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第二章

39 初夜 3 ☆

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グリフィスはクリスの滑らかな肌に夢中になり、身体中にくちづけながら舌を這わせていく。
先ほどまで愛撫を受け続けていた彼女には、また彼から快楽を与えられる事は拷問にも等しい。身体を震わせ、欲望に掠れた声で哀願をする。

「グリフィス、お願い――」
「うん……?」

クリスの身体が熱を持って自分を待ち焦がれているのが伝わってきた。

「もう、おかしくなっちゃう……!」
彼の首に腕を回し、全身をしならせて身体をぴったりと合わせてくる。

「そんな事をしたら、すぐに抱いてしまうよ。君の為にゆっくりとしたいのに」
「もう準備ができたから大丈夫!」

真剣な眼差しで訴えてくるクリスに、グリフィスは堪えきれずに笑いをこぼした。
「君は……本当に……」
「あんなに、だ、抱きたがっていたのに、何で抱いてくれないの?」
「君が俺を欲しがっているところを見ていたいからかな?」

彼が片眉を上げて、クリスが不満顔で口を尖らせた。
「そんなの悪趣味だわ」
「それだけじゃない。君は俺のものだと骨の髄まで分からせたいのもある。俺だけのものだと――」

クリスがきょとんとする。
「さっきも同じような事を言っていたけど、私は貴方だけのものよ? なぜ今更そんな事を言うの?」

グリフィスが溜息を吐いた。
「君は俺の自制心をいとも簡単に突き崩してくれるね」

真っ正直なクリスが`自制心 ‘ のくだりが分からずに首を傾げながら、取り敢えず自分の考えを言う。
「貴方も私だけのものよ」
「俺のお姫様。もう三年も前から俺は君だけのものだ」

クリスが嬉しそうに、グリフィスの頬に手を伸ばすと、彼がその手の平にそっとくちづけた。 

「準備ができているか調べてみよう」
 グリフィスが彼女の足の間に手を伸ばし、クリスは息を呑む。咄嗟に足を閉じたが彼の手はもう秘所に触れていた。

「本当だ。もう大丈夫のようだ」
クリスの額にくちづけながら囁くと、彼女が恥かしさで頬を染め上げた。全てを脱ぎ捨てクリスの足を開き、少しずつに分け入っていく。
自分の欲望で急いてしまいそうになるが、辛抱強くゆっくりと押し進めると、ある抵抗に突き当たった。
尚も鋼の自制心で慎重に事を進めようとするが、クリスにしがみつかれてしまう。

「お願い、早く……もう、待てない……!」

この誘惑にはとても勝てない――

震える彼女の腰をしっかりと掴み、一気に奥へと押し入った。痛みでクリスが息を呑んで眉根を寄せる。

「大丈夫か?」
涙を流してグリフィスにしがみつきながら、彼女がこくりと頷いた。
「悪いが動く」
またクリスがこくりと頷く。クリスに負担が掛からないように最初はゆっくりと動いていたが、ある箇所を掠めた時に彼女が悦びの声を上げ、彼の自制心はあっけなく崩れ落ちた――



クリスの身体の上に覆い被さり、荒い息を吐きながらグリフィスがすまなそうに謝る。
「ごめん。優しくしたかったのに」
「ううん、大丈夫。グリフィスは優しかったし……私も最後は…きも、気持ちが良かっ……」

恥かしくてつっかえながらに口にするクリスの声は、耳をすまさないと分からない程小さくはあったが、彼の耳にはしっかりと届いた。

「クリス――」

グリフィスにきつく抱き締められ、広い背中に腕を回すクリス。鍛えられた身体の下に横たわるたおやかな姿態、月明かりの中で大変絵になる二人ではあったが……

「ん……? グリフィス……ひょっとしてこれ……」
「クリス、約束通り朝まで」

`これ以上愛おしいものはない ‘ と甘い瞳で見つめられ、顔に掛かった髪の毛を後ろに優しく撫で付けられ、クリスの中にいたままだったグリフィスがまた大きくなりつつある。

「約束なんてしていない~~~!!」
暴れる彼女はいとも簡単に押さえ込まれ、自制心が崩壊したグリフィスに朝までといわず昼まで離してもらえなかった。


こちらは執務室――

「アーネスト、クリスの姿を見ないと思わないか?」
「新婚ですからな。一週間は部屋に籠もると仰っていたではありませんか。今日はまだ五日目ですぞ」
「でも、グリフィスの姿は見るよな? 実際昨日も午後からここに顔を出したし」

アーネストが書類を繰る手を止めて顔を上げた。
「お前も心配だから、まだアクエリオスに残っているんだろう? 実はハンナも心配しているんだ。『朝食はいらない。昼食と夕食を居間に用意したらすぐに部屋を出て行ってくれ 』と言われているらしい。おまけにクリスの姿どころか声もずっと聞いてはいないそうだ」
「………`人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえ ‘ と言うではありませんか。それに、優秀で思慮深いグリフィス様のことです。心配なんて事は……」
「あいつがクリスの事で思慮深かった事があるか?」
「………」

ガタッと音を立ててアーネストが椅子から立ち上がる。

「部屋まで様子を見に参りましょう!」
「よしきた!」

自然と早足になる二人はあっという間にグリフィス達の私室へと辿り着いた。

警備の騎士に頷くと、アーネストがノックをする。

「誰だ?」
グリフィスの声に返事をした。
「私です、グリフィス様。アーネストです!」
「アーネスト!?」
クリスの声が返ってきた。

『クリス様もご一緒ですね』
『何だか声が枯れてね?』
二人がヒソヒソ声で話していると、いきなり目の前の扉が開いた。

「アーネスト!!」
「クリス様!! 何て格好で!!」

クリスはグリフィスのシャツ一枚を羽織っただけで、裾からは小鹿のような足が伸びている。アーネストの腕の中に飛び込もうとしたところを背後から伸びてきた腕がウエストを掴み、あっという間に部屋の中に引き戻され、目の前で扉が閉まってしまった。

「クリス様!!」
扉は鍵が掛けられていて、ドアノブを回す音が虚しく廊下に響くだけだ。二人で這いつくばるように耳をぴったりと扉にくっつけて中の様子を窺う。

『そんな格好で出ては駄目じゃないか』
『だって、アーネストがいたのよ! 私は外に出たいの!』
『まだそんな事を言う元気があったのか――』
「ない! そんな元気はもうないわ! 最後の力を振り絞ったのよ! アーネスト、助け……!」
その後は寝室に閉じ込められたようで、クリスの声が聞こえなくなった。

「考えていたよりずっとまずい状況じゃね?」
「仰る通りですな――」 

青い顔をして立ち尽くす二人の前で、扉が開いてグリフィスが姿を現した。 



今回のムーンとの違いは `こちらは執務室―― ‘ までの部分になります。`こちらは執務室―― ‘ から下の内容は同じです。
また麻痺して(ムーンと混同をして)読み直したらR18になってました……削除したり書きなおしたりしたのですが、まだ生々しいような……(ーー;)

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