駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

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ヘーゲルツ王立学園

閑話10

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とある黒曜騎士団員side

俺は今年黒曜騎士団に配属された騎士だ。
長い騎士団候補生時代を経てようやくなれた念願の騎士。最近では先輩がいなくても対処できることが増えてきて順風満帆だ。

そんなある日、夜勤をしていると救助要請が入り呼ばれた。そこまではいつも通りだった。しかしそこからだ。
呼ばれたのはたったの数人でとてもじゃないが魔獣を倒しに行くとは思えない人数。それに急に、秘密を守ることを誓う誓約書?的なものを書くことになりよく分からないまま副団長にこれから起こることを口外しないことを誓わされた。
解決した事件や討伐した魔獣についてある程度の守秘義務があるのは普通のことだ。だけど今回わざわざ呼び出された数人にのみ誓約書を書かさせたってことは…俺、もしかして副団長に目をかけられてる…⁉
よっしゃあああああっ!
そう喜んでいるのもつかの間、突然副団長室に靄が現れてびびった。何人かは慣れた様子で入っていったが俺や同じく初めて呼び出されたのだろう騎士は戸惑うばかりだ。しかし俺はついに一緒に呼び出された先輩に首根っこをつかまれてその靄の中に放り込まれた。

靄の先にはすでに先に着いた騎士らがいた。それと数メートル先で徐々に弱まっていっている巨大旋風。
?ここ、どこだよ。
すると先に着いていた副団長が言う。

「第二王子殿下直々の特別任務です。ここはヘーゲルツ王立学園付近のシャンデン平原です。ここで教師一名と生徒一名が行方不明となっています。そこの君たちはあの旋風を消し、中の魔獣の死骸処理を!では解散!」

それからは大変だ。
なんとか旋風に近づいてみるも剣ごと吹き飛ばされたり、風に巻き込まれかけたり。
結局全員で魔術をぶつけまくったら何とか消せた。こんなの何があったら発生するんだよ。
だがヒドラは解体しやすかった。確かにデカかったがすでに大きな切れ目があったり、旋風の中にいたからか完全に首がきちんと切れていたりしていて結構楽だった。
そうして翌朝の事情聴取。
教頭の部屋に集まり、あの巨大ヒドラの相手をした教師を待っていた。
あの傷をつけた奴だ、どんな屈強な男が来るのだろうと思っていた。だけど全く強そうじゃなかった。
来たのは細身でどこか儚げな雰囲気を持つ生物教師を名乗る男だった。

いや、そこまではいい。予想と現実が違うのはよくあることだ。
その人の供述内容が衝撃すぎてついつい突っ込んでしまう。やばっ先輩の前なのに。そう思った時にはもう遅く机の下で強烈な蹴りをされる。しかしその後も何度も突っ込んでしまいそのたびに睨まれ蹴られだ。
先輩、痛いっす…。

いや分かってるよ、事情聴取してんのに茶々いれる俺が悪いって。
だけどいくらなんでも強すぎじゃないっすかね、この人。
普通は熟練の騎士20人は必要のヒドラ(しかもキメラから変異したり火を吐いたりするやばそうなやつ)を殿下を守りながら相手をするっておかしいだろ。
つーかあの巨大旋風はなんだよ、おい。
人が出すもんじゃないだろ。

なんとか聴取が終わった後当然のごとく先輩にどやされた。そーいや、この人もめっちゃ強いんだよなぁ…。
あー強い人周りにいすぎて心折れそ。
 




レナードside

全く…。
目の前の光景にいつもうるさいカーチェスでさえ黙っている。
休日に第二王子殿下から連絡が入り、カーチェスとともにシヅル君の救出のために急ぎシャンデン平原へ向かった。
そこにあったのは激しい戦闘跡と巨大な旋風。それとおそらくヒドラだったと思われる死骸が旋風の隙間から見える。シヅル君だ。
我々の都合とアレフガートとの関係の拗れが重なり、半分強制的に教師になったシヅル君。
彼はそれこそ規格外の強さの持ち主だ。体力こそ騎士に比べ少ないが、剣術と魔術に関しては一流。
しかも戦闘に不向きといわれる風魔法であの精度と威力。
最初見たときは衝撃的だった。
まぁエリと出会った時ほどではありませんが。

それからカーチェスと軽く話し合い、ヒドラの処理とシヅル君の捜索を同時に短時間で終わらせることは不可能だと判断した。より、王太子の決定に合わせ情報が解禁される転移する魔術をほかの騎士にも誓約書を書かせ動員することにした。当たり前の事だが前々から目をつけていた実力派の騎士たちで、十分信用できる者たちを呼んだ。
ここでアレフガートにこの事態がばれてしまうと本末転倒だ。だから黒曜騎士団への外からの連絡をアレフガートには取らせないようにした。

救助は思ったよりも早く済んだ。学園からの教師の増援や平原で隠れられるところが限られていたことも関連しシヅル君はすぐに見つかった。ほかに生徒が一名行方不明だと聞いていたが発見して納得した。
第二王子殿下の弟君の第四王子殿下だったのだ。記憶の中にある殿下よりもさらに成長していて気を失っているシヅル君を守るように最初私たちを睨みつけたのだ。
それから急ぎ教師に殿下を受け渡し、シヅル君も怪我をしていたところを私が手当をし騎士をつけて教師とともに学園へ行かせた。
死骸の後処理も済み事情聴取は喚くカーチェスと他の騎士たちに譲ったため私は数人の騎士とともに帰還した。
さて、早く殿下に報告してエリと楽しい休日を過ごしますか…。、と思っていた。


しかし今私は困っている、えぇ非常に。
なぜなら鬼の顔をした竜が恐ろしい殺気とともに私の首の皮すれすれに剣を突き付けているからだ。
助けを呼ぼうにも今は真夜中ですぐにここに駆け付けられる騎士は少ないし第一来たとしても彼を止めることなど到底できやしない。
ただでさえ休日の真夜中出勤だったのにこの仕打ち。あまりの惨さに私の精神は限界を迎えそうになり思わず現実逃避を始める。あぁエリ、愛しの妻よ、君に会いたい…。
しかし目の前の男は私の逃避を許さない。

「言え。何故、お前からシヅルの血の匂いがする?」
「……アレフガート、剣をおさめてください。」

私がそういうと苛立ったように私を威嚇する。

「はぁ…。アレフガート、約束だけは守ってくださいね?それなら言います。」
「………。」

果たして事実を言って良いのか。しかしこれをそのまま伝えたら間違いなくこの男は狂う。番が害されたのだから当然だ。シヅル君の身が危ないだけじゃなく私たちやなんの関係のない周囲の人々の命も危ない。
しかしそれで隠し通したとしてもこの男は間違いなくシヅル君に会いに行くだろう。シヅル君に簡単には会いに行けないように色々と手は打ったが果たしてそれが効くのかどうか。

「シヅル君は無事です。お願いですから落ち着いてください。」

私がそう言うと瞬時に私の背後の窓から飛び出した。
あぁそうだった。この男は竜人の血を強く受け継いだ鬼竜の一家の竜。
最愛の番に関して私の言葉で事態を納得して怒りが収まるわけがないのだ。



――
73話(お知らせ等含め)にして閑話が10個…。
閑話の使い方を間違った気がしてなりませんがこのまま進めていきます。
更新が遅れ、申し訳ありませんでした。
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