ちぃちゃんと僕

みやぢ

文字の大きさ
上 下
28 / 36

ちとせ、19歳<2>

しおりを挟む
あれこれ悩んでいるうちにも無情にも日々は過ぎていく。

悩んでばかりもいられない、日々をしっかり生きるしかないのだ。

そうこうしてるうちに「はるかぜ光画部」の写真展が始まった。

僕はちとせと展示を見に出かけ、駅の改札を抜けたところで声をかけられた。

「けんご…くん?」

振り返るとそこにはあおいがいた。

「あお…い?どうしてここに?」

「元気そうでよかった、主人が出張でいなくて心細いからこの子連れて実家に帰ってるの」

見るとあおいはベビーカーに赤ちゃんを乗せていた。

「子供生まれたんだ、かわいいじゃない」

「まだまだ手がかかって大変よ、そちらは貴方の彼女?」

「まぁね、もうすぐ結婚する予定なんだ」

「こんにちは、ちとせって言います」

「かわいい子ね」

赤ちゃんがぐずりそうになったのを見てあおいは気を逸らしたが、ちとせが気を利かせてあやしはじめた。

「おねぇちゃんと遊ぼうね~」

「それでけんごくんは今どうしてるの?」

「あれからいろいろあって今はまたヨコザワ文具で働いてるよ」

「そうなんだ」

あおいはちとせの方を向いて「ふふっ、いいお母さんになれそうね」と笑った。

「旦那さんはどんな人?」

「すごく優しい人よ、けんごくんに似てるかな…」

「そう…幸せそうでよかった」

「ありがと、けんごくんもちとせちゃんとお幸せにね」

「そろそろ行かないとな、じゃあまた」

「けんごくん、またね」

そう言ってあおいは手を差し出して僕たちは握手をした。

そしてあおいは駅の雑踏の中に消えていった。

そして「はるかぜ」へ向かう道中ちとせは「赤ちゃんかわいかったねー、わたしも早くほしいなぁ」とつぶやいていた。



そして「はるかぜ」へ着くとウエノさんが息子のりょうたろうくんと一緒に来ていた、
高校に入ってから僕のすすめで「はるかぜ光画部」に入会して学校の写真部と掛け持ちで活動していて、
芸大の写真学科への推薦入学が決まったそうだ。

今回の展示は高校生活の集大成だと気合を入れていた。

「りょうたろうくん、こんにちは」

「あっ!けんごさんこんにちは!」

「あら、けんごくんの彼女ね、かわいいわね」

ウエノさんが言った瞬間、ちとせが目を丸くした。

「えーっ⁉︎、りょうたろうくんとけんごさん知り合いだったの?」

「けんごさんの彼女がちとせちゃんだって知らなかったよ!歳上の彼氏がいるとは聞いていたけど…」

「…?」

事情を知らない僕とウエノさんは顔を見合わせた。

「どういうこと?」

実はちとせとりょうたろうくんは同じクラスだったのだ、
通ってる学校が同じなのは知ってたけどまさかクラスまで同じとは思っていなかった。

偶然とは恐ろしいものだ…とみんなで笑い合った。

そして、ウエノさんに誘われて四人で夕食に行くことになった。

「旦那さんは大丈夫なんですか?」

「うん、あの人今日は接待ゴルフで遅くなるから晩ごはんいらないって」

そして居酒屋で和気あいあいとりょうたろうくんの推薦合格を祝った。

そして家へ帰る道中ちとせが、
「はやく赤ちゃん欲しいな、けど卒業するまでは…」
「うん、それに子供ができたら今の家では狭いから引っ越しも考えないとな…」

まだまだ課題は山積みだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

シチュボの台本詰め合わせ(女性用)

勇射 支夢
恋愛
書いた台本を適当に置いておきます。 フリーなので好きにお使いください。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...