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62.家族の特権
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「ミッチェ母さま?」
小首を傾げて頬を染め、嬉しそうにそう呼ばれると何ともむず痒いものがあります。
「どうされました?コニー様」
「ブブーッ!まちがいよっ、もう一回!」
間違い?何が?
「えっ…と、コニー様」
「ち~が~う~の~っ!」
コニー様がぷりぷりと怒っています。怒り方すら可愛いけれど、違うって……
「ミッチェ母様、もう本当のお母様なのだから、私達を様付けで呼ぶのはおかしいでしょう?」
「えっ!?」
そういうもの?でも、確かにそうね?
「……フェミィ、コニー」
「「なぁに?母さま!」」
やだ、満面の笑顔が可愛過ぎます!
「慣れるまで時間が掛かりそうですわ」
「ダメよ?まちがったら」
「そうね。間違ったら罰があります!」
「まあ、怖いですね?どんな罰なのでしょう」
「5回。一日5回間違えたら、その日の夜に罰がくだるでしょう!」
何故かしら。フェミィ様が言うと少し怖いです。
「……努力致します」
「敬語も駄目よ」
「旦那様にも敬語を使っていますよ?」
「ブブーッ、だんな様ちがうよ、グレンさまって呼ぶのきめたでしょ?」
「ああっ!」
これは、かなり大変なのでは!?
そして一時間後。
「ミッチェ母さま、ダメダメだね?」
「一日どころか1時間ももたないなんて」
「面目ございません」
私はそこそこ器用な方だと思っていたのに、ただ、呼び方を変えるというだけのことが、こんなにも難しいだなんて!
「…一週間…いえ、せめて3日程いただけると幸いなのですが」
「敬語も駄目よね?」
「え~ん、フェミィさま~っ」
「ミッチェ母さま、だ~めだめ!」
今日のお二人は天使では無く小悪魔っ!可愛らしいけれども小悪魔でいらっしゃいますっ。
「こら、二人とも。ミッシェルを虐めては駄目だろう」
「旦那様!」
まさかの助け手が!
「「グレンさま」」
「あ~っ……」
確かに私はダメダメかもしれません……
「ユーフェミア、そんなに慌てることはないだろう?」
そうです、もっと言ってください!
「フェミィって呼んで?お父様」
「えっ」
「ぼくも!コニーってよんでほしいな」
「っ、……私まで……その、いいのか?」
あら?
「もちろん!家族の特権です」
「とっけん、とっけん!」
旦那様?何ですか、その締りの無いお顔は。
「……確かに嬉しいな。お前達が早くに呼ばれたい気持ちも…、うん、分かる」
チョロい……やっぱり旦那様はチョロいわ!
心を開くと甘々のチョロ子さんでいらっしゃるっ!!
熊のくせに。とってもビッグで強面の熊さんのくせに!
「フッ」
え……旦那様が声を出して笑った?
「……いや、すまない」
そう言いつつも、顔をそらしてまだ笑いを収められないのを誤魔化しています。
「父さま、なにがたのしいの?」
「……ミッチェ母様じゃないかしら」
「えっ、私ですか?」
……どの辺りがそんなにも楽しかったと?
「すまない。その、いつも冷静で穏やかで……本当に10代なのかと疑わしいくらいの君が、何だかとっても年相応に見えて……何というか、その、……微笑ましかったんだ」
何故そんなにもしどろもどろ?
というか、微笑ましいって……恥ずかしいっ。
「グレン様、女性の年齢のことを話題にするのは良くありませんよ」
「ああ、すまない。気を付けよう」
む、まだ笑いが残ってますよ。
「ミッチェ母様。罰として、今日の夜は皆でお泊り会ね!」
「お泊り会ですか?いいです…?……え、みんな……とは?」
「もちろん家族四人のことよ?」
フェミィ様!?どうしてそんなにも爆速なのですか?私はまったくついていけません!
「そんなはしたないこと……」
「家族で寝るのってはしたないの?」
「うっ」
そんなにもキラキラした目で見ないで下さい!
どうしましょう。でも、子供達も一緒なら大丈夫かしら。
「……分かりました」
「ミッシェル!?」
「グレン様、ミッチェですよ」
もういいです。習うより慣れろといいますもの。呼び名も旦那様の存在も、ようするに慣れですわ。
グレン様は黒くて大きいただの熊さん。ちょっとお話もお仕事も出来る優れ者。中身は少しネガティブなお子様なだけ。
よし、いける。いけるはずです!
♢♢♢
たぶん、私は判断を間違えましたね。
だん……ではなく、グレン様の私室では無く、ベッドが大きいからと何故か夫婦の寝室に通されました。
ポーラ?楽しんでいるわね?
確かにベッドは大きいですよ。ああ、もちろんベッドも内装もすべて変えてあるそうです。お気遣いありがとう。でも、そうじゃないのよ。
「ベッド、おっきい!」
「綺麗なお部屋ね。初めて入るわ」
だって夫婦の……いえ。今日からここは家族の部屋です。今、私が決めました。
「ここは家族のお部屋です」
「そうなの?」
「ええ。だから、お泊りの時に使うことにしましょう」
「やったーっ!」
もうそれでいいです。だって夫婦で使うことはないもの。それならば、たまには利用出来るようにした方がいいでしょう。
チラリとだ……じゃくてグレン様を見たけど無反応です。ということは異議無しということですのね。
ベッドは左から、グレン様、コニー、フェミィ、そして私です。
「……コニー。お前が端の方がいいかもしれない」
「そうね。貴方の隣は嫌よ」
「えーっ!どして?どーして~っ!!」
「コニーキックが最強だからだ。私なら何とかなるが、フェミィやミッチェは可哀想だろう」
「ぼく、父さまや姉さまはやっつけないよ?」
なるほど。コニーは寝相が悪いのね?
仕方なく、グレン様とコニーが場所を変わりました。
それからは、お話をしたり、本を読んだり。最後には私が子守唄を歌っているうちに、お二人は眠ってしまいました。
「二人とも寝ちゃいましたね。もう、灯りを消しますか?」
「いや、少し話をしてもいいだろうか」
「いいですよ。あちらで座って話しますか?」
小首を傾げて頬を染め、嬉しそうにそう呼ばれると何ともむず痒いものがあります。
「どうされました?コニー様」
「ブブーッ!まちがいよっ、もう一回!」
間違い?何が?
「えっ…と、コニー様」
「ち~が~う~の~っ!」
コニー様がぷりぷりと怒っています。怒り方すら可愛いけれど、違うって……
「ミッチェ母様、もう本当のお母様なのだから、私達を様付けで呼ぶのはおかしいでしょう?」
「えっ!?」
そういうもの?でも、確かにそうね?
「……フェミィ、コニー」
「「なぁに?母さま!」」
やだ、満面の笑顔が可愛過ぎます!
「慣れるまで時間が掛かりそうですわ」
「ダメよ?まちがったら」
「そうね。間違ったら罰があります!」
「まあ、怖いですね?どんな罰なのでしょう」
「5回。一日5回間違えたら、その日の夜に罰がくだるでしょう!」
何故かしら。フェミィ様が言うと少し怖いです。
「……努力致します」
「敬語も駄目よ」
「旦那様にも敬語を使っていますよ?」
「ブブーッ、だんな様ちがうよ、グレンさまって呼ぶのきめたでしょ?」
「ああっ!」
これは、かなり大変なのでは!?
そして一時間後。
「ミッチェ母さま、ダメダメだね?」
「一日どころか1時間ももたないなんて」
「面目ございません」
私はそこそこ器用な方だと思っていたのに、ただ、呼び方を変えるというだけのことが、こんなにも難しいだなんて!
「…一週間…いえ、せめて3日程いただけると幸いなのですが」
「敬語も駄目よね?」
「え~ん、フェミィさま~っ」
「ミッチェ母さま、だ~めだめ!」
今日のお二人は天使では無く小悪魔っ!可愛らしいけれども小悪魔でいらっしゃいますっ。
「こら、二人とも。ミッシェルを虐めては駄目だろう」
「旦那様!」
まさかの助け手が!
「「グレンさま」」
「あ~っ……」
確かに私はダメダメかもしれません……
「ユーフェミア、そんなに慌てることはないだろう?」
そうです、もっと言ってください!
「フェミィって呼んで?お父様」
「えっ」
「ぼくも!コニーってよんでほしいな」
「っ、……私まで……その、いいのか?」
あら?
「もちろん!家族の特権です」
「とっけん、とっけん!」
旦那様?何ですか、その締りの無いお顔は。
「……確かに嬉しいな。お前達が早くに呼ばれたい気持ちも…、うん、分かる」
チョロい……やっぱり旦那様はチョロいわ!
心を開くと甘々のチョロ子さんでいらっしゃるっ!!
熊のくせに。とってもビッグで強面の熊さんのくせに!
「フッ」
え……旦那様が声を出して笑った?
「……いや、すまない」
そう言いつつも、顔をそらしてまだ笑いを収められないのを誤魔化しています。
「父さま、なにがたのしいの?」
「……ミッチェ母様じゃないかしら」
「えっ、私ですか?」
……どの辺りがそんなにも楽しかったと?
「すまない。その、いつも冷静で穏やかで……本当に10代なのかと疑わしいくらいの君が、何だかとっても年相応に見えて……何というか、その、……微笑ましかったんだ」
何故そんなにもしどろもどろ?
というか、微笑ましいって……恥ずかしいっ。
「グレン様、女性の年齢のことを話題にするのは良くありませんよ」
「ああ、すまない。気を付けよう」
む、まだ笑いが残ってますよ。
「ミッチェ母様。罰として、今日の夜は皆でお泊り会ね!」
「お泊り会ですか?いいです…?……え、みんな……とは?」
「もちろん家族四人のことよ?」
フェミィ様!?どうしてそんなにも爆速なのですか?私はまったくついていけません!
「そんなはしたないこと……」
「家族で寝るのってはしたないの?」
「うっ」
そんなにもキラキラした目で見ないで下さい!
どうしましょう。でも、子供達も一緒なら大丈夫かしら。
「……分かりました」
「ミッシェル!?」
「グレン様、ミッチェですよ」
もういいです。習うより慣れろといいますもの。呼び名も旦那様の存在も、ようするに慣れですわ。
グレン様は黒くて大きいただの熊さん。ちょっとお話もお仕事も出来る優れ者。中身は少しネガティブなお子様なだけ。
よし、いける。いけるはずです!
♢♢♢
たぶん、私は判断を間違えましたね。
だん……ではなく、グレン様の私室では無く、ベッドが大きいからと何故か夫婦の寝室に通されました。
ポーラ?楽しんでいるわね?
確かにベッドは大きいですよ。ああ、もちろんベッドも内装もすべて変えてあるそうです。お気遣いありがとう。でも、そうじゃないのよ。
「ベッド、おっきい!」
「綺麗なお部屋ね。初めて入るわ」
だって夫婦の……いえ。今日からここは家族の部屋です。今、私が決めました。
「ここは家族のお部屋です」
「そうなの?」
「ええ。だから、お泊りの時に使うことにしましょう」
「やったーっ!」
もうそれでいいです。だって夫婦で使うことはないもの。それならば、たまには利用出来るようにした方がいいでしょう。
チラリとだ……じゃくてグレン様を見たけど無反応です。ということは異議無しということですのね。
ベッドは左から、グレン様、コニー、フェミィ、そして私です。
「……コニー。お前が端の方がいいかもしれない」
「そうね。貴方の隣は嫌よ」
「えーっ!どして?どーして~っ!!」
「コニーキックが最強だからだ。私なら何とかなるが、フェミィやミッチェは可哀想だろう」
「ぼく、父さまや姉さまはやっつけないよ?」
なるほど。コニーは寝相が悪いのね?
仕方なく、グレン様とコニーが場所を変わりました。
それからは、お話をしたり、本を読んだり。最後には私が子守唄を歌っているうちに、お二人は眠ってしまいました。
「二人とも寝ちゃいましたね。もう、灯りを消しますか?」
「いや、少し話をしてもいいだろうか」
「いいですよ。あちらで座って話しますか?」
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