ちぃちゃんと僕

みやぢ

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ちとせ、15歳<2>

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僕の勤める「ヨコザワ文具店」では春先の年度初めが結構忙しい。

主力の文具事務用品が一番動く時期だからだ。

倉庫にはボールペンから紙製品、果てはパソコンにコピー機まで雑多な商品が山積みになる。

商品の出庫をしながらそれらを整理していくのだが、思いのほか時間がかかる。
必然的に残業になったりするから、
帰りも遅くなり夕食は外食になりがちだ。

いつもなら職場の最寄駅の周辺のお店へ行くのだけど、この日は地元駅周辺で食べようと電車に乗っていた。

「けんごくん?」

改札を抜けたところで後ろから声をかけられた。

振り返ると高校時代の同級生、みさとがいた。

「やっぱりけんごくんだ、家こっちだったっけ?」
「いや、就職してこっちに引越してきたんだ」
「そうなんだ、今どうしてるの?」

それからしばらくみさとと立ち話をしていると、
「晩ごはんまだだったら一緒にどこか行かない?」
「いいよ」

二人で駅前のファミリーレストランへ行くことにした。

みさとは高校を卒業したあと保育士の資格を取って今は市内にある保育園に勤めているらしい。

「そっかー、けんごくんいろいろ大変だったんだね」
「そうなんだよ、まぁでも今は周りの人がいい人ばかりだから助かってるよ」
「けんごくん人徳あるからねぇ」
「そうかなぁ…」

「それはそうと、最近あおいと連絡取ってる?」
そう言われて僕はドキッとした。

あおいは高校時代付き合ってた彼女だ、三年生の冬休み以降ギクシャクしたまま連絡は取っていない。

「卒業してから全然だよ」
「そうなのね、わたしもあの子が大学行ってからは疎遠になってるからけんごくんならと思ったんだけどね…」
「そうなんだ」

「ところでけんごくん、今彼女いるの?」
「まぁ、一応ね」
「そうなんだー」

いろいろ突っ込まれるとキツいので僕は話題を変えた。

「みさとの今の仕事のこと教えてよ」
「子どもは可愛いんだけどいろいろ大変なのよー」

それからは他愛もない話で夜はふけていった。

この街にいる以上高校時代の知り合いはたくさんいるのでいつかは…思っていたが、まさかみさとに出会うとは思いもしなかった。

僕とみさと、そしてあおいは高校時代三年間同じクラスだった。

入学してすぐに仲良くなっていつも三人でいた。

あおいはみさとと同じ中学の出身で少し引っ込み思案な女の子だった。

休み時間にはいつも教室の机で本を読んでいた。

いつも活発なみさとに引っ張られるような感じだった。

一年生の終わりごろ僕とあおいは付き合い始めたが、みさとは変わらずに僕たちに接してくれていた。



「今日はありがとねー、また機会あったらご飯食べに行こうね」

そう言って駅でみさとと別れ、家へ向かった。

帰り道、あおいとのことを思い出しながら帰った。

ボタンの掛け違いだったのか?

今となっては僕にはわからない…












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