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河童の宿<1>
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翌朝、目覚めるとにあはまだ眠っていた。
起こさないようにそっと布団を出て縁側に腰かけているとしばらくしてにあが起きてきた。
「にあ、おはよう」
「おはよう、たける…」
お互いに昨夜のことを思い出して顔を赤らめていた。
隣に座ってきたにあは僕の肩にもたれかかってきてひとことだけ言った。
「ありがと…」
これ以上の言葉はいらなかった。
しばらくして仲居さんが朝食の用意ができたことを告げに来た。
大広間での朝食だったけれど、オフシーズンだけあって食事をとっているのは僕たちを含めて数組だけだった。
そして他の宿泊客が部屋に戻ったのを見計らったように宿のご主人が僕たちのところへやって来た。
「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?ここでは他人の眼もありますので…」
そう言って小さな和室へ通された。
「つかぬことをお伺いしますがあなた様は龍神さまのご眷属ではありませんか?」
唐突にそう言われて僕は面食らったけど今さら隠すことでもないのでそうだと答えた。
「失礼いたしました、実はわたしどもは河童の一族でして…」
そう言われて僕は納得した、というのもここへ来てからなんとなく感じるものがあったからだ。
「やはりそうでしたか」
「われら水辺に住まうあやかしにとっては龍神さまは守護神といえます、そのご眷属に失礼があってはと思い、あえて明かさせていただきました」
伝説の河童「河太郎」から連綿と続く河童の一族としてこの地に根付いた暮らしをいているのだそうだ。
彼が言うには最近温泉の出が悪くなり、いろいろ調べても原因がわからず、肝心の泉源に近づこうにも結界が張られたように彼らでは近づけないのだそうだった。
「何か霊的な障害が起こってるとしか思えないのです…」
「そうなんですね…でも僕の力でお役に立てるか」
「龍神さまのお力なら少なくとも結界の中に入ることはおそらく可能かと思います」
「…と言っても僕は1/4しか龍神の血筋が…」
「お願いします!」
額を床に擦り付けるばかりに頭を下げるご主人に気押されて僕はとりあえず見に行くことを約束した。
そして宿の裏山の中腹にある泉源に僕とにあ、そしてご主人の三人は向かった。
「ここです、わたしは何故かこれ以上中には入れないのです」
にあのいた祠と同じくらいの大きさの小屋だった、入り口に建てられた柱には注連縄が渡してある。
「この注連縄は?」
「龍神さまをお祀りしておりますので…」
そして注連縄をくぐる時、何か空気が変わった気がした。
「にあ、何かいる…気をつけて」
そして僕は小屋の扉を開いた…
起こさないようにそっと布団を出て縁側に腰かけているとしばらくしてにあが起きてきた。
「にあ、おはよう」
「おはよう、たける…」
お互いに昨夜のことを思い出して顔を赤らめていた。
隣に座ってきたにあは僕の肩にもたれかかってきてひとことだけ言った。
「ありがと…」
これ以上の言葉はいらなかった。
しばらくして仲居さんが朝食の用意ができたことを告げに来た。
大広間での朝食だったけれど、オフシーズンだけあって食事をとっているのは僕たちを含めて数組だけだった。
そして他の宿泊客が部屋に戻ったのを見計らったように宿のご主人が僕たちのところへやって来た。
「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?ここでは他人の眼もありますので…」
そう言って小さな和室へ通された。
「つかぬことをお伺いしますがあなた様は龍神さまのご眷属ではありませんか?」
唐突にそう言われて僕は面食らったけど今さら隠すことでもないのでそうだと答えた。
「失礼いたしました、実はわたしどもは河童の一族でして…」
そう言われて僕は納得した、というのもここへ来てからなんとなく感じるものがあったからだ。
「やはりそうでしたか」
「われら水辺に住まうあやかしにとっては龍神さまは守護神といえます、そのご眷属に失礼があってはと思い、あえて明かさせていただきました」
伝説の河童「河太郎」から連綿と続く河童の一族としてこの地に根付いた暮らしをいているのだそうだ。
彼が言うには最近温泉の出が悪くなり、いろいろ調べても原因がわからず、肝心の泉源に近づこうにも結界が張られたように彼らでは近づけないのだそうだった。
「何か霊的な障害が起こってるとしか思えないのです…」
「そうなんですね…でも僕の力でお役に立てるか」
「龍神さまのお力なら少なくとも結界の中に入ることはおそらく可能かと思います」
「…と言っても僕は1/4しか龍神の血筋が…」
「お願いします!」
額を床に擦り付けるばかりに頭を下げるご主人に気押されて僕はとりあえず見に行くことを約束した。
そして宿の裏山の中腹にある泉源に僕とにあ、そしてご主人の三人は向かった。
「ここです、わたしは何故かこれ以上中には入れないのです」
にあのいた祠と同じくらいの大きさの小屋だった、入り口に建てられた柱には注連縄が渡してある。
「この注連縄は?」
「龍神さまをお祀りしておりますので…」
そして注連縄をくぐる時、何か空気が変わった気がした。
「にあ、何かいる…気をつけて」
そして僕は小屋の扉を開いた…
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