駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

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ヘーゲルツ王立学園

実施訓練後1

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起きたら、ふわふわの白い布団の上だった。
目を開けてここがどこか一瞬で理解する。ここ学園だ。ってことは無事に帰ってこれたのか。
あーというか何やってんだよ。剣でどうにか戦って旋風をつくったところまではよかった。うん、頑張った僕。
だけど何度思い出しても殿下の前で変なこと話して寝落ちした記憶しかない。
そういえば最後殿下何言ってたんだろ。結局眠くて聞きそびれちゃったなぁ。
出来事を思い出し悶々としているとノック音が部屋に響いた。

「どうぞ」

誰だろうと思いながら入室を促す。入ってきたのはあの時腕が引きちぎれそうになっていたギオツク先生だった。

「ギオツク先生!ご無事でしたか⁉」

若干食い気味に安否を問いながら急いで身を起こそうとすると手で制される。パッと見大きな怪我はなさそうで安心する。

「えぇ。あの時は本当にありがとうございました。アサギリ先生のおかげで私は全く問題ありません。それよりも先生は自分の心配をしてくださいね。三日間も寝ていたのですから。」

あぁ、こちらから引率をお願いして緊急事態だというのに僕が飛び出してしまったことか?それとも殿下の前で寝てしまったことか?というか殿下にあんな口聞いて不敬罪で最悪打首とか…あり得る。まぁ、今さら考えても仕方ない。
自分が犯した失態だ。そのぐらいの責任を負う覚悟はしなきゃいけない。

「えーと、何か勘違いしていそうですね。私が言っているのは先生の怪我の話です。一応魔力はある程度回復していると思いますが、怪我や消耗した体力は相当のものでしょう。どうかしっかりと休養を取ってください。」
「えっと…ありがとうございます。」

人に心配されるってなんだか照れ臭いな…。

「それと魔獣の相手と殿下の護衛、ありがとうございました。あれは私が生徒の人数確認をあの場でしなかったからです。こちら、少しばかりですが礼の品です。」
「えっいえ!そんな、あっありがとうございます。そのっ美味しくいただきます…!」

果物の盛り合わせだ。色鮮やかできれいだ。
それからは他愛もない話が続いた。しかし衝撃的な内容を耳にする。

「我々が現場に到着した時、ちょうど黒曜騎士団も到着たのです。ですから魔獣の方は騎士達に任せ数人の騎士たちとともにアサギリ先生と殿下の捜索に行ったのです。いや~驚きましたよ。だって巨大な風渦が魔獣を倒してるし、あの殿下がアサギリ先生を膝枕で寝かせてたんですから。」
「えあの、もう一度言って頂いても…?ひ、膝枕と聞こえたのですが…」
「えぇ、膝枕です。あの他人に興味のない殿下が…ねぇ。僕も妻にしてあげてたなぁ………」

驚きすぎてギオツク先生が言っていることが耳に入らない。
ひ、ひざ、膝枕だなんてしてもらったことがない。しかも殿下に、生徒になんて…。
生徒相手にこうなるのもおかしいとは思うがこっちは最近人と接するのを始めたばかりの人間なのだ。許してほしい。

そうこうしていると再びノックが鳴り響く。

「次の来客のようですね。すみません、長らくお邪魔してしまって。」
「いえ!嬉しかったです!ありがとうございました。」

そして去り際に僕にボソッと「なるべく誰かと共に行動してください。確実に狙われます。」、と言った。
何事もなかったかのような表情で一礼をして部屋を出ていく。
最後の一言を深く考える間もなく次の人が入ってきた。
ナナル先生にドリトン先生、そして殿下だ。

「目が覚めたんだな~。つーか元気そうだね!」
「アホなんですかあなたは!これのどこが元気そうなんですか⁉」

いい感じのテンポで会話をしている二人の教師を横目に殿下が近寄ってくる。
さすがに身体を起こす。

「いい。寝てろ。」
「あっはい」

途端にもの凄い言葉と目の圧で寝かせられた。それでも言わなければいけないことを勢いをつけていう。

「殿下、生徒を守るべき立場でありながら森で、しかも夜の森で寝てしまい申し訳ありませんでした。」
「お前は…」

殿下は呆気にとられたような不機嫌そうな顔をして溜息をついた。

「アサギリ~、こいつはお前を心配してここに来たんだぜ?」
「ちょっまた殿下にそんな口調で…!」
「良い。ここで俺は生徒だ。」
「殿下もこう言ってるだろ~?全くこれだから貴族は…」

何故かドリトン先生がナナル先生を呆れた目で見る。
駄目だ、この二人合わせるとコントにしかならない。つい笑ってしまう。
というかナナル先生こんなに賑やかな人だったんだ。
殿下が無表情で僕に言う。

「本来なら勲章ものだ。安心しろ、誰もお前をとがめない。」
「…そうですか、ありがとうございます。」

その時ちょうど予鈴がなる。

「あー!ドリトン先生のせいで授業に遅刻するじゃないですか!」
「えー、ナナルせんせがそんなくだらない事ばっかで俺を叱ってるからだよ~」
「くだらないって…。えっでもこれ完全にあなたのせいですよ⁉」

二人は賑やかに言い合いをしながら僕に手を振ったりおじぎをして部屋から出ていく。

「殿下は…」
「俺の今日の授業は午後からだ。問題ない。それよりも…ジセルスだ。ジルと呼べ」

殿下が二人を見送ったドアから目を離さずに言う。

「へ⁉」
「俺がそう呼んで欲しい。」
「僕一応教師なのですが…?」
「…。ならば授業外の時だ。年も近いのだから、いいだろう?」

殿下の耳が赤く染まっている。そうだ。友達いたほうがいいとか、僕あの時言ったなぁ。
ってことは…友達を作ろうとしている…のか。
何かを言わなければと思ったが、最悪なことに僕のお腹が鳴った。それも結構盛大に。
それを聞くとゆっくりとこちらを笑いながらギオツク先生がもってきてくださった果物を手に取り言った。

「切ってやる。」
「なっ殿下にそんなことをさせる訳には…。」
「ジルだ。」
「うぐぅ……」
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