33 / 36
ちとせ、21歳<2>
しおりを挟む
天城島へ引っ越してしばらくして、ちとせは運転免許を取りに教習所に通い始めていた。
高校を卒業する前に「はるかぜ」のアルバイトを詰め込んでいたのは教習所の授業料を貯めるためでもあったようだ。
以前より発展したとはいえやはり島での生活には車は必需品だと言える。
無事に教習所を卒業したちとせは学科試験のために朝日市にある試験場へ行くことになった。
ちょうど有給休暇を消化しなければいけなかった僕は休みをとって付き添うことにした。
ちとせが試験を受けているあいだ、僕は試験場のロビーで手持ち無沙汰にしていた。
目の前を試験を受ける人たちが行き交っていたが、本当にたくさんの人が試験を受けに来ている。
10年ほど前には僕もあの中にいたわけだ。
やがて試験が終わってちとせが出てきた。
「おつかれ、試験どうだった?」
「大丈夫だと思うけどまだわかんない…」
しばらくして電光掲示板にちとせの受けた回の合格者の番号が表示され始めた。
「あった!合格してる‼︎」
ちとせは飛び上がって喜んだ。
「うれしい~」
「よかったね」
真新しい免許証を受け取ったちとせは帰りの道中ずっとご機嫌で免許証を眺めていた。
「お祝いに晩ごはん食べて帰ろうか?」
「やったー!」
その夜は二人で少し豪華な夕食をとった。
それからちとせは家の周りで少しずつ運転の練習をするのが日課になった。
少し車の運転に慣れたある日の朝、
ちとせが「少し調子よくないから今日お医者さん行ってくるね」と言った。
普段ちとせはあまりそういうことを言わないので少し気になりながら僕は出勤していった。
そして夕方帰ってくるとちとせがいつになく上機嫌で迎えてくれた。
「けんごさんおかえり~!」
「どうしたの?ご機嫌で」
「あのね、赤ちゃんできたの…」
「ほんとに⁉︎」
「うん、お医者さんで診てもらったら妊娠してるって」
「やったー!」
僕は嬉しさのあまりちとせを抱きかかえていた。
「ちょっと、けんごさん危ないって」
「ごめん、あまりにも嬉しくって…」
「お義母さんには言った?」
「うん、帰ってきてすぐに言ったよ、ものすごくよろこんでくれた」
ついに僕たちの子供ができた、生まれるのはまだ先だけど、なんだか興奮していた。
安定期に入るまではまだまだ安心はできないけど元気で生まれてきてほしい。
それからちとせははるかさんに教わりながら出産の準備を始めた。
高校を卒業する前に「はるかぜ」のアルバイトを詰め込んでいたのは教習所の授業料を貯めるためでもあったようだ。
以前より発展したとはいえやはり島での生活には車は必需品だと言える。
無事に教習所を卒業したちとせは学科試験のために朝日市にある試験場へ行くことになった。
ちょうど有給休暇を消化しなければいけなかった僕は休みをとって付き添うことにした。
ちとせが試験を受けているあいだ、僕は試験場のロビーで手持ち無沙汰にしていた。
目の前を試験を受ける人たちが行き交っていたが、本当にたくさんの人が試験を受けに来ている。
10年ほど前には僕もあの中にいたわけだ。
やがて試験が終わってちとせが出てきた。
「おつかれ、試験どうだった?」
「大丈夫だと思うけどまだわかんない…」
しばらくして電光掲示板にちとせの受けた回の合格者の番号が表示され始めた。
「あった!合格してる‼︎」
ちとせは飛び上がって喜んだ。
「うれしい~」
「よかったね」
真新しい免許証を受け取ったちとせは帰りの道中ずっとご機嫌で免許証を眺めていた。
「お祝いに晩ごはん食べて帰ろうか?」
「やったー!」
その夜は二人で少し豪華な夕食をとった。
それからちとせは家の周りで少しずつ運転の練習をするのが日課になった。
少し車の運転に慣れたある日の朝、
ちとせが「少し調子よくないから今日お医者さん行ってくるね」と言った。
普段ちとせはあまりそういうことを言わないので少し気になりながら僕は出勤していった。
そして夕方帰ってくるとちとせがいつになく上機嫌で迎えてくれた。
「けんごさんおかえり~!」
「どうしたの?ご機嫌で」
「あのね、赤ちゃんできたの…」
「ほんとに⁉︎」
「うん、お医者さんで診てもらったら妊娠してるって」
「やったー!」
僕は嬉しさのあまりちとせを抱きかかえていた。
「ちょっと、けんごさん危ないって」
「ごめん、あまりにも嬉しくって…」
「お義母さんには言った?」
「うん、帰ってきてすぐに言ったよ、ものすごくよろこんでくれた」
ついに僕たちの子供ができた、生まれるのはまだ先だけど、なんだか興奮していた。
安定期に入るまではまだまだ安心はできないけど元気で生まれてきてほしい。
それからちとせははるかさんに教わりながら出産の準備を始めた。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
毒と花言葉
佑佳
恋愛
オレは先輩の秘密を知ってしまった――
オープンスクールのポスターに映っていた女子生徒を追って私立の高校に入学した瀬尾丈(せおたける)。
彼女――高城鈴蘭(たかしろすずらん)は、三年生に進級していた。
丈はなんとかコンタクトをとろうと一人奮闘し始める。
そんな折に、高城先輩との間を邪魔しに入ってきた男子生徒から、彼女に関する黒い事実を知らされて……。
ノーと言えない高城先輩の毒消しとなりたい丈は、泥沼の中から彼女を救い出すことができるのか。

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる