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第一章
組み敷かれて(改)
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寝室に足を踏み入れた時、クリスの緊張は最高潮に達した。どうしていいか分からずその身体を守るように、ベッドの天蓋を支える四柱の一本を掴んでいると、目の前でグリフィスが上着を脱ぎ、椅子の背にかけている。
彼はシャツの袖を捲り、クリスに向き直った。
「君はコルセットを外さなくていいのか? つけたままだときついだろう?」
「ハンナがいないし、一人じゃできないからいいわ」
「それは脱がしてほしいというお誘いの言葉かい?」
「違います」
クリスが口を尖らせた。
「大丈夫、紐を緩めるだけだから。ここにおいで」
クリスが用心しながら少しずつグリフィスに近付くと、伸びてきた逞しい両腕に肩を掴まれ、くるっと後ろを向かされた。
「ドレスを下ろしてくれ」
「やっぱりこのままでいい」
グリフィスから離れようとすると、いきなりドレスを腰まで引き下ろされた。
「な・・・!」
「コルセットを外したら、またすぐに着せるから」
グリフィスが器用に紐を緩めていく。それが少し癇に障る。
「とてもお上手」
「嫉妬?」
「まさか!」
「残念だ」
グリフィスがうなじにくちづけた。濡れた唇で吸い上げられ、ぞくりと背筋に悦びが走る。
「何もしないって――」
「ほら、外れた」
「もう――! お願い。あちらを見ていて」
グリフィスが背中を向ける。コルセットを素早く脱ぎ捨てると、ドレスを元の位置に戻した。
「こちらを向いても大丈夫よ」
彼がベッドに導こうとするので、クリスが首を傾げた。
「貴方は寝巻きか何かに着替えなくてもいいの?」
「普段は何も着ないで寝る。そんな姿になったら君が困るだろう?」
紅くなったクリスはグリフィスに従った。ベッドに横になると、彼が二人の身体に掛布をかけた。後ろから抱き寄せられて、背中にグリフィスの暖かさを感じる。
「こんなにぴったり抱き寄せられたら眠れないんだけど」
「俺は眠れる」
その言葉通り、暫くするとグリフィスの寝息が聞こえてきた。こんな状態で眠れるなんて・・・
しかしクリスも思ったより疲れていたようで、その寝息を聞いている内に眠りが訪れてきた。
そのまた暫くあと・・・
「やれやれ・・・」
グリフィスが片目を開けて、クリスの様子を伺う。離れかけていたクリスの身体をまたその腕の中に抱き込むと、今度は本当に眠る為に目を閉じた。
夢の中、髪の毛が後ろに払われて、熱い何かがうなじに触れる・・・
離れようとすると引き戻され、そのままシーツに縫い止められた。首筋に感じた唇に思うままに貪られる。
「ふぁ・・・ん・・・」
段々と唇が降りてきた。鎖骨を辿り、その窪みに留まると舌で味わうように舐られる。快感が背筋を這いのぼってきて、我慢できずに逃げようとすると、大きい身体に押さえ込まれ、ただその身に快楽を受け続けた。
「いやぁ・・・」
さすがに眠りから目覚めたが、まだ朦朧としていて身体に力が入らない。
覚醒しきれずに見下ろすと唇が襟元を這っていき、背中を両手で抱え込まれた。身体がしなり、胸を差し出す姿になる。ドレスが少しずつ引き下ろされ、胸に夜気を感じた時に尖りを口に含まれた。
「ん・・・っ、グリフィ・・・!」
「君はどこも甘い・・・」
何て可愛いらしい声を出すんだ。今日の夢は生々しい――
本物の彼女を抱いているようだ。
乳首を唇で挟んで軽く吸い上げ、舌を絡みつかせる。もう片方は指先で摘んでくりくりと刺激した。身を捩じらせて喘ぎながら、逃げようとする身体を引き戻し執拗に愛撫を与え続ける。
敏感な尖りを同時に弄ばれる刺激は、初めてのクリスには強すぎた。
痺れるような感覚に身体が痺れ、恍惚の境地に陥りそうになる。
「ああ・・・! はあ・・・やだぁ、嘘つき・・・寝るだけだって、言ったのに!」
快感に力が入らない手で、涙ぐんでグリフィスを追いやろうとすると、彼の動きが急に止まった。
「クリス・・・?」
「はい・・・」
「本物――? 夢ではなくて?」
「本物よ・・・」
「――っ、申し訳ない!」
グリフィスはクリスから離れて仰向けになった。
「やけに生々しいし、反応も声も、いつもより可愛らしいと思ったら」
「嘘つき。グリフィスなんて嫌い――」
ベッドに座り込んで着崩れたドレスを直しながら腹立ち紛れに口にした言葉だが、グリフィスからは返事がない。
「うん・・・?」
クリスが振り返ると、彼は両手を目の上に被せて落ち込んでいるように見えた。
「他の女に言われても何とも思わないが、君の口からだと結構堪える」
「・・・・・・」
しかし、腹立ち紛れに言ったことだ。そんな言葉にグリフィスが・・・?
今度はクリスからの返事がないので、片手を上げて伺い見るとあからさまに`それは嘘でしょう? ‘ と顔に書いてある。
グリフィスは溜息をつくと、クリス側に反転してうつ伏せになった。両肘で身体を支え、すぐ傍で下から見上げる。
「俺は君に首ったけだ」
いつもはきちんと撫で付けて整っている前髪が寝乱れて落ちてきている。少し少年ぽく見えて、そんなグリフィスも素敵だ。その状態で下から見上げられて、そのようなことを言われたらどぎまぎしてしまう。
紅くなる顔を隠すように、グリフィスとは反対側に顔を向けると、今の言葉を信じていないか、拒絶されたと思ったようで、クリスの手を取りその甲にくちづけてきた。
驚いて振り返ると、真摯な瞳に正面から捕らえられた。
「きちんと全てを説明するから。居間で話を聞いてくれ」
クリスはまたこくんと頷いた。
彼はシャツの袖を捲り、クリスに向き直った。
「君はコルセットを外さなくていいのか? つけたままだときついだろう?」
「ハンナがいないし、一人じゃできないからいいわ」
「それは脱がしてほしいというお誘いの言葉かい?」
「違います」
クリスが口を尖らせた。
「大丈夫、紐を緩めるだけだから。ここにおいで」
クリスが用心しながら少しずつグリフィスに近付くと、伸びてきた逞しい両腕に肩を掴まれ、くるっと後ろを向かされた。
「ドレスを下ろしてくれ」
「やっぱりこのままでいい」
グリフィスから離れようとすると、いきなりドレスを腰まで引き下ろされた。
「な・・・!」
「コルセットを外したら、またすぐに着せるから」
グリフィスが器用に紐を緩めていく。それが少し癇に障る。
「とてもお上手」
「嫉妬?」
「まさか!」
「残念だ」
グリフィスがうなじにくちづけた。濡れた唇で吸い上げられ、ぞくりと背筋に悦びが走る。
「何もしないって――」
「ほら、外れた」
「もう――! お願い。あちらを見ていて」
グリフィスが背中を向ける。コルセットを素早く脱ぎ捨てると、ドレスを元の位置に戻した。
「こちらを向いても大丈夫よ」
彼がベッドに導こうとするので、クリスが首を傾げた。
「貴方は寝巻きか何かに着替えなくてもいいの?」
「普段は何も着ないで寝る。そんな姿になったら君が困るだろう?」
紅くなったクリスはグリフィスに従った。ベッドに横になると、彼が二人の身体に掛布をかけた。後ろから抱き寄せられて、背中にグリフィスの暖かさを感じる。
「こんなにぴったり抱き寄せられたら眠れないんだけど」
「俺は眠れる」
その言葉通り、暫くするとグリフィスの寝息が聞こえてきた。こんな状態で眠れるなんて・・・
しかしクリスも思ったより疲れていたようで、その寝息を聞いている内に眠りが訪れてきた。
そのまた暫くあと・・・
「やれやれ・・・」
グリフィスが片目を開けて、クリスの様子を伺う。離れかけていたクリスの身体をまたその腕の中に抱き込むと、今度は本当に眠る為に目を閉じた。
夢の中、髪の毛が後ろに払われて、熱い何かがうなじに触れる・・・
離れようとすると引き戻され、そのままシーツに縫い止められた。首筋に感じた唇に思うままに貪られる。
「ふぁ・・・ん・・・」
段々と唇が降りてきた。鎖骨を辿り、その窪みに留まると舌で味わうように舐られる。快感が背筋を這いのぼってきて、我慢できずに逃げようとすると、大きい身体に押さえ込まれ、ただその身に快楽を受け続けた。
「いやぁ・・・」
さすがに眠りから目覚めたが、まだ朦朧としていて身体に力が入らない。
覚醒しきれずに見下ろすと唇が襟元を這っていき、背中を両手で抱え込まれた。身体がしなり、胸を差し出す姿になる。ドレスが少しずつ引き下ろされ、胸に夜気を感じた時に尖りを口に含まれた。
「ん・・・っ、グリフィ・・・!」
「君はどこも甘い・・・」
何て可愛いらしい声を出すんだ。今日の夢は生々しい――
本物の彼女を抱いているようだ。
乳首を唇で挟んで軽く吸い上げ、舌を絡みつかせる。もう片方は指先で摘んでくりくりと刺激した。身を捩じらせて喘ぎながら、逃げようとする身体を引き戻し執拗に愛撫を与え続ける。
敏感な尖りを同時に弄ばれる刺激は、初めてのクリスには強すぎた。
痺れるような感覚に身体が痺れ、恍惚の境地に陥りそうになる。
「ああ・・・! はあ・・・やだぁ、嘘つき・・・寝るだけだって、言ったのに!」
快感に力が入らない手で、涙ぐんでグリフィスを追いやろうとすると、彼の動きが急に止まった。
「クリス・・・?」
「はい・・・」
「本物――? 夢ではなくて?」
「本物よ・・・」
「――っ、申し訳ない!」
グリフィスはクリスから離れて仰向けになった。
「やけに生々しいし、反応も声も、いつもより可愛らしいと思ったら」
「嘘つき。グリフィスなんて嫌い――」
ベッドに座り込んで着崩れたドレスを直しながら腹立ち紛れに口にした言葉だが、グリフィスからは返事がない。
「うん・・・?」
クリスが振り返ると、彼は両手を目の上に被せて落ち込んでいるように見えた。
「他の女に言われても何とも思わないが、君の口からだと結構堪える」
「・・・・・・」
しかし、腹立ち紛れに言ったことだ。そんな言葉にグリフィスが・・・?
今度はクリスからの返事がないので、片手を上げて伺い見るとあからさまに`それは嘘でしょう? ‘ と顔に書いてある。
グリフィスは溜息をつくと、クリス側に反転してうつ伏せになった。両肘で身体を支え、すぐ傍で下から見上げる。
「俺は君に首ったけだ」
いつもはきちんと撫で付けて整っている前髪が寝乱れて落ちてきている。少し少年ぽく見えて、そんなグリフィスも素敵だ。その状態で下から見上げられて、そのようなことを言われたらどぎまぎしてしまう。
紅くなる顔を隠すように、グリフィスとは反対側に顔を向けると、今の言葉を信じていないか、拒絶されたと思ったようで、クリスの手を取りその甲にくちづけてきた。
驚いて振り返ると、真摯な瞳に正面から捕らえられた。
「きちんと全てを説明するから。居間で話を聞いてくれ」
クリスはまたこくんと頷いた。
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