駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

文字の大きさ
上 下
6 / 85
出会い

エディの誤解

しおりを挟む
そして僕は今現在四方八方から剣を突き付けられている。エディと似たような軍服を着た人たちとそのすぐそばにどこかのお嬢様っぽい人がいる。
怖すぎて顔を上げられない。
途中までは順調に気絶させられていたはず。しかし、いくつかの天幕のそばにエディについて話している人たちがいて気になって聞いたのが運のつきだった。慣れない風魔法の探知の隙をつかれ、つかまりあっという間に引き出されてしまった。何やってんの僕。

「おい、貴様何者だ。ここで何をしている。」

お嬢様?っぽい人のそばにいる騎士が言う。何ってどう答えればいいんだろ。この人たちエディの味方っぽい会話をしていたけど、僕を騙すためだったら?あー僕ここで殺されちゃうのかな。せっかく神様が助けてくれたのに。

「聞いていますの?あなた。」
「えっう、はい」
「ならば答えろ、なぜここにいる?」
「えっと…」

抜け出せる?だけど少なくとも気絶させる方法は大人数過ぎてここでは使えない。

「もういいわ。縛っておきなさい。」
「はっ」

そうして、僕は縛られ天幕の一つに放り込まれた。
ここからどうやって抜け出そう。エディを無事に逃がそうと思っていたのに自分が捕まっちゃ元も子もない。とりあえず縄をほどこう。剣は回収されたが足の付け根に隠しておいたナイフや魔法は使える。これで…よしっと。幸い天幕の周辺にはあまり人がいない。これならいける。
すばやく天幕から抜け出し、自分の剣を回収し自分の気配を風魔法でつつみこむようにした。僕に気づいて剣をぬいた騎士を風魔法でかわし、剣を受け流す。大丈夫、数人しかこちらにはいない。あっちのほうにお嬢様っぽい人がいるからかな。しかし、思ったより数が早く、剣を抜かずに戦うのには限界がきそうだ。

「くっ!なんだ、これは!」
「剣が…。」

周りにいた精霊たちが僕の味方をするように、騎士の動きを鈍くしたり剣を奪おうとし、眠らせていっている。もしかして僕の味方をしてくれたのか。

『そうだよ~。精霊はシヅルのことが大好きだからね。』
『シリル様!来てくださってんですか。すみません、ありがとうございます。あのっエディはどこに?』
『そこにいるよ…。もう、アイツより自分のことをもっと心配しなよね。』

そこって……、どういうこと?シリル様が指した方向へ走る。そこではお嬢様っぽい人の前で跪いているエディがいる。そして何人かは僕にもうすでに気づいている。

「シヅル!無事か⁉」
「貴様!どうやって抜け出した!」

どうしよう。エディを連れ出すぐらいなら簡単だが、下手に攻撃すると危険だし剣を抜かなければならない。ここは抵抗しない方がいい。エディの近くでゆっくり膝をつきそばに剣を置く。ついでに両手も挙げ、敵意がないことを示す。

『大丈夫だよ。ソイツに対する悪意はそんなに感じられない。どちらかというと、シヅルに対する警戒の方が大きい。』
『ってことは、エディの敵ではないってこと…?』
『そんなもんわかんないけど……。』

「ノルク様は、なぜそんな怪しいやつを庇いますの⁉」

怪しいやつって…。確かに今の僕はローブに分厚い眼鏡、そして鼻までも覆い隠すような前髪、これは怪しいことこの上ない恰好だよなぁ。

「お言葉ですがアンジェラ様、そんなものとは言わないでください。シヅルはオレの命の恩人です。」
「命の…恩人?」
「はい。捨てられ瀕死のオレを助けてくれました。」
「ツ!」

それを聞いた彼女は怒りに頬を染めた。というか捨てられたってどういうことだ?
その時だった。馬のいななきとともに目の前に人が降り立った。

「殿下、ここからは俺に。」
「ノルク卿…。分かりましたわ。皆剣を下ろしなさい。」

誰だろう。ノルクってことはエディの関係者?エディとその人は知り合いのようだった。

「アレフ兄さん…」
「エディ、久しぶりだな。お前を害した奴らは殿下が罰を下してくださった。しっかり殿下の命を聞き、自分本位に考えるな。騎士としてふさわしい行動を忘れるな。」
「えっはい!」

それだけ言うと、彼は次々と騎士たちへ指示を出していき、エディは何やら殿下?と話始めた。その話を聞く限りなんとなくわかってきた。要はエディと殿下?が前世の少女漫画で出てきそうなすれ違いをしてしまったのだろう。

「それで…こいつは?」
「エディアス様によりますと、命の恩人だそうです。」
「そうか。顔を上げてもらっていいだろうか。ッ!」

おそるおそる顔をあげてみると、僕は思わず目を見開いた。
彼はとても綺麗な人だった。黒髪短髪にエメラルドの鋭い眼つきで均整の取れた美しい顔立ち、そして大きくしなやかな体。騎士団の制服だろうか、よく似合っている。
しかし、彼も思わずといった声が漏れ出たようだ。やっぱり顔も全然見えないって怪しすぎたのだろう。しかし素顔をさらして罵倒されるよりましだろうと自分に思い込ませる。

「名前は…?」
「し、シヅルです。」
「事情を聴いてもいいか?」
「あっうっ、」

どうしよううまく話せない。自分が本当に話下手なのが嫌になる。こんなところで何してんだろ。エディを逃がすって言って結局見つかるし、今もさっきもまともな受け答えができない自分に苛立つ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

処理中です...