかりは嫌なのよね。
でもこの国で医療魔法士として続けられるのか。男尊女卑のこの国で?でも免許はあるし、なんでか王子が友達だからいけるか?いや、家族にも相談しなきゃだし、院長にも相談……
すでに乗り気ね、私。
でも危険がいっぱいのエルディア国。
悩むなぁ……


「ルシア?こんな時間にどうした?」


しまった、心配させたかしら。
すぐに戻るつもりだったのに、リカルド様に見つかってしまったわ。


「すみません、少し寝付けなくて散歩を。起こしてしまいましたか?」

「いや、俺もまだ起きてた。ルシアは酒は飲めるか?良ければ少し付き合ってくれ」

「やった。いいんですか?」

「ああ、アルには内緒な」


リカルド様がお酒を召されるなんて珍しい。私が眠れないって言ったからかな。でも、お言葉に甘えよう。


「おいしい!」

「意外と飲める口か」

「リカルド様こそ。普段はあまり飲まないですよね?苦手なのかと思っていました」

「変事があった時、酔っていては困るからな。まあ、今日はアルがぐっすり寝ているから何もないだろう」


なるほど。危険探知機が寝てるということは安全ということなのね。


「じゃあ私ももう少し飲んじゃいます」

「程々にな」


特に話す事も無く、静かに杯を重ねる。
無言が嫌じゃないなぁ。


「大丈夫か?」


ん?お酒が?──振られたことが?


「意外と平気です」

「……そうか。ルシアは……ウルタードに帰るのか?いや、詮索してすまない」

「どうしようかな~って。さっきも考えてました。私ね、ここについた時、ただいまって思ったんです。帰って来れたなって。まだ少ししかいないのに困りますよね」

「困るのか?」

「だって一年で帰るのに」


そう、1年。セシリオにエルディア行きを聞いた時は長いと思ったのに、今は短いと思う。


「……ずっと居ればいい」

「え?」

「ルシアが……ずっといてくれたら嬉しいよ」

「!!」


本当に?このまま残ってもいいの?


「あの!本当は残りたいって思っていたんです!でも私はウルタードの人間だし迷惑かと」

「迷惑なわけない。ずっとここに。俺のそばにいてくれないか?」


真剣な眼差し。嘘じゃない。本気で言ってくれてる!


「……よかった。さっき中庭を歩きながら、どうやって私の思いをお伝えしようか悩んでいたんですよ」


嬉しい、嬉しい嬉しい!


「ルシア、じゃあ」

「はい!こんな素敵な職場なかなか無いです!リカルド様はいい上司だし、職場のみんなもいい人ばかりだし!よかった~」

「……職場……上司……」

「はい!あ、もちろんラファとリコも大好きですよ!」


そう、ラファもリコも可愛いくて愛しい。
あれ?リカルド様がなんともいえない顔をしてる。酔ったのかな。なんか楽しい。わたしも酔ってるかも。


「んふふ、なんだか楽しいですね!」

「酔ってるな、そろそろ寝たほうがいい」

「えー、もう少しお話ししましょう」

「……いや、これ以上は駄目な気がする」


だめ?なにが?たのしいのに。


「リカルド様のけち」

「……うん。可愛いからもう寝なさい。部屋まで送ろう。おいで?」


なんだろう。リカルド様が甘い……気がする?なんかフワフワするし、そのせいかな。

差し出された腕に掴まる。
わー筋肉かな。私と全然違う。


「ん、固くて太い」

「な!」


なんで驚くの?だって本当なのに。そのまま腕をペタペタ触る。あれ?なんか体がへにょってするわ。


「な~んかふわふわしますね、リカルド様」

「……酔うとこんなにたちが悪いのか……」


ボソボソ言ってる。何?ん~立てないかも。
そのままぽすっと倒れ込む。あったかい。


「きもちいい……」

「ちょっ!いや、さすがに困る!」


うるさい。せっかく気持ちいいのに。

あれ、変だわ。なんかすっごく眠たい……


「……ねむいです」

「おい?」

「……おやすみなさいませ」

「え?!」


もうむり、ねむい





ゆらゆらゆれる。なんだかきもちいい。あったかくてあんしんする。ふふっ


「困ったお姫様だ。おやすみ、良い夢を」




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