ちぃちゃんと僕

みやぢ

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ちとせ、11歳<2>

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僕たちは「天城フォトサービス」の前に着いた。

社長さんたちが嬉しそうな顔で出迎えてくれた。

しばらく話をしてから、社長に教えてもらった島の中央部の丘陵地にあるフラワーランドへ行くことにした。

小高い丘の上にたくさんの花が植えられている公園で島でも人気の観光地だ。

「わぁ~きれい」
ちぃちゃんは目を丸くして声をあげた。

ちょうど菜の花が盛りで視界の中全てが黄色一色と言っていいぐらいだった。

天城島のあるこのあたりは温暖な気候でさまざまな花の栽培も盛んだ。

公園のベンチでソフトクリームを食べながら二人でいろいろな話をした。

島の小学校は人数が少ないからクラス替えはないらしい、その代わりに全学年縦割りの班制度を取り入れているらしい。

今度5年生になるちぃちゃんは下級生のお世話をする側になるそうだ。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ帰る時間になっていた。

まだこの時期は日の入りが早く、夕陽を眺めながら海沿いの道を走る。

小さな漁港まで差し掛かるとちょうど太陽が水平線に沈むところだった。

「お日様が沈むまで見ていたいね」

僕は漁港で車を止めて二人で夕陽を眺めていた。

「お兄ちゃん、きょうはありがとね、楽しかった」
夕陽を背にちいちゃんが言った。

海からの反射がキラキラしている中に立っているちいちゃんはとてもきれいだ。

まるで天使が降りてきたようだった。


次の週末、僕はマナベさんから教えてもらっていた隣町の「ギャラリー&カフェ 
はるかぜ」を訪ねた。

「いらっしゃいませー」
コーヒーを頼んだついでにホール担当の女性に僕は訪ねた、
「ようこさんという方を訪ねて来たんですが…」
「わたしがようこですけど、ご用は何かしら?」
驚いた、こんなに若くてきれいな人が代表だなんて…
「マナベさんから紹介されて写真サークルに入りたいんです」
「あら、あの人幽霊部員のわりに勧誘だけはしっかりしてくれるのね」
ようこさんは笑った。

それから僕はマナベさんと出会った経緯やこれまでのことを話した。

ようこさんによるとこのサークル「はるかぜ光画部」は普段の活動は結構自由で三ヶ月に一度くらい撮影会があったり年に一度この「はるかぜ」で写真展を開くらしい。

年齢層は幅広く、高校生から60代までいるそうだ。

人数は結構いるが活発に活動している人は限られているとようこさんは言っていた。

実はマナベさんとようこさんは高校の同級生で、二人でこの写真サークルを立ち上げたらしい。

ようこさんのご主人はヨーロッパに単身赴任していて、子供はいないので自由に楽しんでいると笑いながら言っていた。

マナベさんは出世していくたびに顔を出さなくなっていったがそれでも写真展だけは律儀に参加するそうだ。

連絡先を交換して次の撮影会に誘ってもらえることになった。

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