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ちとせ、19歳<2>
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あれこれ悩んでいるうちにも無情にも日々は過ぎていく。
悩んでばかりもいられない、日々をしっかり生きるしかないのだ。
そうこうしてるうちに「はるかぜ光画部」の写真展が始まった。
僕はちとせと展示を見に出かけ、駅の改札を抜けたところで声をかけられた。
「けんご…くん?」
振り返るとそこにはあおいがいた。
「あお…い?どうしてここに?」
「元気そうでよかった、主人が出張でいなくて心細いからこの子連れて実家に帰ってるの」
見るとあおいはベビーカーに赤ちゃんを乗せていた。
「子供生まれたんだ、かわいいじゃない」
「まだまだ手がかかって大変よ、そちらは貴方の彼女?」
「まぁね、もうすぐ結婚する予定なんだ」
「こんにちは、ちとせって言います」
「かわいい子ね」
赤ちゃんがぐずりそうになったのを見てあおいは気を逸らしたが、ちとせが気を利かせてあやしはじめた。
「おねぇちゃんと遊ぼうね~」
「それでけんごくんは今どうしてるの?」
「あれからいろいろあって今はまたヨコザワ文具で働いてるよ」
「そうなんだ」
あおいはちとせの方を向いて「ふふっ、いいお母さんになれそうね」と笑った。
「旦那さんはどんな人?」
「すごく優しい人よ、けんごくんに似てるかな…」
「そう…幸せそうでよかった」
「ありがと、けんごくんもちとせちゃんとお幸せにね」
「そろそろ行かないとな、じゃあまた」
「けんごくん、またね」
そう言ってあおいは手を差し出して僕たちは握手をした。
そしてあおいは駅の雑踏の中に消えていった。
そして「はるかぜ」へ向かう道中ちとせは「赤ちゃんかわいかったねー、わたしも早くほしいなぁ」とつぶやいていた。
そして「はるかぜ」へ着くとウエノさんが息子のりょうたろうくんと一緒に来ていた、
高校に入ってから僕のすすめで「はるかぜ光画部」に入会して学校の写真部と掛け持ちで活動していて、
芸大の写真学科への推薦入学が決まったそうだ。
今回の展示は高校生活の集大成だと気合を入れていた。
「りょうたろうくん、こんにちは」
「あっ!けんごさんこんにちは!」
「あら、けんごくんの彼女ね、かわいいわね」
ウエノさんが言った瞬間、ちとせが目を丸くした。
「えーっ⁉︎、りょうたろうくんとけんごさん知り合いだったの?」
「けんごさんの彼女がちとせちゃんだって知らなかったよ!歳上の彼氏がいるとは聞いていたけど…」
「…?」
事情を知らない僕とウエノさんは顔を見合わせた。
「どういうこと?」
実はちとせとりょうたろうくんは同じクラスだったのだ、
通ってる学校が同じなのは知ってたけどまさかクラスまで同じとは思っていなかった。
偶然とは恐ろしいものだ…とみんなで笑い合った。
そして、ウエノさんに誘われて四人で夕食に行くことになった。
「旦那さんは大丈夫なんですか?」
「うん、あの人今日は接待ゴルフで遅くなるから晩ごはんいらないって」
そして居酒屋で和気あいあいとりょうたろうくんの推薦合格を祝った。
そして家へ帰る道中ちとせが、
「はやく赤ちゃん欲しいな、けど卒業するまでは…」
「うん、それに子供ができたら今の家では狭いから引っ越しも考えないとな…」
まだまだ課題は山積みだった。
悩んでばかりもいられない、日々をしっかり生きるしかないのだ。
そうこうしてるうちに「はるかぜ光画部」の写真展が始まった。
僕はちとせと展示を見に出かけ、駅の改札を抜けたところで声をかけられた。
「けんご…くん?」
振り返るとそこにはあおいがいた。
「あお…い?どうしてここに?」
「元気そうでよかった、主人が出張でいなくて心細いからこの子連れて実家に帰ってるの」
見るとあおいはベビーカーに赤ちゃんを乗せていた。
「子供生まれたんだ、かわいいじゃない」
「まだまだ手がかかって大変よ、そちらは貴方の彼女?」
「まぁね、もうすぐ結婚する予定なんだ」
「こんにちは、ちとせって言います」
「かわいい子ね」
赤ちゃんがぐずりそうになったのを見てあおいは気を逸らしたが、ちとせが気を利かせてあやしはじめた。
「おねぇちゃんと遊ぼうね~」
「それでけんごくんは今どうしてるの?」
「あれからいろいろあって今はまたヨコザワ文具で働いてるよ」
「そうなんだ」
あおいはちとせの方を向いて「ふふっ、いいお母さんになれそうね」と笑った。
「旦那さんはどんな人?」
「すごく優しい人よ、けんごくんに似てるかな…」
「そう…幸せそうでよかった」
「ありがと、けんごくんもちとせちゃんとお幸せにね」
「そろそろ行かないとな、じゃあまた」
「けんごくん、またね」
そう言ってあおいは手を差し出して僕たちは握手をした。
そしてあおいは駅の雑踏の中に消えていった。
そして「はるかぜ」へ向かう道中ちとせは「赤ちゃんかわいかったねー、わたしも早くほしいなぁ」とつぶやいていた。
そして「はるかぜ」へ着くとウエノさんが息子のりょうたろうくんと一緒に来ていた、
高校に入ってから僕のすすめで「はるかぜ光画部」に入会して学校の写真部と掛け持ちで活動していて、
芸大の写真学科への推薦入学が決まったそうだ。
今回の展示は高校生活の集大成だと気合を入れていた。
「りょうたろうくん、こんにちは」
「あっ!けんごさんこんにちは!」
「あら、けんごくんの彼女ね、かわいいわね」
ウエノさんが言った瞬間、ちとせが目を丸くした。
「えーっ⁉︎、りょうたろうくんとけんごさん知り合いだったの?」
「けんごさんの彼女がちとせちゃんだって知らなかったよ!歳上の彼氏がいるとは聞いていたけど…」
「…?」
事情を知らない僕とウエノさんは顔を見合わせた。
「どういうこと?」
実はちとせとりょうたろうくんは同じクラスだったのだ、
通ってる学校が同じなのは知ってたけどまさかクラスまで同じとは思っていなかった。
偶然とは恐ろしいものだ…とみんなで笑い合った。
そして、ウエノさんに誘われて四人で夕食に行くことになった。
「旦那さんは大丈夫なんですか?」
「うん、あの人今日は接待ゴルフで遅くなるから晩ごはんいらないって」
そして居酒屋で和気あいあいとりょうたろうくんの推薦合格を祝った。
そして家へ帰る道中ちとせが、
「はやく赤ちゃん欲しいな、けど卒業するまでは…」
「うん、それに子供ができたら今の家では狭いから引っ越しも考えないとな…」
まだまだ課題は山積みだった。
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