花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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ちぐさとかずま<1>

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海辺の小高い丘にある小さなお社、大津波で一度打ち棄てられたものを先代の宮司が再興させたもので海の神さまとして村人の信仰を集めていた。

当代の宮司は若い頃から利発で村でも人気者だった。

そして彼の元へゆきという娘が嫁いできた、村人の親類でお社の祭りを見にきていたのを彼が見初めたのだった。

ゆきは明るく快活な性格で村人にも受け入れられていった。

やがて彼らに子供が出来た、一人目は女の子、そして二人目は男の子だった。

二人目の男の子かずまが物心つく頃、ゆきは病いに倒れ、宮司はあらゆる手を尽くしたがその甲斐なくゆきは亡くなってしまった。

残された二人の子供たちはお社に奉仕している巫女たちの手で育てられた…

まだ小さかった巫女見習いのちぐさは特に姉弟と仲良く、いつも三人で一緒にいることが多かった。

ちぐさは孤児ということで宮司からは娘同然に育てられていた。

やがて成長し、姉のひとみが大学へ進み家を離れると弟のかずまはちぐさとさらに親密になっていった。

だが、かずまはちぐさが妖狐であることに気付いていた、そして母ゆきの死にあやかしが関わっているのではないかという疑念を持ち、ちぐさへの愛情との板挟みになっていたのだ。

そして高校を卒業したかずまは神職の修行のため家を離れるときが来た。

「かずまさん、帰ってくるのを楽しみにしています」
「ちぐさ…」
「うちのこと忘れんでくださいね」

そしてかずまは神職の修行を始めたが、いつしかあやかしに対する憎しみに囚われ拝み屋の一団に加わり、いつしか実家のお社から足が遠のき音信不通となってしまっていた。

あやかしやそれに類するものたちが引き起こす霊障を抑えるのが彼ら拝み屋の仕事だった。

かずまはその出自ゆえか拝み屋としての能力は高く、全国を渡り歩くようになっていた。

だが時々姉ひとみの家に立ち寄ることがあった。

ひとみと甥のたけると過ごす時だけが彼にとって唯一の安息と言えた…

そこまで言っておじいちゃんはため息をついた。

「ゆきが死んだのはあやかしとは無関係だ、それをかずまは聞き入れようとしない」

「だけどそれじゃちぐささんがかわいそうじゃない…」

「なんとか説き伏せる方法を探さねばならないのだよ」

考え込んでいるとちぐささんがかずま叔父さんの手を引いてやってきた。

「たけふみさん、かずまさんが戻ってきました」

「かずま…」

「父さん…」

おじいちゃんとかずま叔父さんは黙ったまま向かい合って座っていた…



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