駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

文字の大きさ
上 下
16 / 85
サヴァリッシュ王国

エリ様

しおりを挟む


それからというもの毎日ひたすら暗記して、勉強して、食事して寝るの繰り返しだった。正直言って、知識が増えるのは楽しい。学生として生活していた時も歴史・地理は得意な科目だった。数学も得意科目だったが、国語が駄目すぎたので最早プラマイゼロ状態だったのは苦い記憶だ。

今日は少しワクワクしている、なぜならレナードさんが屋敷にくるらしいからだ。楽しみだ。

「シヅル様、レナード様達がいらっしゃいました。」
「わかりました。すぐ行きます。」

僕が玄関に行くと、アレフガートさん達がいた。レナードさんは隣に可愛らしい雰囲気をまとった女性を連れている。

「お久しぶりです。シヅル君。こちら僕の妻のエリカです。エリ、挨拶を」
「お初にお目にかかります。わたくしエリカ・シス・ダックルハントと申します。」
「僕はシヅルと申します。アレフガートさんにはお世話になっています。」

声までかわいい。くるくるとしたロングの金髪の髪の毛に同じ色のふさふさの睫毛で覆われたエメラルドの瞳。整った顔と体はまるで彫刻のようで身にまとっているドレスも違和感がなく美しさを引きだたせている。英国風のはっうきりとした顔立ちで彼女と同じ色の金髪と煌めく赤の目をもつレナードさんと一緒に立っていると、まるで一枚の絵のようだ。

「あらあら、あなたがあのシヅル様!仲良くしてくださいね?」
「はい。あのっ僕は平民なので様付けと敬語は不要です」
「平民だろうがなんだろうが関係ないわ。わたくしのことはエリって呼んでちょうだい。それにあなたはムグッ」
「それ以上は駄目です。約束しましたよね、エリ?ほら見てください。今にも爆発しそうな方がそこにいます」

うわっ。かつてないほど嫌そうな怒っている表情のアレフガートさんだ。この短時間の間に何があったんだ?するとエリ様がバっと握っていた僕の手を離した。えっちょっとショック。

「あまり近づくな。手紙で忠告しただろ」
「はいはい。レナードと話があるのでしょう。わたくし達は違う場所にいますわ」
「はぁ~。シヅル、広間にいろ。」
「はい」

エリ様とは話がとても弾んだ。中でも僕のことについて話すと嬉しそうにする。

「ねぇ、シヅル様はどうしてここに?幻惑の森から来られたときのことを聞かせてくださいます?」
「えぇ、はい」
「いえ、その無理に聞いてるわけではないの。話したくないのなら大丈夫よ。」
「そんなことありません。」

僕はそれから一人暮らしをしていた時のこと、それとエディとあったときから今までの経緯を話した。特に、サイクロプスを倒したときのことと騎士団の食事には興味津々な様子で、詳しく聞いてきた。レナードさんにはあまり外には出してもらえないそうで、僕が外でしていたことを伝えると途端にワクワクとした顔で耳を傾ける。するとレナードさんが過保護な話が始まった。そりゃあこんなに可愛らしい人なのだから過保護にもなるだろう。そういうと急に獣人の話になった。

「あのね、レナードが今当主を務めているダックルハント家は公爵家。それにレナードは虎獣人なの。獣人の番への執着はすさまじいわ。人間なんて比じゃないほどよ。ちなみに団長様あっアレフガート様ね、は竜人の血が流れているの。そこは知っているかしら?」
「いいえ、知りませんでした。」
「そう。ということは全く話していないのね。でもね、今がそうなだけ。少し不安になることがあっても団長様はあなたに決して危害を与えないわ。とにかくこれだけは信じてちょうだい」
「えぇ、なんだかわかります。彼の側にいると心が安らぐんです。」
「それは大事なことよ。何かあったらわたくしに相談なさい。必ず力になるわ」
「はい」
「もう時間かしら。そろそろ解散ね」
「え?」
「エリ!!帰ろう!シヅル君もまたね」
「またね、シヅル様」
「はい!」

そうして彼らは怒涛の勢いで帰っていった。それにしても、どうしてエリ様はレナードさんが来たってわかったんだろう。全く足音がしなかったのに。不思議だ。

「おい、疲れただろう。早く風呂に入って寝ろ」

アレフガートさんだ。レナードさんとのお話は大丈夫だったのだろうか。なんだか疲れたように見える。気のせいかな。

「お疲れですか?」
「…そんなことはない。早く休め」
「はい…」

やっぱり彼は疲れてたっぽい。一瞬僕のほうをちらりと見てからそういったから。僕、そんな疲れたような顔をしていたのかな。今日を含め最近は楽しいことだらけなのに。



言われたようにお風呂に入り、ベッドの中で考える。
獣人、番。公爵邸にきてから本で読んだ気がする。番とは恋人とかとは別のいわば運命の相手らしい。
今日のレナードさんの顔がエリさんに対してデロデロだったことを思い出す。短い時間しか共にしていないがかつてないほどのしまり具合のなさ。あれが番に対する態度なのか、全力で愛してる感じがする。
そういえば竜人ってことは彼にも番がいるのだろう。あの彼が今日のレナードさんのようになるなんて想像がつかない。
どんな人なんだろうか。彼の番は。






明日月曜日、2話更新します。
予定が遅れて誠に申し訳ございません。🙇‍♂️



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...