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きつねとたぬき<2>
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「なるほどね、たけるくんは龍神様の血を引いてるってわけね」
「そうなんだ、だからといってなにかができるわけじゃないけどね…」
ひとしきり僕の話を聞いてまおは納得いった表情でうなずいた。
「そこまで話を聞いた以上あたしのことも言っておかないとね」
そう言ってまおは自分の出自について話し始めた。
まおの一家は人間界に住み着いた化け狸で実は密かに化け狸同士の大きなコミュニティが存在するらしい、つまりそれだけ人間界に浸透しているということだ。
まおの話が終わったころ、かずま叔父さんがお客さんを連れて入ってきた。
「こんにちは、お邪魔しますよ」
そう言って入ってきたのはたまの一件でお世話になった土建屋の社長さんだった。
「えっ⁉︎どういうこと⁇」
まおがすっとんきょうな声を上げた。
「おや、まおちゃん」
「お世話になってます」
まおはあわてて頭を下げた。
「知り合い?」
「うん、あの人も仲間だよ…」
「?」
社長さんが笑いながら僕に向かって言った。
「たけるさんにお話してなかったね、あらためて説明しましょう」
そう言って社長が話し始めた。
社長さんは昔から人間界に浸透していた化け狸の始祖と言われている「芝右衛門」の血を引いていて、化け狸たちのコミュニティの長を務めているそうだ。
「そういうわけで私が十三代目の芝右衛門を名乗らせてもらっています、以後よろしくお願いします」
社長さんはそう言ってお辞儀した。
「ところでまおちゃんはどうしてここに?」
「僕の同級生なんですよ」
「そうですか、先生の甥っ子さんと同級生ならいろいろと安心だ」
そう言って社長はかずま叔父さんと出て行った。
「世間って広くて狭いものねぇ…こういうところでたけるくんとつながってたなんてね」
叔父さん達が出て行った後、まおはそうつぶやいた。
しばらくしてちぐささんが社務所へ戻ってきた。
「もう少ししたら子供たちと神楽舞の練習始めるけどまおちゃんも見にくる?」
「ぜひ見せてください!」
まおはそう言って身を乗り出した。
ちぐささんは地元の子供たちに神楽舞を教えていて、お祭りのときにはその子供たちも舞うのだ。
ちぐささんとまおは講堂へ行き、僕とにあは社務所でおじいちゃんとみずきさんから神道の講義を受けていた。
夕方そろそろ帰る時間になって講堂を見に行くと、まおとちぐささんが意気投合した様子で盛り上がっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「はーい、ちぐささんまたね」
「まおちゃん、またいつでもいらっしゃいね」
そう言って満面の笑みでちぐささんはまおに手を振った。
帰りの道中、まおが突然こう言い出した。
「決めた!あたしもこのお社で巫女になるっ!」
「えっ⁉︎」
「ちぐさ姉さんの下で働きたいの、たけるくん、今度宮司様とお話ししたいからまた連れてってね!」
「いいけど…」
「にあちゃんと一緒に修行するから、よろしくねっ!」
そしておじいちゃんからも許可をもらってまおもお社で巫女としての修行を始めることになった。
ちぐささんも「かわいい妹が増えたみたいね」と喜んでいる。
お社は人数が増えてにぎやかになっていったのだった。
「そうなんだ、だからといってなにかができるわけじゃないけどね…」
ひとしきり僕の話を聞いてまおは納得いった表情でうなずいた。
「そこまで話を聞いた以上あたしのことも言っておかないとね」
そう言ってまおは自分の出自について話し始めた。
まおの一家は人間界に住み着いた化け狸で実は密かに化け狸同士の大きなコミュニティが存在するらしい、つまりそれだけ人間界に浸透しているということだ。
まおの話が終わったころ、かずま叔父さんがお客さんを連れて入ってきた。
「こんにちは、お邪魔しますよ」
そう言って入ってきたのはたまの一件でお世話になった土建屋の社長さんだった。
「えっ⁉︎どういうこと⁇」
まおがすっとんきょうな声を上げた。
「おや、まおちゃん」
「お世話になってます」
まおはあわてて頭を下げた。
「知り合い?」
「うん、あの人も仲間だよ…」
「?」
社長さんが笑いながら僕に向かって言った。
「たけるさんにお話してなかったね、あらためて説明しましょう」
そう言って社長が話し始めた。
社長さんは昔から人間界に浸透していた化け狸の始祖と言われている「芝右衛門」の血を引いていて、化け狸たちのコミュニティの長を務めているそうだ。
「そういうわけで私が十三代目の芝右衛門を名乗らせてもらっています、以後よろしくお願いします」
社長さんはそう言ってお辞儀した。
「ところでまおちゃんはどうしてここに?」
「僕の同級生なんですよ」
「そうですか、先生の甥っ子さんと同級生ならいろいろと安心だ」
そう言って社長はかずま叔父さんと出て行った。
「世間って広くて狭いものねぇ…こういうところでたけるくんとつながってたなんてね」
叔父さん達が出て行った後、まおはそうつぶやいた。
しばらくしてちぐささんが社務所へ戻ってきた。
「もう少ししたら子供たちと神楽舞の練習始めるけどまおちゃんも見にくる?」
「ぜひ見せてください!」
まおはそう言って身を乗り出した。
ちぐささんは地元の子供たちに神楽舞を教えていて、お祭りのときにはその子供たちも舞うのだ。
ちぐささんとまおは講堂へ行き、僕とにあは社務所でおじいちゃんとみずきさんから神道の講義を受けていた。
夕方そろそろ帰る時間になって講堂を見に行くと、まおとちぐささんが意気投合した様子で盛り上がっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「はーい、ちぐささんまたね」
「まおちゃん、またいつでもいらっしゃいね」
そう言って満面の笑みでちぐささんはまおに手を振った。
帰りの道中、まおが突然こう言い出した。
「決めた!あたしもこのお社で巫女になるっ!」
「えっ⁉︎」
「ちぐさ姉さんの下で働きたいの、たけるくん、今度宮司様とお話ししたいからまた連れてってね!」
「いいけど…」
「にあちゃんと一緒に修行するから、よろしくねっ!」
そしておじいちゃんからも許可をもらってまおもお社で巫女としての修行を始めることになった。
ちぐささんも「かわいい妹が増えたみたいね」と喜んでいる。
お社は人数が増えてにぎやかになっていったのだった。
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