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山の祠の守り神<1>
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にあと出会った山の祠、にあと暮らすようになってすっかり忘れていたのだけど、
最近よく夢に出てくるようになった。
祠の前でにあではない誰かが立っている、僕は後ろから眺めているだけでそれが誰なのかはわからない…
かといってにあの時のような切羽詰まった感じではないけれど何か気になる。
そういえばあの祠、由来を調べたこともなかった。
図書館で街の歴史に関する本をいくつか借りてきて調べてみたけれど具体的な記述はない。
切り拓かれて太陽光発電所になってしまったあの山の山頂にかつてお社があったことはわかったけれど、それ以上のことはわからなかった。
「たける、何を調べてるの?」
「きみがいた祠の由来をね、少し気になったから…」
少し考えてからにあが言った。
「わたしもただねぐらにしていただけだからよくわからないな、でもあそこにいると何か守られている感じがして好きだった」
「久しぶりに行ってみようか」
「そうね」
こうして僕とにあは久しぶりににあと出会った山の祠を訪ねることにした。
懐かしい小学校への通学路を歩きながら、にあに僕と出会う以前のことを聞いていた。
でもにあ自身その辺りの記憶が抜け落ちているのかはっきり覚えていないらしい。
そして祠に着くとおばあさんが一人、祠に手を合わせていた。
夢に出てきた光景によく似てるが少し違う。
建物自体は壊れてしまっていたから土台の石段の上にお供え物が置いてあった。
僕はおばあさんに声をかけた。
「こんにちは!」
「おや、こんなところに珍しいね」
「いつもお参りされてるんですか?」
「近くに畑があるんでね、いつも畑仕事の行き帰りにお参りしてるよ、嫁いできてからだからもう五十年になるかね」
「僕も小学校の通学路だったんで行き帰りにお参りしてたんです」
おばあさんはそれを聞いてにっこりと笑った。
「そうかい、発電所の工事で酷いことになったけどここには村人の魂が込められているからねぇ…放ってはおけないよ」
「そうなんですね…」
それからおばあさんはこの辺りの村のことを教えてくれた。
おばあさんの姑さん、そしてその上の世代の人たちから口伝に聞いた話、どれも街の図書館で借りた歴史の本には載っていないことばかりだった。
かつて山の上にあったお社は廃仏毀釈の流れで打ち壊され、そのまま捨て置かれてしまい、いつしか朽ち果ててしまった。
けれど麓の祠は村人たちの信仰を集めていたために難を逃れたらしい。
けれど少しずつ村の人口が減り、急速な宅地化で祠の維持もままならなくなったそうだ。
そして発電所の建設が始まり、工事用の車が出入りするようになり、誤って祠にダンプカーが突っ込んで祠を破壊してしまった。
だけど土地の権利関係がはっきりしない場所だったのでそのまま放置されていたのだそうだ。
「なんとか祠を再建できないものか、周りのものに言うてもなかなか良い返事はもらえなくてな…」
「難しい問題ですね、土地の所有者もはっきりしないし…」
そのとき、僕の頭にある考えが浮かんだ。
「この話を聞いてもらいたい人がいるんです、少し時間をもらえますか?」
「構わないけど?」
翌日、僕はある人に電話をした。
最近よく夢に出てくるようになった。
祠の前でにあではない誰かが立っている、僕は後ろから眺めているだけでそれが誰なのかはわからない…
かといってにあの時のような切羽詰まった感じではないけれど何か気になる。
そういえばあの祠、由来を調べたこともなかった。
図書館で街の歴史に関する本をいくつか借りてきて調べてみたけれど具体的な記述はない。
切り拓かれて太陽光発電所になってしまったあの山の山頂にかつてお社があったことはわかったけれど、それ以上のことはわからなかった。
「たける、何を調べてるの?」
「きみがいた祠の由来をね、少し気になったから…」
少し考えてからにあが言った。
「わたしもただねぐらにしていただけだからよくわからないな、でもあそこにいると何か守られている感じがして好きだった」
「久しぶりに行ってみようか」
「そうね」
こうして僕とにあは久しぶりににあと出会った山の祠を訪ねることにした。
懐かしい小学校への通学路を歩きながら、にあに僕と出会う以前のことを聞いていた。
でもにあ自身その辺りの記憶が抜け落ちているのかはっきり覚えていないらしい。
そして祠に着くとおばあさんが一人、祠に手を合わせていた。
夢に出てきた光景によく似てるが少し違う。
建物自体は壊れてしまっていたから土台の石段の上にお供え物が置いてあった。
僕はおばあさんに声をかけた。
「こんにちは!」
「おや、こんなところに珍しいね」
「いつもお参りされてるんですか?」
「近くに畑があるんでね、いつも畑仕事の行き帰りにお参りしてるよ、嫁いできてからだからもう五十年になるかね」
「僕も小学校の通学路だったんで行き帰りにお参りしてたんです」
おばあさんはそれを聞いてにっこりと笑った。
「そうかい、発電所の工事で酷いことになったけどここには村人の魂が込められているからねぇ…放ってはおけないよ」
「そうなんですね…」
それからおばあさんはこの辺りの村のことを教えてくれた。
おばあさんの姑さん、そしてその上の世代の人たちから口伝に聞いた話、どれも街の図書館で借りた歴史の本には載っていないことばかりだった。
かつて山の上にあったお社は廃仏毀釈の流れで打ち壊され、そのまま捨て置かれてしまい、いつしか朽ち果ててしまった。
けれど麓の祠は村人たちの信仰を集めていたために難を逃れたらしい。
けれど少しずつ村の人口が減り、急速な宅地化で祠の維持もままならなくなったそうだ。
そして発電所の建設が始まり、工事用の車が出入りするようになり、誤って祠にダンプカーが突っ込んで祠を破壊してしまった。
だけど土地の権利関係がはっきりしない場所だったのでそのまま放置されていたのだそうだ。
「なんとか祠を再建できないものか、周りのものに言うてもなかなか良い返事はもらえなくてな…」
「難しい問題ですね、土地の所有者もはっきりしないし…」
そのとき、僕の頭にある考えが浮かんだ。
「この話を聞いてもらいたい人がいるんです、少し時間をもらえますか?」
「構わないけど?」
翌日、僕はある人に電話をした。
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