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ちとせ、17歳<4>
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ちとせと暮らすようになって一年あまりが過ぎた。
「はるかぜ」でのアルバイトは結局ようこさんが帰国してからも続けることになった。
脚が悪いイチノセさんの代わりにようこさんが所用で外出することが多いのでもう一人いてくれた方が心強いと言ってくれ、そのまま続けることになったのだ。
そしてちとせは外で気を張ってる時間が長くなったせいか、家では甘えてくるようになった。
そんなある日のことだった。
夕食を済ませてくつろいでいるとちとせが、
「あのね、ひとつけんごさんに聞きたいことがあるの」
「なに?」
「前に見せてもらったハガキの女の人…ウエディングドレスの…あの人ってもしかしてけんごさんの彼女だった人?」
ときどきちとせはストレートにこういうことを聞いてくる。
包み隠さずにすべてを伝えようと思った。
「そうだよ、高校生の時付き合ってた」
「それで…その人とは……したの?」
ちとせは恥ずかしそうに聞いた。
どう答えたものか、すこし躊躇したが、
「三年生の冬休みにね…でもそのあと気まずくなって…」
「そうなのね、でも過去の話だし責めないよ」
ちとせも年頃の女の子だし、こうなることはある程度予測はしていた。
「わたしとは……しないの?」
僕はあおいとのことをあらためてちとせに話した。
そのうえで、同じ失敗をしてちとせを失いたくなかったことを伝えた。
「わたしももう子供じゃないし、けんごさんのお嫁さんになりたい気持ちは今も変わらないよ」
そうだった、もうちとせとの付き合いはこの夏で7年になる、それだけ彼女はまっすぐに僕を見てくれていたんだ。
ちとせは潤んだ目で僕を見つめ、そして抱きついてきた。
「お兄ちゃん!」
そしてその夜、僕とちとせは初めて体を重ねた。
抱き合ってそのまま朝を迎え、目を覚ますとちとせはまだ横で眠っていた。
やがてちとせが目を覚ましたとき
ちとせの表情に胸が高鳴った。
もう知り合った頃の子供の顔ではなく、大人の女性の顔をしていた。
「おはようお兄ちゃん、どうしたのじっと見つめて…」
…と、そこで初めて裸にシーツを巻いただけの自分の姿に気付き、
「きゃっ!恥ずかしい!」
と声を上げた。
そして、あらためて僕の顔を見て、
「もう一回約束して、卒業したら…ねっ」
と言って小指を差し出した。
この日からちとせは僕の呼び方を使い分けるようになった。
外では普段通り「けんごさん」と呼ぶが、二人きりの時は以前のように「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。
卒業するまでの間、ちとせの期待に応えられるように頑張ろう。
僕はあらためてそう決心した。
ちとせ、17歳 <了>
「はるかぜ」でのアルバイトは結局ようこさんが帰国してからも続けることになった。
脚が悪いイチノセさんの代わりにようこさんが所用で外出することが多いのでもう一人いてくれた方が心強いと言ってくれ、そのまま続けることになったのだ。
そしてちとせは外で気を張ってる時間が長くなったせいか、家では甘えてくるようになった。
そんなある日のことだった。
夕食を済ませてくつろいでいるとちとせが、
「あのね、ひとつけんごさんに聞きたいことがあるの」
「なに?」
「前に見せてもらったハガキの女の人…ウエディングドレスの…あの人ってもしかしてけんごさんの彼女だった人?」
ときどきちとせはストレートにこういうことを聞いてくる。
包み隠さずにすべてを伝えようと思った。
「そうだよ、高校生の時付き合ってた」
「それで…その人とは……したの?」
ちとせは恥ずかしそうに聞いた。
どう答えたものか、すこし躊躇したが、
「三年生の冬休みにね…でもそのあと気まずくなって…」
「そうなのね、でも過去の話だし責めないよ」
ちとせも年頃の女の子だし、こうなることはある程度予測はしていた。
「わたしとは……しないの?」
僕はあおいとのことをあらためてちとせに話した。
そのうえで、同じ失敗をしてちとせを失いたくなかったことを伝えた。
「わたしももう子供じゃないし、けんごさんのお嫁さんになりたい気持ちは今も変わらないよ」
そうだった、もうちとせとの付き合いはこの夏で7年になる、それだけ彼女はまっすぐに僕を見てくれていたんだ。
ちとせは潤んだ目で僕を見つめ、そして抱きついてきた。
「お兄ちゃん!」
そしてその夜、僕とちとせは初めて体を重ねた。
抱き合ってそのまま朝を迎え、目を覚ますとちとせはまだ横で眠っていた。
やがてちとせが目を覚ましたとき
ちとせの表情に胸が高鳴った。
もう知り合った頃の子供の顔ではなく、大人の女性の顔をしていた。
「おはようお兄ちゃん、どうしたのじっと見つめて…」
…と、そこで初めて裸にシーツを巻いただけの自分の姿に気付き、
「きゃっ!恥ずかしい!」
と声を上げた。
そして、あらためて僕の顔を見て、
「もう一回約束して、卒業したら…ねっ」
と言って小指を差し出した。
この日からちとせは僕の呼び方を使い分けるようになった。
外では普段通り「けんごさん」と呼ぶが、二人きりの時は以前のように「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。
卒業するまでの間、ちとせの期待に応えられるように頑張ろう。
僕はあらためてそう決心した。
ちとせ、17歳 <了>
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