黒の転生騎士

sierra

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第二章

私は愛されない   

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「クリスティアナ様・・・」
 イフリートが驚いた顔をしているが、挫けずに続ける。
「今日・・・グレゴリーに襲われた時後悔したの。この気持ちを伝えてなかったって。

「クリスティアナ様、お放し下さい。」
「嫌よ!今じゃなきゃもう二度と言えないもの!薔薇の花を摘んできてくれてとても嬉しかった。襲われて助けに来てくれた時も。それに、私の騎士になって欲しかった!」

 イフリートは無理やり腕を外そうとした。でもクリスティアナの白くて細い腕は、あとがつきそうで、壊れてしまいそうで、強く掴む事ができない。

「ずっと・・・貴方だけを見てきたの。」

 腕を回しているために二人の顔が近い。一瞬見つめあった後、ごくりとイフリートの喉が鳴った。

「――っ!!お止め下さい!!」

 怒気を孕んだ大きい声に、思わず腕を放して身を縮み込ませる。驚きと拒絶された悲しみに目に涙が滲んできた。

「クリスティアナ様、大きな声を出し・・・」
 遮るようにクリスティアナが話し始めた。

「ご、ごめんなさい・・・馬鹿だったわ、私なんか誰にも愛されないのに、気持ちを押し付けようとして・・・」
「クリスティアナ様・・・?」
「私は努力しないといけないの・・・ううん、違う、いくら努力しても駄目なの・・・皆サファイアとリリアーナがいいの。私なんか、誰も・・・誰も、愛してくれないもの。」
 ゆっくりと・・・イフリートを見上げる。
「貴方もそうなのね?イフリート。」
 クリスティアナが微笑んだ。その両方の瞳からは涙が零れ出ていて、とても、とても悲しく見えた。

「――!?」
 いきなり強く抱きしめられて唇を奪われた。呆然として固まっていると
「クリスティアナ様、口を――」
「――え?」
 声を上げた途端、イフリートの舌が滑り込んできた。上顎を舐められくすぐったい様な性的な感触に身体が震える。下を絡めて吸い上げられる。
「・・・あっ」
 上げる声もイフリートの口の中に消えていく。彼の舌はルドルフに叩かれて傷ついた箇所をみつけた。舌先で軽く触れ、クリスティアナが痛がらないのを見て取ると、ゆっくりとそこを中心に嬲り始めた。
 「ふぁ・・・」
 思わず上げてしまった自分の声に驚く。それは淫靡で甘えるような響きがあり思わず目を開けると、半眼で自分を見ているイフリートと目が合った。・・・全て見られていたの?恥かしくて顔を離そうとしたところ、それを察したイフリートに後頭部を押さえ込まれてしまった。
 益々濃厚になっていくキス。もう身体に力が入らない。抱きしめるイフリートの腕がなければとっくに崩れ落ちていただろう。どうにかなってしまいそうだ。

 でも、段々息が・・・最初は息継ぎさせてくれたのに、今は全然離してくれない。苦しくなって、それを分かってもらおうとイフリートの胸を叩く。気が遠くなり危険を感じて、もっと強く叩いた。
 
 やっと気付いたイフリートが我に返り身体を離した。
顔を紅くしてしどけなく息をしながら、ベッドに崩れ落ちるクリスティアナを呆然と見つめる。
 
 イフリートは後悔に歪んだ顔で声を絞り出した。
「クリスティアナ様、申し訳ありません・・・」

 クリスティアナの身体に掛布をかけると
「すぐに誰か寄こします。」
そう言って出て行ってしまった。
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