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7話
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ツキネは、先に食器も片付けていて、ひと笑いしたら、自室に戻ったので、カナメと僕は急いで、素麺を食べて食器を片付けた。
今日は学校は、行けないし、今は午後2時過ぎだしな。
僕が食器を戸棚にしまおうとすると、カナメが隣で、まるで、やらせてと頼む子供のように目をキラキラさせている。
「カナメ、やってみたい?」
するとカナメは、凄く笑顔になり、大きく頷いた。
「それじゃ、その黒い器は、2番目の棚へ置いてくれるかな?」
必死になって、つま先立ちしながら2つ茶碗を置くと、カナメは出来たのが嬉しいらしい。
僕は、カナメの頭を撫でた。
僕は父親とはこのような事をするのか分からないが、何となく撫でていた。
「お父さん、私上手だった。」
「そうだね。上手だったよ。」
「やったァー! お父さんに褒められた!」
飛び跳ねて全身で喜びを表現しているカナメを見ながら僕は本当に子供なんだなと思った。
幼い頃の記憶だ。
確か、カナメと同じ歳で、まだお母さんも生きていて、ツキネもいた。
狭い1LDKで、決して裕福では無いし、父親がいないから不幸でもなかった僕は、手伝いをして、お母さんに褒められた時にはこんな風に、喜んでいたなと懐かしさと焦燥感、過ぎ去りし戻らない日々に僕は、もしかしたらこの子にも同じ事をしてしまうのかと、胸を痛めた。
カナメは、家の中廊下に走って行ってしまい、このままだと玄関口から外に出て行ってしまうと思い僕は、急いで追いかけたが、中廊下に出て直ぐに、カナメはツキネに捕まってさっき褒められた事を自慢していた。
「お母さん! さっきね、お父さんに褒められたんだ!」
「へー良かったじゃん!」
ツキネが、カナメの頭をわしゃわしゃと撫でる。 それが僕は、ツキネがお母さんの様に見えて懐かしく思った。
一通り、カナメの自慢話を聴き終わったあと、ツキネが再度僕の事を真っ直ぐに見て言った。
「あの時の返事だけど、考えさせて。」
「そうだよね、ごめん。」
「ヒロ、お誘い嬉しかったよ。 でも、私とじゃね。」
そう言い、玄関口から家を出ていった。
すぐにカナメが僕の顔を不安そうに見て言った。
「お父さん、お母さんどこ行ったの?」
「自分の家に帰ったんじゃないかな?」
「でも、お母さんとお父さんのお家ってここじゃないの? お母さんここに住みたいって願ってたよ? お母さん、お父さんとの子供が欲しいって。」
僕は、驚きそして、少し考えてそれが本当ならって思った。
その時には、僕の足は勝手に動きがしていた。 今追いかけなければ、ツキネとはもう話せなくなると、心が叫んでいた。
玄関を勢いよく開けて、周囲を探した。
どこだ?どこだ?僕の愛している人はどこだと。
なぜ、あの時子には親が必要と思ってしまった。
僕はただ、ツキネが好きだから告白したんだろ?
なのに、なのに、
「僕は、ツキネが大好きなのに。」
家の近くに、青々とした杉林が、生える道路を抜け、水田が辺りに広がる道にでてきた。
そして、見つけた。
泣き腫らした顔で、水田の脇にしゃがみこんで水面に映る自分の姿を木の棒で突くツキネを僕は見つけた。
今度こそ、言うんだ。
「ツキネ、ごめん。僕はあの時、本当は」
「言わなくていいよ。」
「でも、本当は」
「私の事、好きじゃないもんね。 こんなお姉ちゃんなんかじゃね。」
「そうじゃなくて、本当はずっとお姉ちゃんのことが好きだった。 いやツキネのことが好きだったんだよ。」
驚いて、こっちを見るツキネの顔は泣き腫らして、メイクも所々落ちていた。
僕はそんなツキネの手を引いて、抱き寄せた。
「ありがとう。嗚呼。」
嗚咽を漏らす彼女を僕は、抱きしめた。
途端に、赤面する彼女の背中はいつもよりも頼りなく、いつもよりも小さくみえた。
まるであの頃のように小さく感じたんだ。
こんな姿を、カナメに見られたらと思うと笑えてくる。
今日は学校は、行けないし、今は午後2時過ぎだしな。
僕が食器を戸棚にしまおうとすると、カナメが隣で、まるで、やらせてと頼む子供のように目をキラキラさせている。
「カナメ、やってみたい?」
するとカナメは、凄く笑顔になり、大きく頷いた。
「それじゃ、その黒い器は、2番目の棚へ置いてくれるかな?」
必死になって、つま先立ちしながら2つ茶碗を置くと、カナメは出来たのが嬉しいらしい。
僕は、カナメの頭を撫でた。
僕は父親とはこのような事をするのか分からないが、何となく撫でていた。
「お父さん、私上手だった。」
「そうだね。上手だったよ。」
「やったァー! お父さんに褒められた!」
飛び跳ねて全身で喜びを表現しているカナメを見ながら僕は本当に子供なんだなと思った。
幼い頃の記憶だ。
確か、カナメと同じ歳で、まだお母さんも生きていて、ツキネもいた。
狭い1LDKで、決して裕福では無いし、父親がいないから不幸でもなかった僕は、手伝いをして、お母さんに褒められた時にはこんな風に、喜んでいたなと懐かしさと焦燥感、過ぎ去りし戻らない日々に僕は、もしかしたらこの子にも同じ事をしてしまうのかと、胸を痛めた。
カナメは、家の中廊下に走って行ってしまい、このままだと玄関口から外に出て行ってしまうと思い僕は、急いで追いかけたが、中廊下に出て直ぐに、カナメはツキネに捕まってさっき褒められた事を自慢していた。
「お母さん! さっきね、お父さんに褒められたんだ!」
「へー良かったじゃん!」
ツキネが、カナメの頭をわしゃわしゃと撫でる。 それが僕は、ツキネがお母さんの様に見えて懐かしく思った。
一通り、カナメの自慢話を聴き終わったあと、ツキネが再度僕の事を真っ直ぐに見て言った。
「あの時の返事だけど、考えさせて。」
「そうだよね、ごめん。」
「ヒロ、お誘い嬉しかったよ。 でも、私とじゃね。」
そう言い、玄関口から家を出ていった。
すぐにカナメが僕の顔を不安そうに見て言った。
「お父さん、お母さんどこ行ったの?」
「自分の家に帰ったんじゃないかな?」
「でも、お母さんとお父さんのお家ってここじゃないの? お母さんここに住みたいって願ってたよ? お母さん、お父さんとの子供が欲しいって。」
僕は、驚きそして、少し考えてそれが本当ならって思った。
その時には、僕の足は勝手に動きがしていた。 今追いかけなければ、ツキネとはもう話せなくなると、心が叫んでいた。
玄関を勢いよく開けて、周囲を探した。
どこだ?どこだ?僕の愛している人はどこだと。
なぜ、あの時子には親が必要と思ってしまった。
僕はただ、ツキネが好きだから告白したんだろ?
なのに、なのに、
「僕は、ツキネが大好きなのに。」
家の近くに、青々とした杉林が、生える道路を抜け、水田が辺りに広がる道にでてきた。
そして、見つけた。
泣き腫らした顔で、水田の脇にしゃがみこんで水面に映る自分の姿を木の棒で突くツキネを僕は見つけた。
今度こそ、言うんだ。
「ツキネ、ごめん。僕はあの時、本当は」
「言わなくていいよ。」
「でも、本当は」
「私の事、好きじゃないもんね。 こんなお姉ちゃんなんかじゃね。」
「そうじゃなくて、本当はずっとお姉ちゃんのことが好きだった。 いやツキネのことが好きだったんだよ。」
驚いて、こっちを見るツキネの顔は泣き腫らして、メイクも所々落ちていた。
僕はそんなツキネの手を引いて、抱き寄せた。
「ありがとう。嗚呼。」
嗚咽を漏らす彼女を僕は、抱きしめた。
途端に、赤面する彼女の背中はいつもよりも頼りなく、いつもよりも小さくみえた。
まるであの頃のように小さく感じたんだ。
こんな姿を、カナメに見られたらと思うと笑えてくる。
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