ちぃちゃんと僕

みやぢ

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ちとせ、19歳<4>

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結婚式の一週間ほど前に新しい家の改装工事が終わり、僕たちは少しずつ荷物を運んでいった。

そして結婚式当日、教会の厳かな雰囲気の中、僕たちはお互いの親戚たちに見守られて誓いを交わした。

そして披露宴ではなく立食形式のパーティーが始まった。

ちとせの同級生はまだ学生も多く会費制にして少しでも負担を減らしてたくさんの人たちに来てほしいという思いからだった。

「はるかぜ光画部」のメンバーもたくさん来てくれ、マスターのイチノセさんも店を休みにしてようこさんに付き添われて来てくれた。

「けんごくん、ちとせちゃん、おめでとう」

みんなが口々にお祝いの言葉をくれた。

「ありがとうございます」

僕たちは深々と頭を下げた。

そして宴が終わり、みんなを送り出したあと、誰もいなくなった会場で僕はちとせと二人、ほっと息をついた。

「終わったね」
「うん、でもなんとなく実感は湧いてきた」

ちとせは薬指に光る真新しい指輪を眺めながらそう言った。

その時なんとなく二人とも笑いが込み上げてきてどちらともなく笑い出した。

「お式のときけんごさんめちゃくちゃ緊張してたよね」
「ちとせだってガチガチだったじゃない」
二人で笑っているとちとせがポツリと言った。
「たくさん来てくれてよかった」
「うん、よかったね」

そして僕たちは二次会の会場の「はるかぜ」へと向かった。

結婚式から二日後、僕たちは新婚旅行へ出発した、考えてみれば二人で旅行するのは初めてだった。

3泊4日の旅行中、僕はちとせの写真をたくさん撮った、幸せそうな笑顔のちとせを撮るのは楽しかった。

旅行から帰ってきて、僕のアパートで過ごす最後の夜が来た。

おおかたの荷物は運び出してあるのでがらんとしていた、明日引っ越し業者に家具類を運んでもらって完了する、思えば高校を卒業して10年余りを過ごして来た家だけにいろんなことを思い出した。

「どうしたの?」
思いを巡らせているとちとせが聞いてきた。
「うん、この家ともいよいよお別れかと思うとね…」
「そうね、ここにはけんごさんの思い出が詰まってるものね」

だけど明日からはちとせと二人、新しい家での生活が始まるのだ。


翌日、引っ越し業者のトラックを見送って僕たちも島へと向かった。

荷物を運び終わって業者が帰ったあと、荷物の整理をしながらちとせがつぶやいた、
「物っていつのまにか増えてるよね、けんごさんのところへ行く時はこんなになかったのになぁ…」
「生活してるとそうなるよね、僕もそう思ったよ」
いつまでも整理のつかない山積みの段ボール箱を前に二人でため息をついていた。

そして島での新しい生活が始まった。

朝僕はバスターミナルから高速バスに乗る、通勤ラッシュ時なので渋滞で遅れないか心配していたが、ほぼ定刻通りにバスは到着した。

ちとせは「さんらいず」を手伝っている、数年前に島の豊かな自然に目をつけた地元の大学が自然科学関係の学部のキャンパスを開設したこともあり「さんらいず」のある街にも学生がたくさん来るようになってお店の客層も一変し、かなり忙しくなったらしい。

ちとせも同年代の若者たちとお店で交流するようになって楽しそうにしていた。


ちとせ、19歳 <了>




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