珈琲

君にあげるキムチなんて無い

文字の大きさ
上 下
1 / 1

珈琲

しおりを挟む





 午前6時。
 今日は少し早くに目が覚めた。

 昨夜の楽しみに別れを告げ、嫌々、穏やかな光を浴びる。


 寂しい足取りでリビングへ向かう。
 フローリングの無機質な匂いが、その寂しさを増幅させた。

 我が家にはテレビが無い。
 だから、耳に入ってくるのはすずめさえずりと、コーヒーミルが豆をく音くらいである。

 しかし、それが至高。
 都会の喧騒と相性が悪い身に適している。



 豆が挽けた。

 もうすぐだ。
 毎回、この時は子供のように胸が高鳴る。

 熱湯を茶褐色の粉末に注ぐ。
 かぐわしい香りが鼻から全身に突き刺さる。
 これだけでも力がみなぎってくる。



 カップに入ったブラックのコーヒー。
 今日も良い出来だ。

 自分を褒めながら、静かに口に流し込む。



 ん?
 なんだか後味が悪い。

 これは、血の味か?

 何故だ。確かめても出血は見当たらない。


 異様な後味に戸惑っていると、追い討ちをかけるように激しい頭痛に襲われた。


  いたい…。いたいよ…。
  たすけて…。



 暫くして、諸々の症状は落ち着いた。
 今日は珍しく思い出し過ぎてしまったようだ。
 先程までの幸福感はすっかり消え去ってしまった。










 「今日、上手くいくかな?」




                  〈おわり〉
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

怪異・おもらししないと出られない部屋

紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。 ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。 こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。 強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。

徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……

紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz 徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ! 望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。 刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

処理中です...