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第10話
しおりを挟む「……なんですって、お姉様が……」
目を大きく見開いて驚きの声を上げる少女。
転送された姫騎士レリアの妹、サーラに届く報告。
「何があったというのです」
動揺を抑えつつ訊ねる。けれどサーラの声は震えていた。
「それが……」
恐縮しながら報告者が現在までに集まった情報を読み上げる。
ディッテニィダンジョンで事故が起こった模様で、地面が揺れるという事態に多くの騎士が動揺。その際に次期女王と目される姫騎士レリアが魔法陣による転移か転送か解らないが光と共に消えてしまって行方不明。
騎士団、冒険者ギルドの冒険者がちょうど集結していたこともあってか数多くの目撃情報はあるのだが、レリアの行方はようとして知れない。
時を同じくして冒険者ギルドから派遣されて随行していた冒険者一名が姫騎士と同じように光と共に消えて行方不明となっているが、関係性、関連性ともに現在のところ不明。
現在ディッテニィダンジョンは一般の立ち入りを禁止、封鎖状態にしている。
騎士団は引き続き駐屯して、該当ダンジョン内の捜索、ダンジョン外の遺跡の調査を続けている。
芳しい成果は出ていないようだが、転送先の手がかりがないか継続的に捜索している、とのことだった。
「……こんなことになるなら……」
容量としてはそれほど圧迫はしていないが、こっそりとマジックバッグに忍ばせたセクシーランジェリーが悔やまれる。
せっかくの姉の運命の相手がもしや、ということでメイド達に相談して入れておいたのだが、こんなことになるなら、保存食をもっと多く入れておくべきだったと後悔する。
先見の予言に浮かれている場合ではなかったのだ。
「ともかく全力で捜索してください。アインベルク魔術師団長にも連絡を取ってください。彼ならば何かしらの手掛かりを得られると思われますので」
報告にも魔法陣という言葉が上がっているように、魔法方面でも有識者が必要であると考えて、この国において第一人者である師団長の名を上げる。
サーラはまだ幼いとて王族、そして王女である。姉上に何かあったとき誰に頼るべきか、しっかりと学んでいる。
「……その、サーラ姫様。アインベルク魔術師団長なのですが……既にディッテニィダンジョンに向かわれたとの報告を受けております」
「はい? 何て」
サーラが思わず聞き返す。指示を待たずに動いたのは頼もしいというべきか、何を勝手なことをと咎めるべきか、悩ましい。
「すでに魔術師団長は王都を発たれディッテニィダンジョンへと向かわれたと報告を受けております。なんでも『ひゃっほい、まだこんな近くに未知の機能を備えた遺跡があるとは。このアインベルクの不覚ですな。ほとんどが不稼動な中、こうして起動したものがあるとはじ、つ、に、興味深い。是非に是非にこの目で確かめたい由、さっそく向かうことにいたしましょう。あと、ついでにレリア様がどちらに飛ばされたかも探査してきましょうか』とか発言して飛び出してゆかれたとのことです」
アインベルク魔術師団長の発言の読み上げに、サーラは頭を抱える。
「あのモノクル森の木が……ではなかったアインベルク魔法師団長はすでに向かわれたのですか。それでしたらいずれ報告があがるでしょう……」
はあっと溜息を吐くサーラ。嬉々としてダンジョンへと向かっている姿が容易に想像できるだけに、頼もしいやらそうでないやら。
「姉上のことがついでというのが苦々しいですが……あの男ならさもありなんと思えるのが……」
もっと毒づきたいところだが、サーラは姉上の捜索において自分が何の力になれないことを知っていた。知っているが故に、祈ることしか出来ない自分がもどかしく、出来るものに頼ることしかできないだけに余計な口出しはしない。
それでも真剣に姉上のことを心配しない魔法師団長は降格するべきかもとか少々思ったりするのは許して欲しいとサーラは心の中で呟いた。
「それでしたら、わたくしが出来ることはなさそうです……先見の巫女は変わらず、とのことでしたね。……ならば祈りましょう、姉上の無事を……」
そういってサーラは祈りの間へと足を運ぶのであった。
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