犬どもの生活

美里

文字の大きさ
上 下
24 / 36

9

しおりを挟む
がこの家を出てしまえば、奥谷が守り続けてきた幻想の生活は壊れてしまう。あの女の娘である私と生活することで、奥谷は蚕が繭を作るように慎重にじっくりと幻想の世界を作り、そこに閉じこもってきたのだろうから、その世界を壊す存在を許しはしないはずだ。許さないのだとしたら、もう後は私を殺すくらいしか方法はない気がする。それか、ここから出て行けないように両足を切り落として監禁でもしてみるか。
 もしかしたら母は、この男に殺されたのかもしれない。男しか抱けないくせに女に惚れた奥谷の幻想を守るために。
 「ホモの人殺し。」
 じわじわと胸に湧いてくる恐怖を押し殺しながら、私は低く奥谷を罵った。自分はこの男より優位に立っていると思い込んでいなくては、恐怖に負けてしまいそうだった。
 奥谷は私から目をそらし、深く俯いた。
 「茜を殺したのは、私ではありません。」
 ほとんど聞き取れないくらいの声量で発せられたその台詞の意味を理解するのに、数秒間かかった。
 「あんたが殺したの?」
 私の声は聞き苦しく上ずっていたはずだ。これまで考えたこともなかったその可能性。
 奥谷は、私をこの家に閉じ込めるために茜を殺したのかもしれない。
 今度は私が目に見えて動揺した。スプーンこそ取り落さなかったが、両手が明らかに震えだしていた。
 スプーンをテーブルに投げ出すように置き、私は席を立った。これ以上奥谷と同じ空間にいたくなかった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

春夏
BL
【完結しました】 『確率は100』の if story です。本編完結済です。本編は現代日本で知り合った2人が異世界でイチャラブする話ですが、こちらは2人が異世界に行かなかったら…の話です。Rには※つけます。5章以降。「確率」とは違う2人の関係をお楽しみいただけたら嬉しいです。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

助けの来ない状況で少年は壊れるまで嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

できる執事はご主人様とヤれる執事でもある

ミクリ21 (新)
BL
執事×ご主人様。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...