20 / 36
ちとせ、15歳<4>
しおりを挟む
ちぃちゃんは中学三年生になった。
だけど進学の話を振っても曖昧な答えをするだけだった。
そんなある日、はるかさんから電話がかかってきた。
「けんごくん、ちとせの学校の進路相談があったんだけどあの子が困ったことを言い出してね…話が長くなるから今度うちまで来てくれないかしら」
そう言われて僕は次の休みの日「さんらいず」へと向かった。
「せっかくのお休みにごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
「実はね…」
はるかさんによると、学校の進路相談でちぃちゃんは島外の高校へ進学したいと言ったらしい。
それ自体は珍しいことではなく、実際僕の同級生も何人か天城島から通学していた。
先生も成績に問題はないから無理ではないと言ったらしい。
しかし問題はちぃちゃんは僕の家に下宿してそこから通うというのだ。
これにはさすがにはるかさんも驚いたらしい。
いずれ島から出て行くのは仕方ないがいくらなんでも早すぎるのはないかというのがはるかさんの意見だった。
だが、ちぃちゃんは頑として僕と一緒に暮らしたいというのだ。
これにははるかさんも困り果てたようで、僕の意見も聞きたいというわけだった。
確かに夏祭り以降、たびたび泊まりにきてはいたが、それとは話が違う。
「わたしお兄ちゃんのお嫁さんになる!」
あのときのちぃちゃんの言葉が頭をよぎった、でも今はまだ時期じゃない…
少なくとも高校卒業までは見守るつもりだったがそういう状況ではなくなってきてる。
考え込んでいるとはるかさんが切り出した。
「もうずいぶん長い付き合いになってるけど、けんごくんはちとせのことどう思ってるの?」
「それは…」
僕は意を決して今までの出来事をはるかさんに話した上で言った。
「僕は彼女の期待に応えたい、少なくとも高校卒業するまでは見守るつもりです、その先は本人の意思に任せます」
「そう、ちとせももう子供じゃなくなってるというわけね…」
「ちとせちゃんはまっすぐないい子ですよ、はるかさん達がそう育ててくれた、僕はそう思っています」
「わかったわ、主人にもそう話しておくわ、ちとせのことお願いね」
「たけしさんはなんて言ってるんですか?」
「いずれは嫁に出さなきゃならないんだから、あとは遅いか早いかだけの問題だ、って、わたしは早すぎると思ってたんだけどね」
「それに何処の馬の骨かわからん人間に嫁にやるよりけんごくんなら安心だって」
「そうですか…」
ご両親にここまで信頼されている、うれしいと思う反面、責任も重大だとあらためて思った。
とにかくちぃちゃんは僕の住む街の高校を受験することになった。
合格発表から入学式まではそんなに日がないから物置にしている空き部屋を片付けておかないとな…
ちとせ、15歳 <了>
だけど進学の話を振っても曖昧な答えをするだけだった。
そんなある日、はるかさんから電話がかかってきた。
「けんごくん、ちとせの学校の進路相談があったんだけどあの子が困ったことを言い出してね…話が長くなるから今度うちまで来てくれないかしら」
そう言われて僕は次の休みの日「さんらいず」へと向かった。
「せっかくのお休みにごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
「実はね…」
はるかさんによると、学校の進路相談でちぃちゃんは島外の高校へ進学したいと言ったらしい。
それ自体は珍しいことではなく、実際僕の同級生も何人か天城島から通学していた。
先生も成績に問題はないから無理ではないと言ったらしい。
しかし問題はちぃちゃんは僕の家に下宿してそこから通うというのだ。
これにはさすがにはるかさんも驚いたらしい。
いずれ島から出て行くのは仕方ないがいくらなんでも早すぎるのはないかというのがはるかさんの意見だった。
だが、ちぃちゃんは頑として僕と一緒に暮らしたいというのだ。
これにははるかさんも困り果てたようで、僕の意見も聞きたいというわけだった。
確かに夏祭り以降、たびたび泊まりにきてはいたが、それとは話が違う。
「わたしお兄ちゃんのお嫁さんになる!」
あのときのちぃちゃんの言葉が頭をよぎった、でも今はまだ時期じゃない…
少なくとも高校卒業までは見守るつもりだったがそういう状況ではなくなってきてる。
考え込んでいるとはるかさんが切り出した。
「もうずいぶん長い付き合いになってるけど、けんごくんはちとせのことどう思ってるの?」
「それは…」
僕は意を決して今までの出来事をはるかさんに話した上で言った。
「僕は彼女の期待に応えたい、少なくとも高校卒業するまでは見守るつもりです、その先は本人の意思に任せます」
「そう、ちとせももう子供じゃなくなってるというわけね…」
「ちとせちゃんはまっすぐないい子ですよ、はるかさん達がそう育ててくれた、僕はそう思っています」
「わかったわ、主人にもそう話しておくわ、ちとせのことお願いね」
「たけしさんはなんて言ってるんですか?」
「いずれは嫁に出さなきゃならないんだから、あとは遅いか早いかだけの問題だ、って、わたしは早すぎると思ってたんだけどね」
「それに何処の馬の骨かわからん人間に嫁にやるよりけんごくんなら安心だって」
「そうですか…」
ご両親にここまで信頼されている、うれしいと思う反面、責任も重大だとあらためて思った。
とにかくちぃちゃんは僕の住む街の高校を受験することになった。
合格発表から入学式まではそんなに日がないから物置にしている空き部屋を片付けておかないとな…
ちとせ、15歳 <了>
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています
真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる