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龍神の子<1>
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お社の奉仕に行った帰り、駅前で珍しく若い托鉢のお坊さんを見かけた。
近づいて小銭をお鉢に入れて一礼すると、お坊さんは深々と頭を下げ、お経を唱えたあとこう言った。
「貴方は龍神さまの血筋の方ですね、少しお話したいのですがよろしいでしょうか?」
「どうしてそれを?」
「わたくしもそうなのです」
「⁉︎」
「翠明」と名乗る僕と同年代くらいのお坊さんとしばらくそこで話をしていたけれど、改めてお寺にお邪魔することにしてその場は別れた。
帰って母さんにその話をすると
「そうね、日本全国に龍神伝説は存在するからまったくあり得ない話ではないわね…とにかく行ってらっしゃい」
そして学校が休みの日、僕たちは翠明さんから聞いた大きな湖のほとりにある寺を訪ねた。
境内に入ると本堂の隣に小さな鳥居とお社があった、神仏習合というかたちのお寺だ。
ここにたぶん翠明さんの言う龍神さまをお祀りしているのだろう。
しばらくして翠明さんが本堂から出てきた。
「たけるさん、遠いところありがとうございます、どうぞこちらへ」
翠明さんに講堂に案内されてそこで待つことになった。
「失礼いたします、お茶をお持ちしました」
「えっ⁉︎」
お茶を持ってきた巫女装束の女性を見て僕は思わず声を上げた。
みずきさんにそっくりなのだ…
「どうされました?」
「いえ、あまりにも似ているので…」
「どなたにかしら?」
「ひいおば…みずきさん、龍神さま…」
その女の人は混乱している僕を見てにっこりと笑った。
「ふふっ、そんなに似ているのね」
「わたくしはみどりと申します、このお社の祭神にして翠明の母でございます、よろしくお願いいたします」
みどりさんは三つ指をついてお辞儀した。
しばらくして翠明さんもやってきてこのお寺の成り立ちのお話をしてくれた。
お寺そのものはかなり昔からあって、もともと龍神さまもお祀りされていたのだけど、翠明さんのお祖父さんが住職だった頃、大雨で湖が溢れて畔の村が水浸しになった時に修行中の翠明さんのお父さんと被害にあった村人の救済に奔走したのがみどりさんでその後二人は夫婦となり、翠明さんが生まれたそうだ。
お父さんはみどりさんが龍神であることに気づいていたそうだけど、あえて触れずにいたらしい。
翠明さんは物心ついた頃から龍神の力を受け継いでいることに気づいていたけれどその力をどうすれば人の役に立つよう使えるかずっと考えていたそうだ。
そして偶然街で出会った僕が龍神の血を引いていることに気付き、声を掛けたらしい。
「たけるさん、貴方と一緒にいる猫又の少女、彼女も貴方の力が生み出したものです、どうかご自身の力に自信を持ってください」
「だけど僕にはその力の使い所がまだわからないんです…」
「それはやがてわかること、今は心を磨いていくことです」
そう言って翠明さんはにっこり笑った。
近づいて小銭をお鉢に入れて一礼すると、お坊さんは深々と頭を下げ、お経を唱えたあとこう言った。
「貴方は龍神さまの血筋の方ですね、少しお話したいのですがよろしいでしょうか?」
「どうしてそれを?」
「わたくしもそうなのです」
「⁉︎」
「翠明」と名乗る僕と同年代くらいのお坊さんとしばらくそこで話をしていたけれど、改めてお寺にお邪魔することにしてその場は別れた。
帰って母さんにその話をすると
「そうね、日本全国に龍神伝説は存在するからまったくあり得ない話ではないわね…とにかく行ってらっしゃい」
そして学校が休みの日、僕たちは翠明さんから聞いた大きな湖のほとりにある寺を訪ねた。
境内に入ると本堂の隣に小さな鳥居とお社があった、神仏習合というかたちのお寺だ。
ここにたぶん翠明さんの言う龍神さまをお祀りしているのだろう。
しばらくして翠明さんが本堂から出てきた。
「たけるさん、遠いところありがとうございます、どうぞこちらへ」
翠明さんに講堂に案内されてそこで待つことになった。
「失礼いたします、お茶をお持ちしました」
「えっ⁉︎」
お茶を持ってきた巫女装束の女性を見て僕は思わず声を上げた。
みずきさんにそっくりなのだ…
「どうされました?」
「いえ、あまりにも似ているので…」
「どなたにかしら?」
「ひいおば…みずきさん、龍神さま…」
その女の人は混乱している僕を見てにっこりと笑った。
「ふふっ、そんなに似ているのね」
「わたくしはみどりと申します、このお社の祭神にして翠明の母でございます、よろしくお願いいたします」
みどりさんは三つ指をついてお辞儀した。
しばらくして翠明さんもやってきてこのお寺の成り立ちのお話をしてくれた。
お寺そのものはかなり昔からあって、もともと龍神さまもお祀りされていたのだけど、翠明さんのお祖父さんが住職だった頃、大雨で湖が溢れて畔の村が水浸しになった時に修行中の翠明さんのお父さんと被害にあった村人の救済に奔走したのがみどりさんでその後二人は夫婦となり、翠明さんが生まれたそうだ。
お父さんはみどりさんが龍神であることに気づいていたそうだけど、あえて触れずにいたらしい。
翠明さんは物心ついた頃から龍神の力を受け継いでいることに気づいていたけれどその力をどうすれば人の役に立つよう使えるかずっと考えていたそうだ。
そして偶然街で出会った僕が龍神の血を引いていることに気付き、声を掛けたらしい。
「たけるさん、貴方と一緒にいる猫又の少女、彼女も貴方の力が生み出したものです、どうかご自身の力に自信を持ってください」
「だけど僕にはその力の使い所がまだわからないんです…」
「それはやがてわかること、今は心を磨いていくことです」
そう言って翠明さんはにっこり笑った。
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