79 / 94
後日談
8 ばかね……
しおりを挟む
「ちょっと兄様! 今日こそは言わせてもらうわよ!!」
詰め寄るプリシラを相手にせず、グリフィスが跳ね起きて上着を羽織る。
「中庭だ」
「今日は動きがあるでしょう」
医師が答えているところに、アーネストが入ってきた。
「イーサンが中庭に出ました」
「どうなっているの……?」
ぽかんとするプリシラに、グリフィスが声をかける。
「一緒に来い。声を出すなよ、後で説明をする」
「えっ? ええ……」
一階の回廊に下りたところで、デイヴィッドとも偶然出会った。彼も巻き込み全員で柱の陰に隠れる。
噴水の前でイーサンが、床に落ちたパンを篭から出して口にした。
「俺なら……泥つきでも食べられる」
「グリフィス様、お静かに」
イーサンが傷心のクリスを慰めようと、胸の中に抱き締める。
「っ! あの野郎――っ!!」
「耐えて下さい。この一か月の苦労が無駄になりますぞ……!」
殺気をみなぎらせて飛び出そうとしたグリフィスを、アーネストと医師が二人がかりで押さえつける。
「え~っと、訳は分かんないけど、状況は分かった」
デイヴィッドもグリフィスを押さえる側に加わり、プリシラはというと”私には声を出すなと言ったのに……”と半ば呆気、半ばあきれ顔で見ていた。
その後二人は、アーネストから詳しい説明を受ける。
――回想風から元へと戻る
「旅行の話ですが、彼は湖水地方に別荘など持っていません。クリス様と、どこか我々の手の届かないところに、駆け落ちしようと考えていたようです。我々が用意していた”偽の書類”や、”融雪の仕掛け”が紛失し始めたのと、噴水前でのイーサンの話から、これはまたR商会と取引をするだろう、という結論に至りました。
すぐさま大掛かりな捕り物の準備に入ったわけですが、その準備が整う前にクリス様が旅行の件を断ってしまうと、今までの苦労が水の泡になってしまいます。なのでイーサンに用事を言いつけたり、仕事漬けにしたりして、クリス様と会えないように取り計らっておりました」
「それで会えなかったのね………」
「さようでございます。……クリス様には辛い思いをさせ、誠に申し訳ありませんでした」
アーネストが、心底すまなそうに頭を下げる。クリスが首を横に振った。
「いいのよ……R商会の下劣極まりないやり方は、私も許せないでいたの。でもひとこと言ってくれれば、いくらでも協力したのに」
「君は素直で思っている事が顔に出るから、芝居は到底無理だ」
グリフィスが骨ばった手を伸ばしてきて、クリスの頬に触れる。
確かに自分も演技であったなら、あんなに悲哀に満ちた表情や態度はできなかったかもしれない。しかし、グリフィスの仕打ちがまだ許せないのと、”到底”とまで言われ、クリスはむっと頬を膨らませた。
「私はまだ、貴方を許していないのだけど」
クリスが頬にあるグリフィスの手を、プイと横を向いて振り払った。
「君を巻き込んで……本当に悪かった」
「悪いと思っているなら、”イーサンが君に好意を持っていたから、利用した。都合が良かったから”なんて、何で言ったの? それに、いくら私が囮だとしても、辛く当たりすぎだと思うわ」
「それは、……辛く当たらないと君に隙ができないし、あんな言い方をしたのは――」
俯いたグリフィスがぼそっと呟いた。
「自分だけ幸せなのが理不尽で…」
「え、……」
クリスはグリフィスの背中に腕を回し、喉を逸らして彼を見上げる。瞳の中にあるものを見て、優しく表情を和らげた。
「ばかね……」
すいません。風邪を引きまして、熱で推敲が進まない上に文章も変かもしれません。(ガーッ、と書き上げた文章を毎日推敲しながら上げております)拙い文章力なので、推敲に時間が掛かってしまいまして……(:_;)
詰め寄るプリシラを相手にせず、グリフィスが跳ね起きて上着を羽織る。
「中庭だ」
「今日は動きがあるでしょう」
医師が答えているところに、アーネストが入ってきた。
「イーサンが中庭に出ました」
「どうなっているの……?」
ぽかんとするプリシラに、グリフィスが声をかける。
「一緒に来い。声を出すなよ、後で説明をする」
「えっ? ええ……」
一階の回廊に下りたところで、デイヴィッドとも偶然出会った。彼も巻き込み全員で柱の陰に隠れる。
噴水の前でイーサンが、床に落ちたパンを篭から出して口にした。
「俺なら……泥つきでも食べられる」
「グリフィス様、お静かに」
イーサンが傷心のクリスを慰めようと、胸の中に抱き締める。
「っ! あの野郎――っ!!」
「耐えて下さい。この一か月の苦労が無駄になりますぞ……!」
殺気をみなぎらせて飛び出そうとしたグリフィスを、アーネストと医師が二人がかりで押さえつける。
「え~っと、訳は分かんないけど、状況は分かった」
デイヴィッドもグリフィスを押さえる側に加わり、プリシラはというと”私には声を出すなと言ったのに……”と半ば呆気、半ばあきれ顔で見ていた。
その後二人は、アーネストから詳しい説明を受ける。
――回想風から元へと戻る
「旅行の話ですが、彼は湖水地方に別荘など持っていません。クリス様と、どこか我々の手の届かないところに、駆け落ちしようと考えていたようです。我々が用意していた”偽の書類”や、”融雪の仕掛け”が紛失し始めたのと、噴水前でのイーサンの話から、これはまたR商会と取引をするだろう、という結論に至りました。
すぐさま大掛かりな捕り物の準備に入ったわけですが、その準備が整う前にクリス様が旅行の件を断ってしまうと、今までの苦労が水の泡になってしまいます。なのでイーサンに用事を言いつけたり、仕事漬けにしたりして、クリス様と会えないように取り計らっておりました」
「それで会えなかったのね………」
「さようでございます。……クリス様には辛い思いをさせ、誠に申し訳ありませんでした」
アーネストが、心底すまなそうに頭を下げる。クリスが首を横に振った。
「いいのよ……R商会の下劣極まりないやり方は、私も許せないでいたの。でもひとこと言ってくれれば、いくらでも協力したのに」
「君は素直で思っている事が顔に出るから、芝居は到底無理だ」
グリフィスが骨ばった手を伸ばしてきて、クリスの頬に触れる。
確かに自分も演技であったなら、あんなに悲哀に満ちた表情や態度はできなかったかもしれない。しかし、グリフィスの仕打ちがまだ許せないのと、”到底”とまで言われ、クリスはむっと頬を膨らませた。
「私はまだ、貴方を許していないのだけど」
クリスが頬にあるグリフィスの手を、プイと横を向いて振り払った。
「君を巻き込んで……本当に悪かった」
「悪いと思っているなら、”イーサンが君に好意を持っていたから、利用した。都合が良かったから”なんて、何で言ったの? それに、いくら私が囮だとしても、辛く当たりすぎだと思うわ」
「それは、……辛く当たらないと君に隙ができないし、あんな言い方をしたのは――」
俯いたグリフィスがぼそっと呟いた。
「自分だけ幸せなのが理不尽で…」
「え、……」
クリスはグリフィスの背中に腕を回し、喉を逸らして彼を見上げる。瞳の中にあるものを見て、優しく表情を和らげた。
「ばかね……」
すいません。風邪を引きまして、熱で推敲が進まない上に文章も変かもしれません。(ガーッ、と書き上げた文章を毎日推敲しながら上げております)拙い文章力なので、推敲に時間が掛かってしまいまして……(:_;)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
313
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる