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第0話 罪状は【 】
しおりを挟む人間は『罪』という概念を作り出した。
道徳や倫理という人間らしく生きる為の指標を作ろうとした結果、必然的に『悪』と『正義』というものが生まれ、けして相容れない関係として別れた。
人間が罪と定めたもの。
傲慢、嫉妬、怠惰、強欲、色欲、暴食、憤怒、虚飾、憂鬱。
しかし、それらはどれを取っても固有の罪ではない。
誰しも自分だけの罪を持っている。
人間が決めた罪は9つ。
そしてもう一つ僕の罪を足して10の罪を完成させるのであれば最後の罪は何になるのだろう?
人間が定めた罪、それを一つたりとも犯さない生き物など存在するのだろうか。
自分が何かに優れていると傲り高ぶって他者を見下し、
反面、自分が劣っていると他者を羨み、
しかし何の努力もせず、より良くすることを放棄し安定を望み、
心の内ではあれもこれも欲しいと欲望が渦巻き、
子を成さず、ただひたすらに快楽を求め手段を選ばず、
生きるに必要以上に他の命を搾取し、
自分本位に怒りをぶつけ、壊し、脅し、暴力を振るい、
自分を少しでもよく見せようと嘘を口走り、
そんな世界を憂いて無気力を掲げ、自ら命を放棄する。
それが、人間の姿だ。
なんて醜い世界なのだろう。怨嗟が怨嗟を呼び、血で血を洗い、嘘を嘘で塗り固める。
略奪し、貶め、凌辱し、そしていとも簡単に、儚く散っていく。
そんな世界に僕は絶望していた。
深く、とても深く悲嘆した。
いつかこの地獄が終わるまで、それがいつになるのか。それすら解らないけれど。
でも僕は、一筋の光を見つけた。
それは尊く、美しく、激情に駆られ、狂おしいまでに愛おしい。
その光がいかに罪になろうとも、僕はその光を手放したりしない。
僕にとって最後の光。
その罪状は――――……
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