上 下
93 / 94
後日談

21 涙目の君も……いい ☆

しおりを挟む
 みっちりと奥まで埋め尽くされたその感触に、クリスの腰がぶるぶると震える。

「なんでっ、…ぁっ……いまグリフィスも……んんっ…!」
「吐精したばかりだから、まだ萎えていない」
「寧ろ大きくなっているのは何故!?」
「気のせいだ」
「!!」
 
 グリフィスはその後も衰えることを知らず、クリスはかされ続けた。


「いやぁっ、もう、ゆるしてぇ………!」
「違うだろう? 達するときは何て言うんだ?」

 グラマラスなクリスの身体に背後から伸し掛かり、太い楔の先端でぐりぐりと奥を刺激しながら、耳元で呟く。
クリスの腰は甘く痺れ、濡れそぼった膣肉がグリフィスの雄に絡みつき、痙攣し始めた。

「イくぅっ、イっちゃうのっ! んーーー!」

 教えたとおりの言葉を叫んで達したクリスに、グリフィスは満足気に微笑んだ。

「いい子だ」

 圧し掛かったまま、頬にチュッとキスをする。

「グリフィス」
「ん……?」
「休ませて」
「ん……」

 恐る恐る身体を離そうとするクリスを、グリフィスが繋がったまま、コロンと仰向けにひっくり返した。

「え、……」
「あと一回だけ」
「うそ、い、いやぁあああああ……!」
 
***
 
「それで……『やめて』と言うのも聞かずに、猿のように盛ったと……」
「その表現は女子としてどうかと……」
「間違ってると……?」

 トリシアがグリフィスを、ギロリと睨みつける。

「合ってます……」

***

 グリフィスが記憶を取り戻した翌朝……彼は愛しいクリスを腕の中にして、幸せな目覚めを迎えていた。

「クリス……」
「う……ん……」

(なんて愛らしいのだろう。夜鳴鶯ナイチンゲールのように澄んだ声に、姿かたちは美しく、中身は愛らし【以下略】)

 グリフィスはクリスの頬にくちづける。
 瞼を開けたクリスは初め寝ぼけまなこでいたが、グリフィスを認めると同時に蒼ざめた。

「どうした、クリス…」
「ばなじで、ずごじばなれで………わだじのごえ!」(放して、少し離れて………私の声!)

 明け方近くまで、ヒィヒィ嬌声を上げさせられ続けていたので、声が(体力も)枯れ果ててしまったのだ。
 力が入らない身体で、グリフィスの腕の中から抜け出そうとするクリスを、やすやすと彼が引き戻す。

「ぃゃ~」(小さな声しか出ない)
「大丈夫だ。何もしないから」
「ぼんどに……?」

 涙目で見上げるクリスを見て、グリフィスが黙り込む。嫌な予感しかしないクリス。
 グリフィスがクリスの顎を摘んで、顔を近づけてきた。

「涙目の君も……いい」
「だずげで~ドリジア~~~!」

 ドカンッ!! と大きな音と共に扉が開き、居間から入る光をバックに、トリシアが仁王立ちしていた。

「チッ、もう来たか」
「ドリジア~~~」
「クリス様!」

 すぐに駆け寄ってきてグリフィスからクリスを奪い取り、キッとグリフィスを睨みつける。
 寝室突入時に尽力した騎士達は、扉がひらくなり顔を背けて後ろに退いた。
 万が一、クリスの(あられのない)姿でも目にしようものなら、(グリフィスとトリシアに)息の根を止められてしまうからだ。

「クリス様。遅くなり申し訳ございませんでした。鍵を壊すのに手間取ってしまい……」
「いいの。ぎでくれでありがどう」(いいの。来てくれてありがとう)
「そ、そのお声は……!」

 ギッとまたグリフィスを睨みつけながら、親指と人差し指を口に咥え、ピーッと指笛を鳴らす。
 途端にわらわらと、トリシア傘下の侍女達が寝室になだれ込んできた。

「何だこれは?」

 クリスを連れて行こうとする侍女達を、グリフィスが睨んで声を荒げる。

「誰が連れて行くのを許可し――っ、」

 バシッとトリシアに頭を叩かれ、言葉が途切れた。

「グリフィス! あんたはこっち!」
「呼び捨てか!」
「なんか文句でも……?」
「………」

 首根っこを掴まれて、ずるずると引きずられていく。

「あの達がきちんと介抱するから、クリス様のことは諦めなさい」
 
 本気で抗えば勝てる相手ではあるが、今回は反省するところもあり、グリフィスは大人しく引きずられていった。 
 結果、正座で延々と説教されることになる。
 おまけにその後は二週間、クリスと共に寝るのを禁止された。
 何の騒ぎだと駆けつけたアーネストとデイヴィッドに、一部始終を目撃される羽目にもなった。


***


「過ぎた事をいつまで笑っているんだ。仕事をしろ、デイヴィッド」
「あ、悪い。お前のあんな姿を見るの初めてだったろう? ついつい思い出しちゃうんだよなぁ」

 ぷっ、とアーネストも吹き出したが、グリフィスが睨みつけた時には、何事もなかったように仕事に向かっていた。 
 レオナルドは現場を見ていないので興味津々だが、グリフィスが怖くて黙っている。
 アーネストが席を立ち、笑顔でグリフィスに書類を渡した。

「良かったですな。今日でその二週間目ですぞ」
「ああ、だから早めに上がる。明日の朝は遅く……いや、午後になるだろう」
「前も言ったけど、独り身の前でそういう発言はやめてほしいんだよね」

 デイヴィッドが顔を顰めたところでノックの音が響き、息せき切った定期船の使者が紙筒を手に入室してきた。 
 アクエリオスのたもとを流れるアーデル川。そこを行き来する定期船は、アクエリオスが独占運航している。
 彼はその定期船専用の使者――、まあ、連絡係である。

「早かったな。もう、入港したのか?」
「船長から至急の用件です。こちらの文書をグリフィス様にと、預かって参りました」
「そんなに急がずとも、船長とは昼に会う予定だが……」
「ご覧になったら、お考えが変わると思われます。あと道理に外れていますが、配達される前に抜き取った手紙もこちらに……」
「ん?」

 使者は紙筒から文書と手紙を取り出して、グリフィスに手渡した。
 読み始めたグリフィスの顔が、みるみる不機嫌になっていき、最後には鬼の形相に成り代わる。

「あの野郎……」



今回のムーンの題名は”満月の夜に高く、やがては細く……”になります
次話で終わりです!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

結婚式の前夜、花嫁に逃げられた公爵様の仮妻も楽じゃない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:62,354pt お気に入り:2,908

転生先が幻の島で人間が俺しかいないんだが何か問題ある?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

浮気症の婚約者様、あなたと結婚はできません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,405pt お気に入り:2,132

令嬢は大公に溺愛され過ぎている。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,676pt お気に入り:16,142

【R18】あなたの心を蝕ませて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:3,901

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:128,866pt お気に入り:6,933

こわれたこころ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:873pt お気に入り:4,912

処理中です...