上 下
52 / 67

51.どうして?

しおりを挟む
カチャッ!

「父さま?」
「あっ、コニー!いいですよって言われてないのに入ったら駄目なのよ?」

そう言いながらもフェミィ様も入って来てしまいました。
まさかの子供達二人の登場に、ダイアナ様の涙も止まってしまったようです。

「母さま、えんえんしたの?」

どストレートですね。超ど直球の質問が来ました。

「……もしかして、お母様のこれからのお話をしていたの?」

ああ!ここにも直球なお方がいます。

「そなの?」「そうなのでしょう?」
「……そうだ」

旦那様?どこまでも狡猾になれると悪振っていたくせに、子供達には嘘ひとつつけないのですか。そうですか。

「母さま、どうしてえんえんなの?」
「…あ、……あの、ね?お母様、は……」
「悪いことをしちゃって泣いてるのかしら」
「えー!そうなの?わるいことしちゃったの?どうして姉さまはわかるの?すっごいね!」

何でしょう、これは。止めるべき?でも、どうやって?

「えっとね、ぼくがおしえてあげるね?まずはね、『ごめんなさい』をするんですよ?」

なぜ敬語なのでしょう。可愛すぎるのですけど。

「母さま、ちゃんといった?ごめんなさいよ?」
「……どう、だったかしら……」
「だったらもう一度ちゃんと言えばいいじゃない。言わないのは駄目だけど、多めに言っても問題ないでしょう?」

そう言ってフェミィ様が私をチラリと見ました。

「……そうですね。覚えていないということは、心からの謝罪では無かったのでしょう。
言うだけなら簡単です。でも、その言葉には本当に申し訳なかったという思いを込めなくては意味が無いのです。
心からの謝罪──ごめんなさいをするべきなのではありませんか?」
「だってそんな……今更謝罪したって何の意味もないじゃない」

子供達がきょとんとしています。

「ごめんなさいはごめんなさいよ?」
「そうね。ごめんなさいって言葉に、他の意味なんかあるの?」

あどけない顔で心底不思議そうに見つめられて、かなり気不味くなってしまったようです。
少し俯きながら、ボソボソと、

「……だって、何も変わらないでしょう?」
「なんで?」
「今更だからよ」
「どして?」
「……もう決まってしまったから」
「ん~?ぼく、わかんない。わるいことしたらね、ごめんなさいなの。もうしないねっておやくそくなのよ」
「そうよね。コニーが合ってるわ。どうしてそれと、その決まったこと?が同じになるの?」

純粋に疑問に思われると辛いですね、ダイアナ様。
だって、彼女にとって謝罪とは許される為にするものなのでしょう。だから、許されないのにやる意味は無いと言いたいのに、子供達は悪いと気付いたらすぐにごめんなさいが基本なのです。まったく話しが噛み合いません。

「ダイアナ様。これは貴方様が子供達に教えたことですよね?」
「そだよ?母さまがね、ごめんなさいすると、すぐにいえてえらいねってほめてくれたの」

子供にはしっかり教えていたのね。なのにどうしてご自分では出来ないのでしょうか。

「なのに、どうして?どうして母さまはごめんなさいっていわないの?」
「そうね。私達に嘘を教えたの?」

これは……コニー様はひたすら純粋に疑問に思って聞いていますが、フェミィ様はお母様の真実を見極めようとしているのではないでしょうか。

「……違うの、あのね?大人には色々あるのよ」
「いろいろってなぁに?」
「それは……その、子供に聞かせることじゃなくて」
「どうして?」
「……少し難しいの」
「ぼくね、おっきくなったよ!だからね、つよいの。むずかしいのだいじょぶよ?」
「私も知りたいわ、お母様。教えて下さらない?お母様に何が起きて、これからどうなるのか。だって、私達は家族でしょう?助け合わなきゃ。ね?」

あぁ、小悪魔が降臨してしまったようです。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

旦那様、離婚しましょう

榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。 手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。 ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。 なので邪魔者は消えさせてもらいますね *『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ 本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......

契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様

日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。 春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。 夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。 真実とは。老医師の決断とは。 愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。 全十二話。完結しています。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...