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12 気づいていらっしゃったんですね

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「あの……、」

「何だいエリカ嬢?」

「ティモシーはどうなるのでしょう?」

「彼は貴族社会から追放だ。女癖の悪い男達への良い見せしめになるだろう」

 エリカは目を丸くした。

 貴族社会から追放――それは実質的な廃嫡を意味する。

 ティモシーは侯爵家の跡取りであり、彼が継がなければ、跡目をめぐってのお家騒動が始まるはずだ。

 ティモシーは確かにそうされても仕方のない男であるが、男性優位で浮気も容認されるこの世界で、そんな重い罰が下されるとは思ってもみなかった。

 考えてみたらヴァイオレットへの罰も重い。

 ティモシーとの婚約は破談になるだろうし、新しい結婚相手はもう見つからないだろう。

 いくら高位貴族の令嬢といえでも、社交界に出入りできない女性を、誰も娶りたいとは思わないからだ。

 ミランダがエリカを肘で小突きながら囁く。

「お礼を言わないと」

「あ、そうね……!」

 二人はスカートを摘み、揃って頭を下げた。

「ダニエル王子殿下。危ないところをお救い下さり、ありがとうございました」

「ん……。何事も無くて良かった」

 なぜか王子は笑いを堪えている。

「「殿下?」」

「申し訳ない。あまりに息が合っていて……。君らは本当に仲がいいんだね。ところで、」 

 ダニエルがエリカに顔を向けた。

「君はさっき、扇で打たれそうになる前から歯を食いしばっていたね」

「あ、はい。気づいていらっしゃったんですね」 

「随分とヴァイオレットを煽ってもいたし、わざと打たれようとしたんじゃないか?」

「はい、おっしゃる通りです」

「なぜだ?」

「もうミランダに手を出させたくなかったからです」

 自分の名前が出て、ミランダがきょとんとした。
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