儚くも花は咲く

那如

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新たな決意

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朝の光が差し込む

小鳥のさえずりが心地い

少女は1度開けた瞳を再び閉じようとした

そんな清々しい朝

「…瑠花」

少女の名を呼ぶ優しく気遣う低い声

「瑠花…おはよう」

「……」

なかなか起きない瑠花の耳元に

「フッ」

と息を吹きかける

「っっ!?」

びっくりする少女に

クスクスと意地悪く笑う

「起きた?」

ベッドに横たわる美しい少女の
頭を撫でてやり華奢な少女の体を
抱き上げる

そして膝の上に向き合う様に座らせると
透き通るようなサラサラの銀髪に指を通す

目を覚ました少女
はその心地よさに再び瞳を閉じた

「瑠花、寝てはダメだよ
みんなの所に行こう?」

「…ん」

やっとのことで目を覚ました少女は

「仁兄…おはよ…」

柔らかい顔で微笑んだ

仁は瑠花の額に唇を落とす

瑠花も嬉しそうに目を細める

一見 微笑ましい恋人の様な雰囲気

「瑠花っ仁兄にくっつきすぎると
妊娠するわよ」

そんな悪魔の囁き

いっきに微笑ましい雰囲気がぶち壊される

「絵里奈…瑠花に変な事ほざくな」

仁の腕の中にいた瑠花を無理やり引き裂き
絵里奈の腕に収まる

「まったく瑠花は仁兄ばっか懐いちゃって…」

「…?えり姉キレイ」

一瞬、絵里奈の言葉に?を浮かべたが
今は絵里奈の耳のピアスに夢中

さっきまでのピリピリした雰囲気は
瑠花の一言で柔らかい雰囲気に包まれた

「フフ…絵里奈の負けね」

綺麗な笑みを浮かべ凛とした色気も漂う
1人の女性

「絵里奈、そんなに嫉妬しなくても
瑠花はちゃんと絵里奈のことが好きよ」

ね?

と綺麗な女性は瑠花の頭を撫でてやり
ごはんにしましょ?と瑠花の手を引き

部屋から出た

あまりにもサラッと部屋から連れ去るもんだから
絵里奈は唖然

「クク…ある意味、静が1番強敵かもな?」

「………うん」

部屋から出る寸前
仁は絵里奈に

「ちゃんとお前も見てるから瑠花ばかり
構うなよ?」

と妖艶な笑みを残し部屋から出た

「こんな時に言うセリフ?」

と誰もいない部屋で顔を赤くし
小さな声で呟いた事は誰も知らない


テーブルを囲み皆で朝食をとる
賑やかな朝食
普段ならゆっくり朝食をとることなんてない
ただ今日は久しぶりの休日

いつも一緒にいるが
任務の時はどうしても単独行動に
なってしまう

バラバラに行動するため
皆が無事か不安になる

“皆が無事に揃ってやっと
任務完了する
誰1人欠けてはならない”

仕事が忙しくなかなか帰ってこない
冷静で冷徹で残酷な
ボスの口癖
それと同時に父の唯一優しい一面を見せる
父の不破 伸一だ

賑やかな食卓に一音の着信

それは不破 伸一からだった

不破 伸一の着信音は二つある
ボスの顔と父の顔のように
任務の時と家族網の時
と、使い分ける

今日は父の着信だった

凍りついた皆の顔から安堵の息

仁は携帯を手に取り通話ボタンを押した

「はい」

久しぶりの休日はどうだ?みんな揃って
るか?瑠花はちゃんと飯をくってるか?
あの子は食が細いからなぁ

と主に瑠花が心配で電話をしてくる

そんな父の優しい声はボスの時の威厳で威圧のある声ではなく家族を気遣う尊大な父の声

「今日はどうしたんです?瑠花に代わりましょうか?」

「いや、いい…電話越しにみんなの声が聞こえる
元気そうで良かった。近いうち食事でもしようと
伝えてくれ、ああ…静の手料理がいいな
怜於はちゃんと大人しくしてるか?雅はあまり
喋らないからなぁ…絵里奈は相変わらず瑠花を独占か?」

凄まじいマシンガントーク
確かに父は瑠花を溺愛してるが
静も絵里奈も雅も怜於も
みんな父にとったら可愛い子供

「父さん、心配しなくてもみんな元気だよ
大丈夫…何かあったら俺が守るから」

安心しろよ絶対オレが守るよ

「……そうか…ありがとう。
お前も命を大事にしろ…お前の代わりはいない
…不破 伸一の子供に代わりない大切な息子だ
俺の目の黒いうちは俺がお前達を幸せにするからな」

嗚呼…やっぱり父には勝てない
守るのに必死でこの先の幸せを
考えていなかった
先の人生を見越しての準備が
全然出来てなかった

俺は父みたいになれるのか?
こんな俺であいつらを守れるのか?
幸せにできるのか?

…仁は自暴自棄になりそうだった

それを見かねた
伸一は

“仁だからできる事がある”

そのたった一言
そのたった一言で仁は救われた気がした

いつも父を追っていた仁にとって
命を張って家族を守る父の姿を見たら
きっとプレッシャーだったのだろう
考えてみればこんな世界でも幸せを感じてた
それはきっと父がいたから
守る事も幸せにする事も
父みたいになれば出来るのだろうかと
自信を見失ってたのかもしれない

「そうだよな…俺なりに頑張るよ」

その言葉を聞いた伸一は
安心して電話をきった

大丈夫、どんな仁でも信じてると
いつまで経っても俺の子供なんだと…
また少し、成長した仁に伸一は喜びを感じた

そして、
仁は新たな決意をした

俺の力で俺なりに
皆を守ると









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