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嵐の前(1)
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「んんむー」
職人の街、ドワーレ。
用意された宿屋の一室にて、一條は奇怪な声を上げながら毛布の海で藻掻いていた。
「ジャンヌ姉ー。……まだやってた……」
来訪を告げる事無く開け放たれた扉と同時に、そんな呆れた声が聞こえてくる。
「んががぎごーっ」
「こんな姿見たらルカヨさんだって泣く……いや泣かんかあの人は」
遠慮なく部屋を突っ切ってくる足音に対し、うつ伏せのままで、のそのそと視線をそちらに向けた。
腕組みしている義妹が、心底呆れた表情で立っている。
「ここだけ見たら、ぐうたらツインテール引きこもりデカ女ね」
「口が悪いよーこいつー。……後ツインテールにしたのお前じゃんね」
抗議の声は届かず、無視して机に歩いて行く。
軽く物色した上で、
「……あえて聞くけど、解決法は?」
顔だけをこちらに向け、尋ねてくる。
「まだだよー……。良い案だと思ったのにー。も、ホントそこまで頭回って無かったー」
犬かきの様に動いて見せたが、紀宝からは特に反応が無かった。
その事に、逆にいたたまれない気持ちから起き上がり、しかし、それ以上は動かない。
「ま、それも込みで分かったのは良い収穫だった、って事じゃない?」
「ホントにね……。地面に文字を書く。それなりが内に入った所をボーンッ。……問題は、その文字が消えない工夫。そうだよね……。大群で移動してきてるんだから、通過してる内に文字そのものが掠れてくる事だってある。失念してたよ……。あいつに指摘されるまで気付かなかった。模擬模擬って大事だね」
一條の発想自体は間違っていなかった。
事実、先日の第一回試験でも良好な結果を残している。
そこまでは良かったのだ。
問題はすぐに見付かり、それを解決出来ぬまま、今に至る。
――飛んでないのは飛んでないで厄介なのほんま……。
ため息を飲み込み、代わりと言う様に頭を掻いた。
「散歩行ってこようかな……」
「鍛冶屋さん?」
「何でそうなるのかは分かんないけど……まぁ、良いか。昨日はあまり話せてないし……」
浮かんだ森人二名は、連れ立ってそちらへ行っている筈である。
それ程心配はしていなかったが、鍛冶士同士、予想以上に親交を深めているのは良い事だった。
ついでに言えば、アシーキもその方面に興味を持っていたのも意外であったが、経歴を思えば特に不可解と言う訳でもないだろう。
そんな森人である二人だが、文字の類いで何を聞くのかは定かでは無い。
が、一條達よりも余程ゼルフには精通している。
付け加えるなら、ヴァロワの鍛冶士代表、ローグラ・ヘストパルにも聞ける事はあるだろう。
最も、今必要なのは娘であるシトレ・ヘストパルかも知れないが、別の観点から閃く事もあると信じても良い。
「付き添う?」
「あー……いや、ダイジョブ」
小首を傾げながら尋ねてきた彼女には苦笑しつつ、それだけを返した。
「それより」
と前置き。
紀宝の格好を上から下まで見ていく。
「そっちも出掛ける用事があるんじゃ?」
余所行きの服装だが、一條他と行く時よりも気合乗りが違う。
その指摘に若干、神妙な面持ち。
「まー……そうなんだけ、ど」
「邪魔はしたくないかなぁ」
「くっ。あんたの仕業でしょ。これ」
「さてね」
以前は然程見て回る事は無かったが、今回はもう少し猶予がある。
定期的に届く報告は、大名行列が如く、しかし、ゆっくりとした足取りでウネリカへと迫るロキの群れに関して詳細に書かれていた。
その鈍足具合は、日毎にまちまちではあるものの、普通の生物であればまず耐えられない程である。
動物界でもナマケモノと良い勝負が出来そうな位であった。
つまり、まだ暫くは時間的余裕が持てる。
――その間に懸念点を払拭せなあかんのだが。まぁ、少しは気抜けても良いか。
「あに笑ってんのよ」
顔に出ていたらしいので、一旦頬を揉み込んでいく。
「別に。嫌なら断われば良いだけでしょ」
笑みを濃くすれば、何とも言えない、味な表情だけが返ってきた。
「いっつもやられてるからねー」
言いつつ、これまでの様々に思いを馳せる。
「ここは一つ、姉と呼ばれ続けてきたアタシとしても威厳を見せる時が……あ。やり過ぎた? 何何。ツインテール持って……え、無言怖。真顔だし、あっ、止めてっ、両側に引っ張らないでっ!? ……っ、力つっよっ。アタシに対して特攻出てるっ!?」
「ジャンヌ様ーっ」
頭を縦に割らんとする義妹を止める勢いで、救世主が現われる。
固定されている為、声だけで判断する他ないのだが、その呼び方をする上、部屋にまでやってくる無鉄砲染みた行動を取れる人物は一人だ。
「ミーナちゃん! 助けて!」
掛けた言葉に対してこれと言った反応は返ってこないので、恐らくではあるが、ミーナニーネ・リギャルドはその場で固まっているに違いない。
一回目の試験と前後する様に到着したリンダールからの応援部隊。
あちらの事情も承知ではある為、それ程の規模ではないと踏んではいたのだが、それでも予想を超える人数と、見合わない程の物資類。
聞けば、実働部隊の大凡半分を寄越して来たと言うのだから驚いたものである。
「頼られた事は嬉しいのだろう。態度には出ていなかったが」
等と、サーフマ・ウッドストックが告げ口してきたが、果たして、真意は如何ほどであろうか。
とはいえ、当然の様に紛れていた彼の最愛の妹を見た時は本当に心臓が止まるかと思った。
実際問題、怪我の一つでもさせれば問答無用で首は飛ぶ筈である。
その時は親友一人で収まってくれれば良いのだが、微妙な所だ。
当人の様子と見れば、豪胆なのか気楽なのか、と言った風なのはせめてもの気休めと言えよう。
「……何事でしょう……」
「いつもの事ですね」
「マブダチ」
「スフィは良いけどっ。クタルナさんっ!? その言葉は忘れてと言いましたよねっ!?」
厄介な言葉を覚えさせた奴への刑罰を決めなければならないが、それも今は後回しである。
「女の命が引き千切られる寸前なんですけどっ!?」
「命……?」
「髪は女性の命、なのだそうです。あぁ、クタルナ殿。あまり引っ張ると痛めますよ」
「くそっ。反応の薄い人と天然しか居ないぞこの部屋っ!」
視界に変化は無く、仲裁にも訪れる気配はない。
女三人寄れば、と言うやつであるが、今は五人である。
――点七位は割増しかぁ。
等としみじみ感慨深げにしていた所で、
「ミラさん。急いでいたのでは? 支度に手間取って待たせたらディノワ殿に悪いからと」
「だあぁっ! スフィ! いらん事言わないでっ!」
スフィの指摘に、紀宝は瞬間的に手を離した。
と同時、一條はするりと抜け出して退避開始。
「全く。少しからかっただけでこれだもの」
呟き、心中で苦笑。
友人の新鮮な慌て振りを見れただけでも良しとするべきだろう。
「何か用事?」
「朝食の誘いに」
「なるほろ」
時間的には正しい。
一條は先日より部屋に籠もりきりだ。改めて言われれば、腹がそれを主張している様な気もする。
――実感は湧かないけども。
思案。
「一緒」
「一緒にと思いまして! 是非とも! お兄様とは食事を共にしたのですからっ。私もご一緒したかったのに閉め出した上に鍵まで掛けるなんてあんまりでしたものっ。夜はお忙しかったみたいですしっ!」
「……」
クタルナを遮る様に、可愛らしくミーナニーネが飛び跳ねながら捲し立てた。
全身を使った大仰な物言いだが、対峙しているクタルナとは普通に目も合う。
苦笑い。
「リンダールとは食事が全然違うのも新鮮でしたっ。向こうでもお肉料理は出ますが、大体がファートアラームからの物で味付けも異なるんですよ。後は野菜が豊富ですねっ。この辺りでも作られているとの事ですが、私は特にあの毒々しい見た目の食べ物は衝撃的でした! 味も食べた事の無い感じで。モックラックの森にもあるのでしょうか。機会があれば探してみたいものですっ」
「……そう」
「えぇっ!? あの、ジャンヌ様、いきなり何でしょうか!?」
前にも聞いた事のあるミーナニーネの台詞。
無論、そんな彼女の頭を撫でているからである。
「あのっ。クタルナ様っ?」
追加された疑問は、クタルナが同じ様に頭を撫でたからだ。
「あのっ。……何でしょう?」
小動物の様な、とは彼女の事を言うのだろう。
一條自身はそういったのを飼った事はないが。
「まぁ、少しは落ち着いてくれればなぁ、と」
言いながら、両の手で少女の頬等も揉んでいく。
――それにしても食い物の話しかしないのはどこぞのアホ野郎を思い出すな……。
既にされるがままの大貴族のご令嬢。
しかし、親友としては、自身が怖がられない方が好ましいので、これはこれで良いのだろう。
「ジャンヌ姉様。ウネリカからの報告も色々届いてますので、その件もお願いしますね」
「えぇ……。それ、スフィの役割でしょ?」
「姉様の役割でもあります」
「ぐぬぬ……」
唸るが、それで身を引く様な女性でもない。
「……じゃあ、まぁ、食べながらそっちもやりますね……」
告げたが、妙な顔をされたのは礼儀作法の問題であろう。
「……。じゃ、私は出掛けて来るけど……」
「うん。いってらっしゃい。……所でミラ。結構伸びてきたね、髪」
言われた彼女は、毛先を二度三度と摘まんで見せる。
以前は肩に微か掛かる程度であったが、今ではスフィよりも若干長目になってきていた。
「そ」
軽い返事。
「うん。似合ってるし、可愛いよ」
続けた直後、飛んできた枕が一條の視界を塞いだ。
職人の街、ドワーレ。
用意された宿屋の一室にて、一條は奇怪な声を上げながら毛布の海で藻掻いていた。
「ジャンヌ姉ー。……まだやってた……」
来訪を告げる事無く開け放たれた扉と同時に、そんな呆れた声が聞こえてくる。
「んががぎごーっ」
「こんな姿見たらルカヨさんだって泣く……いや泣かんかあの人は」
遠慮なく部屋を突っ切ってくる足音に対し、うつ伏せのままで、のそのそと視線をそちらに向けた。
腕組みしている義妹が、心底呆れた表情で立っている。
「ここだけ見たら、ぐうたらツインテール引きこもりデカ女ね」
「口が悪いよーこいつー。……後ツインテールにしたのお前じゃんね」
抗議の声は届かず、無視して机に歩いて行く。
軽く物色した上で、
「……あえて聞くけど、解決法は?」
顔だけをこちらに向け、尋ねてくる。
「まだだよー……。良い案だと思ったのにー。も、ホントそこまで頭回って無かったー」
犬かきの様に動いて見せたが、紀宝からは特に反応が無かった。
その事に、逆にいたたまれない気持ちから起き上がり、しかし、それ以上は動かない。
「ま、それも込みで分かったのは良い収穫だった、って事じゃない?」
「ホントにね……。地面に文字を書く。それなりが内に入った所をボーンッ。……問題は、その文字が消えない工夫。そうだよね……。大群で移動してきてるんだから、通過してる内に文字そのものが掠れてくる事だってある。失念してたよ……。あいつに指摘されるまで気付かなかった。模擬模擬って大事だね」
一條の発想自体は間違っていなかった。
事実、先日の第一回試験でも良好な結果を残している。
そこまでは良かったのだ。
問題はすぐに見付かり、それを解決出来ぬまま、今に至る。
――飛んでないのは飛んでないで厄介なのほんま……。
ため息を飲み込み、代わりと言う様に頭を掻いた。
「散歩行ってこようかな……」
「鍛冶屋さん?」
「何でそうなるのかは分かんないけど……まぁ、良いか。昨日はあまり話せてないし……」
浮かんだ森人二名は、連れ立ってそちらへ行っている筈である。
それ程心配はしていなかったが、鍛冶士同士、予想以上に親交を深めているのは良い事だった。
ついでに言えば、アシーキもその方面に興味を持っていたのも意外であったが、経歴を思えば特に不可解と言う訳でもないだろう。
そんな森人である二人だが、文字の類いで何を聞くのかは定かでは無い。
が、一條達よりも余程ゼルフには精通している。
付け加えるなら、ヴァロワの鍛冶士代表、ローグラ・ヘストパルにも聞ける事はあるだろう。
最も、今必要なのは娘であるシトレ・ヘストパルかも知れないが、別の観点から閃く事もあると信じても良い。
「付き添う?」
「あー……いや、ダイジョブ」
小首を傾げながら尋ねてきた彼女には苦笑しつつ、それだけを返した。
「それより」
と前置き。
紀宝の格好を上から下まで見ていく。
「そっちも出掛ける用事があるんじゃ?」
余所行きの服装だが、一條他と行く時よりも気合乗りが違う。
その指摘に若干、神妙な面持ち。
「まー……そうなんだけ、ど」
「邪魔はしたくないかなぁ」
「くっ。あんたの仕業でしょ。これ」
「さてね」
以前は然程見て回る事は無かったが、今回はもう少し猶予がある。
定期的に届く報告は、大名行列が如く、しかし、ゆっくりとした足取りでウネリカへと迫るロキの群れに関して詳細に書かれていた。
その鈍足具合は、日毎にまちまちではあるものの、普通の生物であればまず耐えられない程である。
動物界でもナマケモノと良い勝負が出来そうな位であった。
つまり、まだ暫くは時間的余裕が持てる。
――その間に懸念点を払拭せなあかんのだが。まぁ、少しは気抜けても良いか。
「あに笑ってんのよ」
顔に出ていたらしいので、一旦頬を揉み込んでいく。
「別に。嫌なら断われば良いだけでしょ」
笑みを濃くすれば、何とも言えない、味な表情だけが返ってきた。
「いっつもやられてるからねー」
言いつつ、これまでの様々に思いを馳せる。
「ここは一つ、姉と呼ばれ続けてきたアタシとしても威厳を見せる時が……あ。やり過ぎた? 何何。ツインテール持って……え、無言怖。真顔だし、あっ、止めてっ、両側に引っ張らないでっ!? ……っ、力つっよっ。アタシに対して特攻出てるっ!?」
「ジャンヌ様ーっ」
頭を縦に割らんとする義妹を止める勢いで、救世主が現われる。
固定されている為、声だけで判断する他ないのだが、その呼び方をする上、部屋にまでやってくる無鉄砲染みた行動を取れる人物は一人だ。
「ミーナちゃん! 助けて!」
掛けた言葉に対してこれと言った反応は返ってこないので、恐らくではあるが、ミーナニーネ・リギャルドはその場で固まっているに違いない。
一回目の試験と前後する様に到着したリンダールからの応援部隊。
あちらの事情も承知ではある為、それ程の規模ではないと踏んではいたのだが、それでも予想を超える人数と、見合わない程の物資類。
聞けば、実働部隊の大凡半分を寄越して来たと言うのだから驚いたものである。
「頼られた事は嬉しいのだろう。態度には出ていなかったが」
等と、サーフマ・ウッドストックが告げ口してきたが、果たして、真意は如何ほどであろうか。
とはいえ、当然の様に紛れていた彼の最愛の妹を見た時は本当に心臓が止まるかと思った。
実際問題、怪我の一つでもさせれば問答無用で首は飛ぶ筈である。
その時は親友一人で収まってくれれば良いのだが、微妙な所だ。
当人の様子と見れば、豪胆なのか気楽なのか、と言った風なのはせめてもの気休めと言えよう。
「……何事でしょう……」
「いつもの事ですね」
「マブダチ」
「スフィは良いけどっ。クタルナさんっ!? その言葉は忘れてと言いましたよねっ!?」
厄介な言葉を覚えさせた奴への刑罰を決めなければならないが、それも今は後回しである。
「女の命が引き千切られる寸前なんですけどっ!?」
「命……?」
「髪は女性の命、なのだそうです。あぁ、クタルナ殿。あまり引っ張ると痛めますよ」
「くそっ。反応の薄い人と天然しか居ないぞこの部屋っ!」
視界に変化は無く、仲裁にも訪れる気配はない。
女三人寄れば、と言うやつであるが、今は五人である。
――点七位は割増しかぁ。
等としみじみ感慨深げにしていた所で、
「ミラさん。急いでいたのでは? 支度に手間取って待たせたらディノワ殿に悪いからと」
「だあぁっ! スフィ! いらん事言わないでっ!」
スフィの指摘に、紀宝は瞬間的に手を離した。
と同時、一條はするりと抜け出して退避開始。
「全く。少しからかっただけでこれだもの」
呟き、心中で苦笑。
友人の新鮮な慌て振りを見れただけでも良しとするべきだろう。
「何か用事?」
「朝食の誘いに」
「なるほろ」
時間的には正しい。
一條は先日より部屋に籠もりきりだ。改めて言われれば、腹がそれを主張している様な気もする。
――実感は湧かないけども。
思案。
「一緒」
「一緒にと思いまして! 是非とも! お兄様とは食事を共にしたのですからっ。私もご一緒したかったのに閉め出した上に鍵まで掛けるなんてあんまりでしたものっ。夜はお忙しかったみたいですしっ!」
「……」
クタルナを遮る様に、可愛らしくミーナニーネが飛び跳ねながら捲し立てた。
全身を使った大仰な物言いだが、対峙しているクタルナとは普通に目も合う。
苦笑い。
「リンダールとは食事が全然違うのも新鮮でしたっ。向こうでもお肉料理は出ますが、大体がファートアラームからの物で味付けも異なるんですよ。後は野菜が豊富ですねっ。この辺りでも作られているとの事ですが、私は特にあの毒々しい見た目の食べ物は衝撃的でした! 味も食べた事の無い感じで。モックラックの森にもあるのでしょうか。機会があれば探してみたいものですっ」
「……そう」
「えぇっ!? あの、ジャンヌ様、いきなり何でしょうか!?」
前にも聞いた事のあるミーナニーネの台詞。
無論、そんな彼女の頭を撫でているからである。
「あのっ。クタルナ様っ?」
追加された疑問は、クタルナが同じ様に頭を撫でたからだ。
「あのっ。……何でしょう?」
小動物の様な、とは彼女の事を言うのだろう。
一條自身はそういったのを飼った事はないが。
「まぁ、少しは落ち着いてくれればなぁ、と」
言いながら、両の手で少女の頬等も揉んでいく。
――それにしても食い物の話しかしないのはどこぞのアホ野郎を思い出すな……。
既にされるがままの大貴族のご令嬢。
しかし、親友としては、自身が怖がられない方が好ましいので、これはこれで良いのだろう。
「ジャンヌ姉様。ウネリカからの報告も色々届いてますので、その件もお願いしますね」
「えぇ……。それ、スフィの役割でしょ?」
「姉様の役割でもあります」
「ぐぬぬ……」
唸るが、それで身を引く様な女性でもない。
「……じゃあ、まぁ、食べながらそっちもやりますね……」
告げたが、妙な顔をされたのは礼儀作法の問題であろう。
「……。じゃ、私は出掛けて来るけど……」
「うん。いってらっしゃい。……所でミラ。結構伸びてきたね、髪」
言われた彼女は、毛先を二度三度と摘まんで見せる。
以前は肩に微か掛かる程度であったが、今ではスフィよりも若干長目になってきていた。
「そ」
軽い返事。
「うん。似合ってるし、可愛いよ」
続けた直後、飛んできた枕が一條の視界を塞いだ。
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