18 / 30
~第一章~
17話
しおりを挟むとても穏やかな日々が続き、私も2歳になったがお母様の体調の回復を聞いていたので何時もどうり執務室でお兄様のお仕事の様子を見ながら勉強する。
本当に何事もなく日々がすぎて、あれ以降、父のネルノイも帰って来る事もなく平和が続き.......
私自身、気を抜いていたのだ。
それが......
そんな日々が......
この瞬間に終わってしまうなんて誰も予想していなかっただろう..............
突然部屋の扉が開きマルゴがなだれ込んでくる。
いつも冷静で慌てることなく何事にも対応しているマルゴがノックもせずに、髪型もくずれ汗だくで入ってきたのだ
何事かと、タヌカが聞くと、息を切らせながら私たちにとって一番残酷な事を言ったのだ......
「タ、タヴィア様が!!!!!タヴィア様が大変でございます!!!すぐに来てください!!!」
そう言ったマルゴを見てお兄様がすごい勢いで立ち上がり走り出す!お屋敷の中を絶対に走らない使用人達がお兄様の走り抜けて行った扉の先をばたばたと走っていく姿が見える。
世界の音がすべて消えたように全部の音が聞こえなくなる
お兄様の後をおってタヌカが走って行ったのをみてルーシーが私を抱き上げすごいスピードでお母様のお部屋に向かっていく....
私の頭の中は真っ白になり、何も考えられなくなっている...
走っているせいかすぐにお母様のお部屋につき寝室に繋がる扉が開けっ放しになっているのが見え、そこに入っていく。
そこには、懸命に心肺蘇生をするお医者様姿と真っ青な顔のお母様....
その横で何かを叫んでいるお兄様が見えて、だんだんルーシーがお母様の元に私を近づけていく.....
そこではっきりと理解したのだ。
お母様の心臓が止まってしまったのだと
そう気付いた時世界の音が戻り、お兄様の悲痛な叫び声のようなお母様!!!と何度も呼ぶ声にはっと思いルーシーの腕を抜け出すように暴れる。
お兄様がお医者様の邪魔にならないような位置で声をかけ続けている方のベッドにおろしてくれる、
私は今まで出したことの無い大きな声でお母様に必死に呼びかける.......
「かーーしゃま!!!!!かーしゃま!!!!かーしゃま!!!」
そうやってお母様に呼びかけるように、どうか戻ってきてと言う意思をこめて叫びつ続ける...
お兄様は泣きながら叫び続けている
「お母様!!!どうか僕達を置いて行かないで下さい!!!!!お願いします!!!まだレーラは小さいんです!お母様が必要なんです!!!!みんなお母様が必要なんです!僕もお母様がいないとダメなんです!!お願いしますお母様!!!!!!」
そう言ってぼろぼろと大粒の涙を流している
私もずっと呼び続ける。。
お医者様の息があがり、かなり時間もたっていたのだろう。
少しづつ動きを止めて行き最後には、手は尽くしましたがタヴィア様は逝かれてしまわれました....
そう言って静かに後ろに下がっていく。
お兄様はそんな.....と、かれてほとんど出ていないような声で言い膝から崩れ落ちる。
私はまだ叫んでいる
止まれない。。。
叫ぶのを止められないのだ。
そんな私の姿を目にうつしたお兄様が後ろから抱きしめて、もぉいいんだよレーラと言って止めてくる。
その顔は真っ青で自分が泣き出したいのを必死に我慢して私を止めてくれていたのだ。
そして私が大きな声で泣き出したのを境にお兄様も泣きだし、それでも私を守るように抱きしめ続けている
この部屋にいるみんなが泣いているのだろう。
すすり泣く声や、声を押し殺せなくなってしまった鳴き声.......
ずっとお母様に付き添っていたノンラが、お母様の手を握り泣きながら頭をさげ大変よくがんばってこられましたねタヴィア様、ゆっくりとお休みくださいと震えた声で言っている。
ルーシーは立っていられなくなったのかマルゴに支えられながら泣いている......
タヌカはノンラの最後のあいさつに、堪えていた涙がついに流れだし、それでもやはり主に仕えた優秀な家令としてお疲れ様でしたと言う言葉を聞き深く頭を下げていた
みんな泣いて動けなくなりしばらく鳴き声が響く部屋に、かれてしまった声のお兄様の声が響きわたる。
「ノンラ.......お母様の最後をみたか.....」
その声にすぐにノンラは顔をあげて答える。
「朝食をとられたのちに、少し疲れたわといいベッドに入るとわたくしはこんなにも皆に慕われて可愛い子供達にも恵まれて、本当に幸せものねと.....そう言って眠ったのが...タヴィア様の最後でございます。」
そう言ってまた泣き出してしまったノンラに私を抱きしめながら近づき、そして彼女の前に立ち
「そうか...お母様の最後は苦しんだわけでもなく、幸せだと言う言葉だったのか............
ノンラ、今までお母様の介抱ご苦労であった。これからは僕達兄妹の事をよろしく頼む......」
そう言ってまたお母様の前に戻り、
「お母様、本当に今までご苦労様でした。僕達を産み育ててくれてとても感謝しております.....ご当主としても立派なお母様に誇れるよう、僕が次期当主としてこれからはこの家を守っていきます.....だから安心してお眠り下さいませ......」
そう言い私を抱いたままお辞儀をし、また泣きそうになるのを必死で我慢して頭を上げ今度はここに集まった使用人達に声をかける。
「お母様が最後に安らかに眠るように逝けたのはあなた達使用人のおかげだと僕は思う。ありがとう.....
これからは僕がこの公爵家と領地とあなた達使用人みんなを守っていく......けれど僕はまだ子供だ。だからこれからも僕を支え、妹のレーラもよろしく頼む。」
そういってまた頭をさげる。
あぁ、この人はなんてすごい人なんだと、まだ子供なのにこの場面を収める為にお母様に縋り付き、泣くのを我慢し
てこの話をしているのだと.......この人はもう次期当主としてずっと覚悟を決めていたのだとこの時わかったのだ..........
私はお兄様を見てそう思い心を決める
お兄様も覚悟されたのだ。私がめそめそしている場合ではない.....
正直気を抜けばまた涙が流れだしそうなのを必死にこらえ、お兄様にギュッと抱きつき強い意志をもって顔を見上げる.....
その目に答えるようにお兄様もうなずき、そして色々な人に指示を出し始めた。
お母様を背に、恥じぬような次期当主としての姿を見せる為必死でがんばるお兄様。
タヌカもそれぞれに指示をだしお兄様を支えてくれている。
ノンラには引き続きお母様のそばに付いてもらう事にした...
これからの事を相談するお兄様とタヌカ、マルゴ、ルーシー。各自持っている執事や侍女たちにお母様の事を伝え、それぞれの仕事に付くように言っているとお兄様が重い口をあける。
それは父ネルノイにこの事を伝えなければならない。
伝えないと言う選択肢はないのだ.....
葬儀などする際は必ず父の存在が必須となるし、もし帰ってこなければこの公爵家に泥を塗ることになる。
すぐに伝令係に伝えに行くように指示をだし向かわせる..
居る場所はたぶんあの女の所だとうけど数人ばらばらに居そうな所へ走らせる。
公爵家のご当主の葬儀になるのだからすごい人数になるだろうし領民にもこの事を伝えなければならない。
みなそれぞれに忙しくしているがお兄様は決して私を離す事はなかったし、私もそばを離れなかった....
これからは私達、兄妹でこの家を守っていくと言うような意思をみせるように二人離れる事はなかった。
やる事が多すぎてお兄様と私は執務室で仮眠をとる事になりみんないったん出て行く。
私もお兄様も普段絶対眠ってるはずの時間帯なのに目が冴えていて、やっとすこし眠くなってきた頃を見計らいタヌカが仮眠を進めてきたのだ。
二人になってしばらくは黙っていたお兄様が口を開く。
もう声もほとんど出てない。
それでも私に言いきかすように言うのだ
「レーラ.....大丈夫だよ。お前には兄様もみんなも付いている....絶対守ってやるからな。
お母様に心配かけないように.........お母様が安心して眠れるように、僕達で支え合ってこの家を守っていこうな。」
そう言って私の背中をいつもみたいにトントンする。
私もその言葉に心の中で相槌をうち、私もお兄様を守れるよう、この家を守れるようがんばるね..
そう言って目を閉じる......
明日に備え、眠るタヴィアの忘れ形見に....
まだ哀しみが残る二人にさらに厳しい現実が待ち受けていたのだった.........
0
お気に入りに追加
1,452
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。
hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。
明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。
メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。
もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる