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サヴァリッシュ王国
エリ様
しおりを挟むそれからというもの毎日ひたすら暗記して、勉強して、食事して寝るの繰り返しだった。正直言って、知識が増えるのは楽しい。学生として生活していた時も歴史・地理は得意な科目だった。数学も得意科目だったが、国語が駄目すぎたので最早プラマイゼロ状態だったのは苦い記憶だ。
今日は少しワクワクしている、なぜならレナードさんが屋敷にくるらしいからだ。楽しみだ。
「シヅル様、レナード様達がいらっしゃいました。」
「わかりました。すぐ行きます。」
僕が玄関に行くと、アレフガートさん達がいた。レナードさんは隣に可愛らしい雰囲気をまとった女性を連れている。
「お久しぶりです。シヅル君。こちら僕の妻のエリカです。エリ、挨拶を」
「お初にお目にかかります。わたくしエリカ・シス・ダックルハントと申します。」
「僕はシヅルと申します。アレフガートさんにはお世話になっています。」
声までかわいい。くるくるとしたロングの金髪の髪の毛に同じ色のふさふさの睫毛で覆われたエメラルドの瞳。整った顔と体はまるで彫刻のようで身にまとっているドレスも違和感がなく美しさを引きだたせている。英国風のはっうきりとした顔立ちで彼女と同じ色の金髪と煌めく赤の目をもつレナードさんと一緒に立っていると、まるで一枚の絵のようだ。
「あらあら、あなたがあのシヅル様!仲良くしてくださいね?」
「はい。あのっ僕は平民なので様付けと敬語は不要です」
「平民だろうがなんだろうが関係ないわ。わたくしのことはエリって呼んでちょうだい。それにあなたはムグッ」
「それ以上は駄目です。約束しましたよね、エリ?ほら見てください。今にも爆発しそうな方がそこにいます」
うわっ。かつてないほど嫌そうな怒っている表情のアレフガートさんだ。この短時間の間に何があったんだ?するとエリ様がバっと握っていた僕の手を離した。えっちょっとショック。
「あまり近づくな。手紙で忠告しただろ」
「はいはい。レナードと話があるのでしょう。わたくし達は違う場所にいますわ」
「はぁ~。シヅル、広間にいろ。」
「はい」
エリ様とは話がとても弾んだ。中でも僕のことについて話すと嬉しそうにする。
「ねぇ、シヅル様はどうしてここに?幻惑の森から来られたときのことを聞かせてくださいます?」
「えぇ、はい」
「いえ、その無理に聞いてるわけではないの。話したくないのなら大丈夫よ。」
「そんなことありません。」
僕はそれから一人暮らしをしていた時のこと、それとエディとあったときから今までの経緯を話した。特に、サイクロプスを倒したときのことと騎士団の食事には興味津々な様子で、詳しく聞いてきた。レナードさんにはあまり外には出してもらえないそうで、僕が外でしていたことを伝えると途端にワクワクとした顔で耳を傾ける。するとレナードさんが過保護な話が始まった。そりゃあこんなに可愛らしい人なのだから過保護にもなるだろう。そういうと急に獣人の話になった。
「あのね、レナードが今当主を務めているダックルハント家は公爵家。それにレナードは虎獣人なの。獣人の番への執着はすさまじいわ。人間なんて比じゃないほどよ。ちなみに団長様あっアレフガート様ね、は竜人の血が流れているの。そこは知っているかしら?」
「いいえ、知りませんでした。」
「そう。ということは全く話していないのね。でもね、今がそうなだけ。少し不安になることがあっても団長様はあなたに決して危害を与えないわ。とにかくこれだけは信じてちょうだい」
「えぇ、なんだかわかります。彼の側にいると心が安らぐんです。」
「それは大事なことよ。何かあったらわたくしに相談なさい。必ず力になるわ」
「はい」
「もう時間かしら。そろそろ解散ね」
「え?」
「エリ!!帰ろう!シヅル君もまたね」
「またね、シヅル様」
「はい!」
そうして彼らは怒涛の勢いで帰っていった。それにしても、どうしてエリ様はレナードさんが来たってわかったんだろう。全く足音がしなかったのに。不思議だ。
「おい、疲れただろう。早く風呂に入って寝ろ」
アレフガートさんだ。レナードさんとのお話は大丈夫だったのだろうか。なんだか疲れたように見える。気のせいかな。
「お疲れですか?」
「…そんなことはない。早く休め」
「はい…」
やっぱり彼は疲れてたっぽい。一瞬僕のほうをちらりと見てからそういったから。僕、そんな疲れたような顔をしていたのかな。今日を含め最近は楽しいことだらけなのに。
言われたようにお風呂に入り、ベッドの中で考える。
獣人、番。公爵邸にきてから本で読んだ気がする。番とは恋人とかとは別のいわば運命の相手らしい。
今日のレナードさんの顔がエリさんに対してデロデロだったことを思い出す。短い時間しか共にしていないがかつてないほどのしまり具合のなさ。あれが番に対する態度なのか、全力で愛してる感じがする。
そういえば竜人ってことは彼にも番がいるのだろう。あの彼が今日のレナードさんのようになるなんて想像がつかない。
どんな人なんだろうか。彼の番は。
—
明日月曜日、2話更新します。
予定が遅れて誠に申し訳ございません。🙇♂️
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