花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

文字の大きさ
上 下
20 / 31

龍神の子<1>

しおりを挟む
お社の奉仕に行った帰り、駅前で珍しく若い托鉢のお坊さんを見かけた。

近づいて小銭をお鉢に入れて一礼すると、お坊さんは深々と頭を下げ、お経を唱えたあとこう言った。

「貴方は龍神さまの血筋の方ですね、少しお話したいのですがよろしいでしょうか?」
「どうしてそれを?」
「わたくしもそうなのです」
「⁉︎」

翠明すいめい」と名乗る僕と同年代くらいのお坊さんとしばらくそこで話をしていたけれど、改めてお寺にお邪魔することにしてその場は別れた。

帰って母さんにその話をすると
「そうね、日本全国に龍神伝説は存在するからまったくあり得ない話ではないわね…とにかく行ってらっしゃい」

そして学校が休みの日、僕たちは翠明すいめいさんから聞いた大きな湖のほとりにある寺を訪ねた。

境内に入ると本堂の隣に小さな鳥居とお社があった、神仏習合というかたちのお寺だ。

ここにたぶん翠明すいめいさんの言う龍神さまをお祀りしているのだろう。

しばらくして翠明すいめいさんが本堂から出てきた。

「たけるさん、遠いところありがとうございます、どうぞこちらへ」

翠明すいめいさんに講堂に案内されてそこで待つことになった。

「失礼いたします、お茶をお持ちしました」
「えっ⁉︎」

お茶を持ってきた巫女装束の女性を見て僕は思わず声を上げた。

みずきさんにそっくりなのだ…

「どうされました?」
「いえ、あまりにも似ているので…」
「どなたにかしら?」
「ひいおば…みずきさん、龍神さま…」

その女の人は混乱している僕を見てにっこりと笑った。

「ふふっ、そんなに似ているのね」
「わたくしはみどりと申します、このお社の祭神にして翠明すいめいの母でございます、よろしくお願いいたします」
みどりさんは三つ指をついてお辞儀した。

しばらくして翠明すいめいさんもやってきてこのお寺の成り立ちのお話をしてくれた。

お寺そのものはかなり昔からあって、もともと龍神さまもお祀りされていたのだけど、翠明すいめいさんのお祖父さんが住職だった頃、大雨で湖が溢れて畔の村が水浸しになった時に修行中の翠明すいめいさんのお父さんと被害にあった村人の救済に奔走したのがみどりさんでその後二人は夫婦となり、翠明すいめいさんが生まれたそうだ。

お父さんはみどりさんが龍神であることに気づいていたそうだけど、あえて触れずにいたらしい。

翠明すいめいさんは物心ついた頃から龍神の力を受け継いでいることに気づいていたけれどその力をどうすれば人の役に立つよう使えるかずっと考えていたそうだ。

そして偶然街で出会った僕が龍神の血を引いていることに気付き、声を掛けたらしい。

「たけるさん、貴方と一緒にいる猫又の少女、彼女も貴方の力が生み出したものです、どうかご自身の力に自信を持ってください」

「だけど僕にはその力の使い所がまだわからないんです…」

「それはやがてわかること、今は心を磨いていくことです」

そう言って翠明すいめいさんはにっこり笑った。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...