駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

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サヴァリッシュ王国

魔獣討伐2

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一日目の対戦では騎士達の連携した行動に圧倒された。
部隊長のスカルゴを中心に魔獣が現れたときの冷静且つ迅速な対応。場合に応じて散開し、僕ら候補生をリードしてくださる。いくら強くなったとしても僕に持久力や筋力が足りないのと同じで、強いだけでなく協力だってしないといけない。それができる騎士はさすがだ。

あっという間にノルマであったヒドラやハイルドウルフの群れの討伐がなされた。僕とリカーフもきちんと戦力として扱われていて嬉しかった。

夜は現地で調達した肉と携帯食。携帯食はなんだか固まった小麦のような味で、少し改良が必要な気もしたがこれもこれで美味しかった。寝床はもちろんほかの騎士たちとともに野宿。
全く修学旅行なんかではないけれど、なんだか修学旅行みたいで。元の世界で経験できなかった思い出が今、つくられているようだった。今度はアレフガートさんとも言ってみたいな。後はカーチェスも、レナードさんたちも、リカーフも…そんなことを考えていたらすぐに寝落ちをしてしまった。

その後も僕の属する隊は順風満風だった。

四日目の夜、思わぬ人の来訪があった。

「副団長!巡回、お疲れ様です!」
「あぁ。」

レ、レナードさん⁉

「やぁ、シヅル君。」
「レナードさん!」
「久しぶりですね。こちらの魔獣討伐は順調ですか?」
「はい。それでどうしてここに…?」
「あぁ。実はシヅル君の友人に用があったのです。」

リカーフのことか?なぜかわからないが言いたいことがあるのかもしれない。

「それは…、リカーフにとっていい話ですか?」
「…いい話。そうですね。えぇ。急にどうしたのですか?」

まずい。これじゃレナードさんがリカーフに何かすると疑っているみたいじゃないか。

「良い友人なんですね。彼は。」
「え?」
「いえ。なんだか少し感慨深くなりまして。最初に出会った時の事を覚えていますか?シヅル君は剣を突き付けられていましたね。それから話しても、謎が多くて、アレフガートの番だなんて不安でした。」
「不安?」
「シヅル君の事ではないですよ。アレフガートは竜人の血を濃く引いています。ですから普通の恋人同士以上に番のことをなんでも知りたがるんです。だから、シヅル君が受け止めきれなくなるのではないか、と。」

受け止めきれなくなる…?

「どうか、シヅル君。アレフガートのもとから逃げたいときはまず相談してください。
「…はい。」
「それでは、ご武運を」


―――

(リカーフside)

このまま無事に終わるかと思っていたけれど、まさかの人が僕に話しかけてきた。
レナード・ミナス・ダックルハント、黒曜騎士副団長であり、ダックルハント公爵家当主である方だ。そして、僕の家が決して頭があげられない方。

「ッ!タウンゼンド子爵家次男、リカーフ・ミナス・タウンゼンド、偉大なる虎の王にお目通りかないましたこと至極光栄にございます。」

我がタウンゼンド家はダックルハント公爵家から多大なる恩恵を得ている。だから、我が家にとっては王族に次ぐ優先すべき存在だ。

「そんなにかしこまらないでください。君には苦労を掛けているのですから。」
「いえっそのようなことは」
「君の父上は少し頭が固いところがありますし、属性など、柵は多いでしょう。」

「いいえ。全くもってそのようなことはありません。属性が火でなかったことは悔やんでおりましたが、今となっては土魔法も魅力的だと感じることができております。」
「そうですか。それは、良かった。」

「今回来たのはこれだけではありません。シヅル君の事です。謝罪にきておいてなんですが、あなたはシヅルがどこかに行ってしまわないようにしてほしいのです。」
「シヅルが…?」
「えぇ。君も感じているでしょう。危うさを。番は、我々のように獣の血を濃く引くものにとって番の存在は、我々獣の血をひくものにとって唯一無二。それに今、ヴァラムフィールドが消えてしまっては困るのです。」

そうだ。ヴァラムフィールド様は第二王子派の筆頭家だ。今この政権交代の大切な時期に後ろ盾が番に逃げられたという理由で後ろ盾を失うのは第二王子様としては避けたいだろう。
それに個人的にも第一王子様よりも第二王子様の方が良い。昔お会いことがあるが、第二王子様が王に相応しき風格を持ち合わせていることは明らかだった。

「それと、婚約の件。あなたがあの男、エリオスとかいう輩をどう思っているのかは分かりませんが圧力をかけておくことはできます。どうしましょうか。」
「なっ!そのような手間をかけ「いいのです。私が君に迷惑を掛けているのですから。」」

エリオス・ディスマンドは、意味の分からない男だ。家にとっては良縁であるに違いない。
彼の父親、赤燐騎士団長様は3年もの間今の妻を追いかけたという真偽はわからないが衝撃的な噂がある。きっと優しくしてもらえるのだろう。
なにより僕を見つめるあの瞳。卑劣さを持ち合わせた僕にはない、純粋でまっすぐな瞳。
だけど、もし、裏切られたら?
上辺しか見ていなかったら?

「いえ。大丈夫です。お声かけしていただき、ありがとうございました。」

それでも、それでもその時僕はなんだかあの瞳を少し信じてみたい、と思ってしまったんだ。
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