上 下
94 / 94
後日談

22 一緒に寝るのは危険だ #

しおりを挟む
「あの野郎……」
「どうした?――っと、」

 文書と手紙が放って寄こされ、落ちる寸前でデイヴィッドがキャッチする。
 アーネストとレオナルドと三人で、顔を寄せ合わせて読み始めた。


 敬愛なるグリフィス殿下

 私共の船にクロノスのアレクサンダー国王が乗船しております。
 部下に探らせたところ、ご子息のジェラルド王子が『クリスに会うの楽しみー!』と嬉しそうにはしゃいでいる模様……。
 ご予定はおありでしょうか?


「え、お前さ、クリスを攫った上に、手を出そうとしたアレクサンダーの来訪を許したの?」
「俺が許すと思うか?」
「こちらの手紙は……と、アレクサンダーからクリス様宛の手紙ではありませぬか。船長、途中でくすねましたな」

 三人は顔をくっけてまた読み始める。


 愛しいクリス

 この手紙が君の手元に届くのと、我々が君の元を訪れるのと、どちらが先になるだろう……。
 いま、アクエリオスに向かう船の中で、私は君へのこの手紙をしたためている。
 到着予定は〇月〇日だ。
 クリス……愛しい君に、たってのお願いがある。
 アクエリオス滞在中、城での宿泊を許してはくれないだろうか。
 ジェラルドは君に会えない辛さや、悲しみから、小さな胸を痛めて、全く笑わなくなってしまった。
 グリフィス王子もジェラルドのこの状態を知ったなら、心の広い彼の事だ。きっと許可してくれるだろう。
 ”クリスに会いに行く”と伝えてからのジェラルドは、喜びに満ち溢れ、今では以前の明るさを取り戻している。
 もちろんジェラルドだけでなく、私も君に会えるのが心から楽しみだ

 君のアレクサンダーより永遠の愛をこめて 


「お前、よくこれ破かなかったな」
「びりびりに引き裂いてやりたいが、証拠として残さないといけないからな」

 使者がグリフィスに指示を仰いだ。

「グリフィス様からご指示を賜るよう、船長に言付ことづかっております」
「乗ってきた船でそのまま送り返すように」

 そこにノックの音がして、バアンッと勢いよく扉が開きクリスが入ってきた。

「グリフィス、これを見て!」
「どうした?」

 嬉しそうなクリスに、胸がざわめくグリフィス。

「ジェラルドから手紙がきたの! 私に会いたくて堪らないのですって! 今日の船で着くらしいの……お城に泊めてあげてもいいでしょう?」

 船長もアレクサンダーの手紙には目が行ったが、子供の手紙までは気づかなかったようだ。いや、たとえ気づいたとしても、クリスの似顔絵が書いてある封筒を、くすねる気にはなれなかっただろう。

「アレクサンダーめ……こうなるのを見越していたな」
「ねぇ、いいでしょう?」

 可愛くて純真で、天使のようなジェラルドは、クリスのお気に入りである。

「アレクサンダーは息子をだしにしている。却下だ」
「グリフィスお願い、ジェラルドの手紙を読んであげて……!」

 しぶしぶ目を通すと、確かにジェラルドの手紙は可愛かった。

 クリスあいたい、さびしい。お父さまにあわせてくれるよう毎日おねがいした。やった! お父さまが、つれて行ってくれるって! もうすぐあえるよ! もうすぐだよ! ……と、今まで書き溜めていた手紙が、封筒にぎっしりと詰まっている。クリスに会いたい気持ちを切々と、拙い文字で書き綴っているのが涙を誘った。

 最後に、”よるはいっしょにねてほしい”とも……書いてあった……。

「却下だ」
「なぜ!?」
「一緒に寝るのは危険だ」
「寝るのはアレクサンダーじゃなくて、ジェラルドとよ?」
「あいつのことだ。ジェラルドをだしにして、ベッドに潜り込んでくるに違いない」
「貴方がいるもの、大丈夫よ」
「クリス。今日で二週間なんだぞ」
「………何が」←忘れてる

 そして、クリスに弱いグリフィスは根負けをし、アレクサンダー親子を滞在させる。クリスとジェラルドは幸せな時を過ごし、グリフィスとアレクサンダーは表面上は和やかに、水面下では激しい攻防戦を繰り広げたのであった。
 その後も晩年に至るまで、アレクサンダーはクリスをしつこく狙ったが、グリフィスはいつも勝利したという……

 おしまい



おまけ


 アレクサンダー親子が城でお泊りの晩、クリスとグリフィスが寝室にて

「クリス。ジェラルドが可愛いのは分かる。しかし君の子ではないのだし、ここはグッと我慢をして――」
「なぜ? 私を母のように慕っているのよ。ねぇ、お願い。一緒に寝てもいいでしょう?」
「そうだ! お前はジェラルドが可哀そうだと思わないのか!?」
「なぜお前(アレクサンダー)が枕を持ってここにいる!?」

 クリスとジェラルドは幸せそうにくっついて寝て、グリフィスとアレクサンダーは激しい戦いを繰り広げ、結果クリスに寝室から追い出される羽目になった。



拙いお話を最後までお読み頂きありがとうございました

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(89件)

ゆきちゃん
2020.06.30 ゆきちゃん

あっちもこっちも面白かった!!
懐かしの二人も良かったあ((o(^∇^)o))
完結お疲れ様でした!!

sierra
2020.06.30 sierra

ゆきちゃん様

あっちもこっちも面白いと言って頂いて嬉しいです。
ありがとうございます(#^^#)

思ったのですが、ゆきちゃん様は”どちらの話のほうが好き”とか、ありますでしょうか?

私は、どちらもそれぞれ好きなのですが、ムーンの病んでるグリフィスが、好きというか、書いてて楽しかったです。うん、ヤンデレ好きかもしれません。 ^m^

懐かしのアレクサンダーとジェラルドも良かったでしょうか? 本当に、懐かしいですよね。

ゆきちゃん様 コメントを頂いて、投稿の力になりました。ありがとうございます!
労いの言葉も、ありがとうございました(#^^#)

解除
denntyuu
2020.06.29 denntyuu

編集地獄でコメントしている時間が取れない為、誤字報告だけ…。

第93話(後日談21)の誤字報告

***直下の「」内、アーネストの台詞(名前間違い)

仕事をしろ、デイビッド  ×

仕事をしろ、デイヴィッド ○

デイ(ヴィ)ッドがデイ(ビ)ッドになっています。
(英字入力時に、vとbを押し間違えた?)

完結、お疲れ様でした。


追記:未編集アニメ、1,234話(爆)

私「わ~い、綺麗に揃った~♪…って、喜んでる場合じゃねぇよ、早く編集しないと!(汗)」

キートン山田「録り過ぎたバラエティ番組やドラマ作品等、実写番組の編集ばかりに掛かりきりで、アニメの編集を放置していた、弊害である」

私「……編集が……、……終わらない……orz」

キートン山田「…自業自得である…。」
(ため息混じりな口調で、吐き捨てるかの如く、ぼそりと呟く様に)

私「………………。(土下寝で気絶中)」

sierra
2020.06.30 sierra

denntyuu様

えっ、………ε=ε=ヽ( ゚Д゚)ノ 行ッテキマース
タダイマ-!!ヽ(′▽`o)ノ=)=)=)=)=!!

ホントだ! デイビッドになっている!! 

ありがとうございました(#^^#) しかしここ、よく気づきましたね。( ゚д゚)さ、さすが・・・

うん、押し間違えたんだと思います(気づかなかったけどキーがお隣ですね)。そして、コピペしたので、ムーンも同じなのでした……
………ε=ε=ヽ( ゚Д゚)ノ 行ッテキマース

いつもありがとうございます。とても助かります!!(^^)!

お陰様で、無事に完結いたしました。ありがとうございます。(#^^#)
orz長かった…… ←自分のせい

キートン山田「…自業自得である…。」
(ため息混じりな口調で、吐き捨てるかの如く、ぼそりと呟く様に)

キ、キートン山田の演技力が高まっている……!!
うん、ここまで言われたら、土下寝するしかないですよね。^m^

denntyuu様 コメントをありがとうございました! denntyuu様の笑い、やっぱりツボに入ります(●^o^●)
今回、コメントをすぐに入れて下さり嬉しかったです。投稿の励みになりました。(#^^#)

解除
chii
2020.06.29 chii

おはようございます。完結おめでとうございます❗お疲れ様でした(///ω///)♪とても楽しくて面白いお話でした❗さて、トリシアさん、いい仕事しますね〜(///ω///)♪グリフィス、正座でお説教何て、まさに天国から地獄よね🎵アレクさん、まだ諦めてなかったのね❗まぁ、しつこそうだったし、諦めるわけ無いよね〜(´д`|||)ジェラルドくん、沢山お手紙書いてくれたのね🎵あれは、クリス嬉しかっただろうね🎵国のトップ二人を手玉に取るとは、流石クリスやるわね〜(///ω///)♪本当に、楽しかった❗さてさて、今回は、動物ではありません‼️まかないチャレンジです❗わりと簡単に作れる物が多いから、試してみてください❗

sierra
2020.06.30 sierra

chii様 おはようございます!

ありがとうございます!お陰様で無事完結いたしました。・゚・(ノ∀`)・゚・。

楽しくて面白いと言って頂き、とても嬉しいです!(〃v〃)

トリシアさん、いい仕事をしますよね! 私もキャラ的に大好きです!(^^)!

グリフィスの”まさに天国から地獄”……すんごいピッタリで、笑ってしまいました!

そうなんです!アレクさんはしつこくて、おまけに図々しくて、諦めないんですよね~(´д`|||)

はい。ジェラルド君は沢山お手紙を書きました。天使のようなジェラルド君。クリスは嬉しさでいっぱいです(#^^#)

トップ二人を手玉に取るクリス。やりますね~(///ω///)♪ マジ羨ましいです。

まかないチャレンジ!? まかない料理を作るのかな?……と、youtubeを覗いたら……

美味しそーーー!!!
本当だ! 簡単に作れそうで、また河原さんも美味しそうに食べるから、益々作りたくなってしまう。
動画も丁寧に、分かりやすく説明してくれるのがいいですね!
魚肉ソーセージのおにぎりと、トンテキと、ピリ辛きゅうり中華風と……早速作ってみます!(^^)!

chii様が入れて下さったコメントに励まされて、最後まで投稿することができました。
ありがとうございました。*゚。+(n´v`n)+。゚*

解除

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※長くなりそうなので、長編に変えました。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【R18】婚約者の優しい騎士様が豹変しました

みちょこ
恋愛
「レベッカ! 貴女の婚約者を私に譲ってちょうだい!」 舞踏会に招かれ、心優しき婚約者アレッサンドと共に城で幸せな一時を過ごしていたレベッカは、王女であるパトリツィアから衝撃的な一言を告げられた。 王族の権力を前にレベッカは為す術も無く、あっという間に婚約解消することが決まってしまう。嘆き悲しむレベッカは、アレッサンドに「お前はそれでいいのか?」と尋ねられたものの、「そうするしかない」と答えてしまい── ※ムーンライトノベル様でも公開中です。 ※本編7話+番外編2話で完結します。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」  申し訳なさそうに眉を下げながら。  でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、 「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」  別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。  獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。 『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』 『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』  ――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。  だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。  夫であるジョイを愛しているから。  必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。  アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。  顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。  夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。 

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。