ちぃちゃんと僕

みやぢ

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ちとせ、21歳<1>

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天城島へ引っ越してからも僕たちはときどき「はるかぜ」に顔を出していた。

梅雨明けを控えたある日、ようこさんが「ひさしぶりに天城島で撮影合宿したいんだけどいい場所知らない?」
と言い出した。

橋が開通してから劇的に発展したとはいえ、まだまだ自然いっぱいの島だし、整備された観光地もたくさんあって撮影場所には事欠かない。
実際僕も引っ越してからは合間をみて島で撮影することが多い。

「撮影できるところはいくらでもありますよ」
「そう、だったらけんごくんアテンドしてくれないかしら、もちろんちとせちゃんも一緒にね」

そういうわけで僕は「はるかぜ光画部」の撮影合宿のお世話をすることになった。


夕食の時にその話をしているとたけしさんが、
「泊まる宿は決まってるのかい?」
「まだそこまでは決まってないです」
「だったらとおる叔父さんが料理旅館してるからそこに頼んでみなよ、安くしてくれると思うよ」

とおる叔父さんとはたけしさんのお父さんの弟にあたる人で僕たちの結婚式にも参列してくれていた。

かつてアルバイトしていた「天城フォトサービス」のある街で料理旅館を営んでいるそうだ。

僕はさっそくようこさんと連絡を取り、だいたいの人数と予算を聞いて、次の休日にとおる叔父さんの旅館を訪ねた。

とおる叔父さんは笑顔で迎えてくれ、
「大丈夫、任せておいて」
と言ってくれた。

その帰り道、「天城フォトサービス」に立ち寄った、社長さんは僕が結婚して島へ移住したことに驚いていたが、嬉しそうな顔をしてくれた。

そしてロケハンがてら島の反対側の海沿いを走っていると、突然ちとせが声を上げた。
「この場所、前にけんごさんと来たよね」

車の免許を取って初めてちとせと島をドライブした時に立ち寄った漁港だった。

「ちょっと寄ってみようか」

ちょうどあの時と同じように夕陽が海に沈もうとしていた。

もうあれから10年が経とうとしている、あの時小学生だったちとせは立派に成長して僕の妻になった。

二人はあの時を思い出して顔を見合わせて微笑んだ。

そして撮影合宿の当日、レンタカーの大きなワンボックス車でみんながやって来た。

僕は自分の車で先導しながら島を巡り、景色のいい場所で撮影する、時にはちとせもモデルになった。

夕方になって宿へ到着し、宴会が始まった。
いろいろあって「はるかぜ光画部」としての合宿は久しぶりらしい、実際僕が参加してからは開催されていなかった。

その夜は大いに盛り上がっていた。

とおる叔父さんは僕たちの部屋を用意してくれていたのでちとせと二人、そこで休んだ。

そして次の日は以前ちとせと行ったフラワーランドへみんなで行った。

小高い丘の上にある季節の花々が咲き乱れる広大な公園で、みんな思い思いの場所で撮影していた。

夕方、高速のインターチェンジの近くでみんなを見送って家へと戻った。

「たのしかったねー」
「みんないい表情してたよね」
「またできるといいなぁ」

ちとせもみんなと触れ合えてうれしそうだった。








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