駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

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サヴァリッシュ王国

閑話4 黒曜騎士団長アレフガートside

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俺はあの日、『運命』に会った。


公爵家嫡男で竜人の血を引き、人の善悪の感情が分かる能力がある俺は、小さなころから色々な大人に接してきたおかげで表情があまり動かず、友人といえる者もわずかである。最近では次期公爵夫人の座を狙う女どもも俺が誰も相手にしないとわかり、遠巻きにしていて楽だった。
黒曜騎士団長に就任してからは今まで行ったことのなかった番探しを始めた。公爵家嫡男である俺にとって番とは家を継ぐときに必要な存在であるからだ。まあ見つからず家を継げずとも優秀な弟がいるからいいのだが。
しかし、国の騎士団長であるため縛りが強く、愛国心はあるものの番探しに専念するために騎士団長をやめようかとまで考えていた。

そんなころ、弟が運命を見つけた。それがアンジェラ・ディ・レイシック・サヴァラヒール殿下、サヴァリッシュ王国第3王女(末の王女)である。我が国の王女は一番上の王女は他国へ嫁いでおり、真ん中の王女は回復薬の研究に精をだしている。末の王女は頭が回る方だが、エディアスのことに関しては頭が弱くなるようでここ最近すれ違っていたようだ。
そんな中、末の王女とエディが婚約しそうな雰囲気だということを知った。弟のことだし、俺は手を出さないでおくことにした。そうやって放っておいたことがいけなかったのか、エディが『幻惑の森』で行方不明になってしまった。幸い敵はすぐに片付いたが、無事でいるかどうか。すぐに殿下が俺や騎士を引き連れ、捜索を始めた。まあそのおかげでシヅルと会えたわけだが。

エディ本人には竜人の血が俺より薄いのか運命などを感じる能力はあまりないが、行動の節々に殿下に対する狂気じみたものがある気がする。後から考えると、失踪したのもわざとなんじゃないかと思ってしまった。そのぐらいエディは変わった。


俺はエディのように番に執着する人間にはならないだろうと思っていた。シヅルを見つけるまでは。
あんな少し狂気じみた感情を抱くなんてなく、番なんて恋人のようなものだろうと。


しかし違った。


最初に遠目からみた小さな背中、出会った時の少し怯えた顔、サイクロプスを倒した時の涼しげな顔、すべてが愛おしい。

それだけでない。あんなに可愛いのにひかえめで自信なさげなところや、あの愛くるしい顔を前髪とローブのフードで隠しているところがいい。
俺が見られないのは仕方ないが周りに見られないし、良しとしている。ふとした瞬間に見えるあの黒曜石のような神秘的な目もくるくるでふわふわな黒髪も、華奢だが努力したことが垣間見えるからだも、全部想像するだけで正直言って、勃つ。


それに嫉妬も覚えた。
例えば、エディを発見してから少し経った後少し考えたのだ。

エディがシヅルに助けてもらったということは俺よりさきにシヅルにであったということか?と。


くそっ、弟にまで嫉妬してしまう。
誰にも姿を見せたくないし、声を聞かせたくない、ましてや触らせるなんてとんでもない。シヅルが誰かと話しているだけで反吐が出そうで、自分のもとへ、誰にも知られない場所へ、隠し囲いたい。

今まで望んだものは全部手に入れることができたが、これほど「欲しい」、「手に入れたい」、「大事にしたい」という欲が浮かんできたのは初めてだった。



誰にも目を向けずに、俺だけを見てほしい。
無理なことだとはわかっていても、そう思ってしまう。


夜ひとりでシヅルを想いながら自分を慰めるのは正直言ってつらいが、それもシヅルが大人になるまでの我慢、またはお楽しみだと自分に言い聞かせ、気を紛らわす。

それでも、欲は止まらない。少し自分に笑ってくれただけで心が舞い上がり、その夜はその笑顔を想像しながら自慰にひたる。
気持ち悪いと思うかもしれないが、止められないのだ。何度ももう襲ってしまえと思った。しかし、そのたびに「駄目だ、シヅルはまだ幼い。」と思いとどまる。

だからなるべく話しかけないように、見守るだけにして周りへの牽制だけして、外堀を埋め、逃げられないように囲い込む。



俺のかわいいかわいいシヅル、どうか早く大人になって俺に心も体も開いてくれ。

それまでひたすら守り続けるから。






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