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ちとせ、15歳<3>
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隣町に鎌倉時代の武将を祀っている有名な神社があり、初夏に行われるお祭りは武者行列などがあって観光客に人気がある。
その夏祭りにちぃちゃんが行きたいと言い出した。
一番の目的は花火だそうだが、花火が終わってからだと最終の連絡船に間に合わなくなる可能性がある。
かと言って最終の船に間に合うように現地を離れるのも混雑を考えれば至難の業だ、何度か行った事があるが花火が終わるまでは周辺はとても動ける状態ではないのだ。
僕ははるかさんにちぃちゃんを僕のアパートに泊めることを提案した。
はるかさんも仕方ないという感じで承諾してくれた。
そしてお祭り当日、港までちぃちゃんを迎えに行き、一旦アパートへ荷物を置きに帰った。
「お兄ちゃん、わたし浴衣持ってきたから着替えさせてね」
「自分で着れるんだ」
「うん、簡単に着れるのを買ってもらったの」
そう言って奥の部屋で着替え始めた。
しばらくして着替え終わったちぃちゃんが出てきた。
「どう?似合ってる?」
浴衣姿のちぃちゃんはいつもより大人びて見え、僕は少しドキッとした。
「よく似合ってる、かわいいよ」
「えへへ…」
ちぃちゃんは嬉しそうに笑った。
「少し早いけど行こうか」
そう言って僕たちは手を繋いで駅へと向かった。
神社の最寄駅はお祭りへ行くと思しき人たちでごった返していた。
拝殿にお参りしたり、縁日を見て回っていている間に花火大会を知らせるアナウンスが流れた。
やがて花火が大きな音を上げて空に打ち上がっていった。
「すごいねーこんなに近くで見るの初めて」
「綺麗だね」
ちぃちゃんは目を丸くして花火を眺めていた。
「お兄ちゃん、連れてきてくれてありがと」
ちぃちゃんの目は少し潤んでいるように見えた。
「ねぇお兄ちゃん、キス…して…ほしい」
…と上目遣いで言った。
ちぃちゃんも14歳、学校でもそういう話をしたがる年頃だ、むしろ今までそういうことにならなかったのが不思議なくらいだ。
僕はちぃちゃんの頰に手を添えて唇に軽くキスをした。
「今はこれだけだよ」
唇を離した後そう言った。
ちぃちゃんは耳まで真っ赤にしながら頷いて、照れ隠しのように抱きついてきた。
そして耳元で小さな声で言った。
「ありがと、大好き」
抱き返した身体の感触は小学生の頃のそれとは違って柔らかい女性の身体になりつつあった。
やがて花火大会も終わり、観客がザワザワと動き出した、でも今動くと駅は大混雑だからもう少し空くまで待つことにした。
混雑がやわらいだのをみはからって駅へ向かう。
まだまだ混雑してはいるが通勤ラッシュより少しマシな程度だ。
ようやく雑踏を抜け出して地元駅まで帰ってきた。
「お兄ちゃん、楽しかったね」
「ちぃちゃんが楽しめてよかった」
「来年もまた行こうね!」
僕たちはその夜、手を繋いで眠った。
ここ最近ちぃちゃんが距離を詰めてきているのを感じてはいた。
でも慌てるな、またあのときの二の舞になるぞ、そう自分に言い聞かせていた。
つまらないボタンの掛け違いでちぃちゃんと離れるのは絶対にイヤだ、そう思う自分がいた。
その夏祭りにちぃちゃんが行きたいと言い出した。
一番の目的は花火だそうだが、花火が終わってからだと最終の連絡船に間に合わなくなる可能性がある。
かと言って最終の船に間に合うように現地を離れるのも混雑を考えれば至難の業だ、何度か行った事があるが花火が終わるまでは周辺はとても動ける状態ではないのだ。
僕ははるかさんにちぃちゃんを僕のアパートに泊めることを提案した。
はるかさんも仕方ないという感じで承諾してくれた。
そしてお祭り当日、港までちぃちゃんを迎えに行き、一旦アパートへ荷物を置きに帰った。
「お兄ちゃん、わたし浴衣持ってきたから着替えさせてね」
「自分で着れるんだ」
「うん、簡単に着れるのを買ってもらったの」
そう言って奥の部屋で着替え始めた。
しばらくして着替え終わったちぃちゃんが出てきた。
「どう?似合ってる?」
浴衣姿のちぃちゃんはいつもより大人びて見え、僕は少しドキッとした。
「よく似合ってる、かわいいよ」
「えへへ…」
ちぃちゃんは嬉しそうに笑った。
「少し早いけど行こうか」
そう言って僕たちは手を繋いで駅へと向かった。
神社の最寄駅はお祭りへ行くと思しき人たちでごった返していた。
拝殿にお参りしたり、縁日を見て回っていている間に花火大会を知らせるアナウンスが流れた。
やがて花火が大きな音を上げて空に打ち上がっていった。
「すごいねーこんなに近くで見るの初めて」
「綺麗だね」
ちぃちゃんは目を丸くして花火を眺めていた。
「お兄ちゃん、連れてきてくれてありがと」
ちぃちゃんの目は少し潤んでいるように見えた。
「ねぇお兄ちゃん、キス…して…ほしい」
…と上目遣いで言った。
ちぃちゃんも14歳、学校でもそういう話をしたがる年頃だ、むしろ今までそういうことにならなかったのが不思議なくらいだ。
僕はちぃちゃんの頰に手を添えて唇に軽くキスをした。
「今はこれだけだよ」
唇を離した後そう言った。
ちぃちゃんは耳まで真っ赤にしながら頷いて、照れ隠しのように抱きついてきた。
そして耳元で小さな声で言った。
「ありがと、大好き」
抱き返した身体の感触は小学生の頃のそれとは違って柔らかい女性の身体になりつつあった。
やがて花火大会も終わり、観客がザワザワと動き出した、でも今動くと駅は大混雑だからもう少し空くまで待つことにした。
混雑がやわらいだのをみはからって駅へ向かう。
まだまだ混雑してはいるが通勤ラッシュより少しマシな程度だ。
ようやく雑踏を抜け出して地元駅まで帰ってきた。
「お兄ちゃん、楽しかったね」
「ちぃちゃんが楽しめてよかった」
「来年もまた行こうね!」
僕たちはその夜、手を繋いで眠った。
ここ最近ちぃちゃんが距離を詰めてきているのを感じてはいた。
でも慌てるな、またあのときの二の舞になるぞ、そう自分に言い聞かせていた。
つまらないボタンの掛け違いでちぃちゃんと離れるのは絶対にイヤだ、そう思う自分がいた。
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