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束の間(4)
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「……さて。これで全員、見て頂いたかと思いますが……それが今回確認された存在です」
ヴァロワ城内の一角にあって尚、十二皇家当主達のみが入室を許可される部屋。
以前にも訪れた事のある、円卓のみが用意された会議場で、一周して戻って来た黒竜ロキの描かれた紙を手に、一條は開幕を告げる口火を切った。
――もっと描かせとけば良かったかも。
或いは自身で描くべきだったとも思うが、今更詮無い事である。
結局、ヘアン・オーブが描いたのは三枚。
現状、内一枚を一條が手元に置き、一枚を回していった格好。
残る一枚は、此処には居ないヴァロワ皇が持っているらしいのだが、此方はその理由も聞いていない。
とはいえ、何せ題材が題材であり、国家存亡の危機、と言って差し支えないだろう。
いくら表に出てこない人物であろうと実態は伝えて然るべきではあった。
最も、一介の絵描きが描いたものを勝手にその国の最高権力者に渡した点から言えば、彼には恨まれても文句は言えないのだが。
――今度会ったら何かしてあげよう。
釣り合いが取れるかは別問題である。
「しかし、竜、か……。こうしてジャンヌ・ダルクが居るのならば、それも当然、と言えようかな」
「私が原因みたいに聞こえるので勘弁して下さい……」
ヨーリウが、体格に見合う笑いを見せた。
「笑っている場合ではないぞヨーリウ殿。一体どれ程強いのか想像も出来ないが、大きさもだ。二十から三十メトルだと? 皇都ですら保たないのでは?」
トヨーロ・ジュリアスがそれに釘を刺すが、当人は気にしていない。
「はっは。ならば、その前に仕留めるしかないだろうなぁ。ウネリカの修繕はどうなってる?」
「壁自体はどうにかだが……それも果たして効果があるか」
「ウネリカに陣取っていた奴は炎の球を吐いたと聞く。こいつもそれと似た攻撃をするのでは?」
議論が活発になる中、一條は隣の友人と視線を交差させる。
――……ま、言わない方が良い、か。
口を閉じる動作に、向こうも頷いた。
今回の黒竜も、決して弱い存在ではないだろう。
だが、それを間接的にでも知っている人物らの反応は、想定よりも大分異なっていた。
「聞いていた大きさとは違う様だ」
皇都へ来る最中、アシーキとの会話で明らかになった事実だ。
竜と言う姿形は正確らしいのだが、伝え聞く大きさにはかなり開きがあるらしい。
曰く、遙か上空に頭部が見えていた、と言う。
――そも、ロキってのが姿を真似てるのは確かなんだよね。
手元の竜が描かれた紙を、人差し指でなぞっていく。
その大きさには個別で違いもあるが、この辺りは不明である。
実際に二つ、三つの首を持った犬が存在しているのかも知れない。
或いは二頭鰐の方も居るかも知れないが、兎に角、リンダールで一條が叩き斬った巨大魚を思えば、頭から否定は出来ないだろう。
巨人に関しては、元となっているかは審議であるがルマオークがモックラックの森に住んでいる。
それを考慮すれば、
――でも、実際にはその大きさに届かなかった、若しくは育つ前に動かざるを得なかった、って考えも……ないかなぁ……。
しかし、である。
ともすれば、実際の竜とは戦闘能力も桁が違う可能性はあった。
全く勝ちの目が無い訳ではないだろう。
「ジャンヌ姉様」
「んあ……?」
隣からの呼び掛けに、間の抜けた声と共に顔を上げた。
沈黙。
十人の眼が、ジャンヌ・ダルクを射貫いていた。
「……。……えぇと……」
絞り出したが、大半は聞いていない会話。
受け答えに詰まる。
「会心の笑みも今は無駄でしょ……」
義妹の辛辣さは相変わらずであった。
「ロキは大群であると言うのに、ジャンヌ・ダルク殿は竜を相手にする事しか頭にないらしい」
ミネモシー・サラディンの台詞にも返す言葉はない。
当たらずといえども遠からず、とは言えようが。
「ダルク殿なら、また策でも考え付きましたかな?」
――ない。訳でもないけど……。
等と思うが、折角アルベルトが出してくれた助け船である。
泥船案だろうと、用意している以上は出航させておくべきだった。
「……それでは。一つだけ。私は、今回の総力戦。戦場はゴルゴダ平原にすべきと考えています」
想定内と想定外が半々、と言った反応。
軽く一息を入れ、続ける。
「まだ敵の全体は不明ですが、大将は二十メトルを越える巨体。例えウネリカをノクセの様に出来たとして、安全とはならないでしょう」
隣のスフィと視線を一瞬合わせた。
一條も行った事は無いが、つい先程、彼女と軽く話をする中で概観等を聞いてはいる。
ノクセ。
城砦都市、或いは要塞都市と呼称しても良い位には高度に防壁を築かれたヴァロワの要衝だ。
山の切れ目に沿う様に作られた幾重にも作られた関所や裏道の数々、自然をも利用した此処は、位置的にも攻め辛い砦なのは確かで、寧ろ、皇都よりも余程堅牢な都市とも言える。
が、それが最適であるかはまた別の問題だ。事、今回においては。
「ミラリヤが最早戦闘継続が不可能である事は、私も聞いています。なので、ここは惜しむ必要なく、縦横に広く展開して対峙するべきです」
ついでと言う様に、手元にある竜の絵を指差した。
「敵の規模とを考えれば、街の内へ守りに入るのはむしろ危険です。ならば、相応の準備を以て外にてこれに臨んだ方が最適かと」
想定外組も、思考し始めた。
「問題は、そこまでの猶予だな」
指摘に、一條は頷く。
「そうですね……。私としても、そこは何も言えません。明日にでも始まる、と言う事は無いと断言しますが……」
「ファウス殿が歩くより遅いのなら、冬を越せるかも知れませんね」
「耳が痛いですな。クラウディー殿」
「いっそ止まっててくれれば他に案も出せそうなのだが、そうもいかんだろう」
議論が再び熱を帯びる。
「もう一つ。ゴルゴダ平原を戦場とするのに、試したい戦術があります。と言うより、私としては、これをやりたいが為の提案でもあるんですが……」
「先にそれを言え。ダルク殿」
常在戦場の男に言われ、頭を掻いた。
次いで、咳払い。
「自信が無かったもので」
努めて平静に吐き出した。
応えは、この日一番の笑い。
「その作戦とやらは後で聞くとして、だ。そうなると、もうすぐにでも動かせる奴は動かした方が良さそうだ」
「ですね。特に物資は量を増やしていかねば……ガティネの方はランス殿に任せる他ないが」
カオ・イブリッドが、まっすぐに此方を見据える。
「リンダールにも声は掛けるべきだろうな。ダルク殿?」
「いやアタシの担当ではないので」
思わずばっさりと切り返してしまった。
流石に全員の視線が集中してくる。
――……だってそうじゃない?
と、心中で付け加えつつも、果たして、視線の意味は断わった事か口調かと思案しながら、
「こほん」
わざとらしい咳払い一つ。
「私の知る所では……じゃなかった……。えぇと。こういうのは、ヴァロワ皇から直々? に、書文を出して、この場に居ないウッドストック殿なりに宛てるのが正しいのでは?」
無意味に両手を動かしていきながら告げた。
そもそもの話だが、結構好き勝手に統治しているとはいえ、リンダールも立派に国の直下である。
ヴァロワ皇からの檄文を袖にするのは横暴にも程があろう。
「それをジャンヌ姉様に頼んでいるのだと思われますよ……」
口をへの字にする。
「向こうに気に入られている以上、これは断れませんな、ダルク殿」
「ちょっ……と、ランス殿。そういう言い方は誤解を招きますので」
更に告げたが、相手は口の端を上げるのみであった。
「……まぁ、変に角は立たないかもねぇ……」
「ぼそりとこいつ……っ」
ある意味で正鵠、と言えるかも知れない。
ヴァロワ皇国とリンダール地方は、妙な形での力関係にはなっているのだ。
上がやり合っている訳でもないのが、また拗れていると言えばその通りでもある。
――同格扱いのジャンヌ・ダルクからなら、良い意味で救援要請になる、か。
ため息一つ。
そして残念ではあるが、リンダールでの実績と言うこれ以上ない借りも存在している。
さしものいけ好かない南方の主とて、これすらをも無下には扱えない。
なにより紀宝の言う通り、これならば、ヴァロワ皇側にも、リギャルド側にも悪い印象は与えないだろう。
二者共に利を得られる訳である。
「アタシだけ損してる……」
突っ伏した頭を両側から撫でられた。
「また頭の痛い課題だ。イブリッド殿、早急に手配の段取りを付けよう。ゴルゴダ平原を主戦場とするなら、ウネリカにはこれまで以上に人と物を送らねば」
「私の方もそちらでの協力になるだろうな。いくらか人も貸し出せるが」
「人員配置は私とヨーリウ殿、クラウディー殿で当たろう」
無視して進む話は、既に佳境へと入りつつある。
「あ、起きた」
「心機一転です。しかし、どうも……意見は通ったと見るべきかなぁ」
「それだけ期待している、と言う事では? 姉様」
眉根を詰めるに留めた。
「はぁ……。あぁ、さっき軽く話したけど。部隊の件。そっちも大変なのは知ってるけど。色々と考えたい事とかあって、出来れば、手伝って欲しいんだけど……。良い?」
「えぇ。それ位でしたら。ジャンヌ姉様のこれからに比べれば何て事ありません」
「ありがと。……これから……?」
首を傾げようとした所へ、クタルナの兄から感情の籠もっていない声が届く。
「それではダルク殿。明日にでもリンダールへの書簡、お願いします」
――おのれ……っ。
口には出さない。
全く容赦の無い一言に対し、賛同する様に頷きが広がっていき、ここに期日が確定した。
だが、現状を鑑みれば納得も半分だ。
先の期限も不明瞭であれば、こちらは迅速に動く他ないのだから。
ともあれ、そんな彼に精一杯の笑みを見せながら、
――後で目に物見せてやる……っ。最も、見せるのは私じゃなくてあんたの異母兄妹だけれどねっ!?
負け惜しみに近い感情を乗せた。
ヴァロワ城内の一角にあって尚、十二皇家当主達のみが入室を許可される部屋。
以前にも訪れた事のある、円卓のみが用意された会議場で、一周して戻って来た黒竜ロキの描かれた紙を手に、一條は開幕を告げる口火を切った。
――もっと描かせとけば良かったかも。
或いは自身で描くべきだったとも思うが、今更詮無い事である。
結局、ヘアン・オーブが描いたのは三枚。
現状、内一枚を一條が手元に置き、一枚を回していった格好。
残る一枚は、此処には居ないヴァロワ皇が持っているらしいのだが、此方はその理由も聞いていない。
とはいえ、何せ題材が題材であり、国家存亡の危機、と言って差し支えないだろう。
いくら表に出てこない人物であろうと実態は伝えて然るべきではあった。
最も、一介の絵描きが描いたものを勝手にその国の最高権力者に渡した点から言えば、彼には恨まれても文句は言えないのだが。
――今度会ったら何かしてあげよう。
釣り合いが取れるかは別問題である。
「しかし、竜、か……。こうしてジャンヌ・ダルクが居るのならば、それも当然、と言えようかな」
「私が原因みたいに聞こえるので勘弁して下さい……」
ヨーリウが、体格に見合う笑いを見せた。
「笑っている場合ではないぞヨーリウ殿。一体どれ程強いのか想像も出来ないが、大きさもだ。二十から三十メトルだと? 皇都ですら保たないのでは?」
トヨーロ・ジュリアスがそれに釘を刺すが、当人は気にしていない。
「はっは。ならば、その前に仕留めるしかないだろうなぁ。ウネリカの修繕はどうなってる?」
「壁自体はどうにかだが……それも果たして効果があるか」
「ウネリカに陣取っていた奴は炎の球を吐いたと聞く。こいつもそれと似た攻撃をするのでは?」
議論が活発になる中、一條は隣の友人と視線を交差させる。
――……ま、言わない方が良い、か。
口を閉じる動作に、向こうも頷いた。
今回の黒竜も、決して弱い存在ではないだろう。
だが、それを間接的にでも知っている人物らの反応は、想定よりも大分異なっていた。
「聞いていた大きさとは違う様だ」
皇都へ来る最中、アシーキとの会話で明らかになった事実だ。
竜と言う姿形は正確らしいのだが、伝え聞く大きさにはかなり開きがあるらしい。
曰く、遙か上空に頭部が見えていた、と言う。
――そも、ロキってのが姿を真似てるのは確かなんだよね。
手元の竜が描かれた紙を、人差し指でなぞっていく。
その大きさには個別で違いもあるが、この辺りは不明である。
実際に二つ、三つの首を持った犬が存在しているのかも知れない。
或いは二頭鰐の方も居るかも知れないが、兎に角、リンダールで一條が叩き斬った巨大魚を思えば、頭から否定は出来ないだろう。
巨人に関しては、元となっているかは審議であるがルマオークがモックラックの森に住んでいる。
それを考慮すれば、
――でも、実際にはその大きさに届かなかった、若しくは育つ前に動かざるを得なかった、って考えも……ないかなぁ……。
しかし、である。
ともすれば、実際の竜とは戦闘能力も桁が違う可能性はあった。
全く勝ちの目が無い訳ではないだろう。
「ジャンヌ姉様」
「んあ……?」
隣からの呼び掛けに、間の抜けた声と共に顔を上げた。
沈黙。
十人の眼が、ジャンヌ・ダルクを射貫いていた。
「……。……えぇと……」
絞り出したが、大半は聞いていない会話。
受け答えに詰まる。
「会心の笑みも今は無駄でしょ……」
義妹の辛辣さは相変わらずであった。
「ロキは大群であると言うのに、ジャンヌ・ダルク殿は竜を相手にする事しか頭にないらしい」
ミネモシー・サラディンの台詞にも返す言葉はない。
当たらずといえども遠からず、とは言えようが。
「ダルク殿なら、また策でも考え付きましたかな?」
――ない。訳でもないけど……。
等と思うが、折角アルベルトが出してくれた助け船である。
泥船案だろうと、用意している以上は出航させておくべきだった。
「……それでは。一つだけ。私は、今回の総力戦。戦場はゴルゴダ平原にすべきと考えています」
想定内と想定外が半々、と言った反応。
軽く一息を入れ、続ける。
「まだ敵の全体は不明ですが、大将は二十メトルを越える巨体。例えウネリカをノクセの様に出来たとして、安全とはならないでしょう」
隣のスフィと視線を一瞬合わせた。
一條も行った事は無いが、つい先程、彼女と軽く話をする中で概観等を聞いてはいる。
ノクセ。
城砦都市、或いは要塞都市と呼称しても良い位には高度に防壁を築かれたヴァロワの要衝だ。
山の切れ目に沿う様に作られた幾重にも作られた関所や裏道の数々、自然をも利用した此処は、位置的にも攻め辛い砦なのは確かで、寧ろ、皇都よりも余程堅牢な都市とも言える。
が、それが最適であるかはまた別の問題だ。事、今回においては。
「ミラリヤが最早戦闘継続が不可能である事は、私も聞いています。なので、ここは惜しむ必要なく、縦横に広く展開して対峙するべきです」
ついでと言う様に、手元にある竜の絵を指差した。
「敵の規模とを考えれば、街の内へ守りに入るのはむしろ危険です。ならば、相応の準備を以て外にてこれに臨んだ方が最適かと」
想定外組も、思考し始めた。
「問題は、そこまでの猶予だな」
指摘に、一條は頷く。
「そうですね……。私としても、そこは何も言えません。明日にでも始まる、と言う事は無いと断言しますが……」
「ファウス殿が歩くより遅いのなら、冬を越せるかも知れませんね」
「耳が痛いですな。クラウディー殿」
「いっそ止まっててくれれば他に案も出せそうなのだが、そうもいかんだろう」
議論が再び熱を帯びる。
「もう一つ。ゴルゴダ平原を戦場とするのに、試したい戦術があります。と言うより、私としては、これをやりたいが為の提案でもあるんですが……」
「先にそれを言え。ダルク殿」
常在戦場の男に言われ、頭を掻いた。
次いで、咳払い。
「自信が無かったもので」
努めて平静に吐き出した。
応えは、この日一番の笑い。
「その作戦とやらは後で聞くとして、だ。そうなると、もうすぐにでも動かせる奴は動かした方が良さそうだ」
「ですね。特に物資は量を増やしていかねば……ガティネの方はランス殿に任せる他ないが」
カオ・イブリッドが、まっすぐに此方を見据える。
「リンダールにも声は掛けるべきだろうな。ダルク殿?」
「いやアタシの担当ではないので」
思わずばっさりと切り返してしまった。
流石に全員の視線が集中してくる。
――……だってそうじゃない?
と、心中で付け加えつつも、果たして、視線の意味は断わった事か口調かと思案しながら、
「こほん」
わざとらしい咳払い一つ。
「私の知る所では……じゃなかった……。えぇと。こういうのは、ヴァロワ皇から直々? に、書文を出して、この場に居ないウッドストック殿なりに宛てるのが正しいのでは?」
無意味に両手を動かしていきながら告げた。
そもそもの話だが、結構好き勝手に統治しているとはいえ、リンダールも立派に国の直下である。
ヴァロワ皇からの檄文を袖にするのは横暴にも程があろう。
「それをジャンヌ姉様に頼んでいるのだと思われますよ……」
口をへの字にする。
「向こうに気に入られている以上、これは断れませんな、ダルク殿」
「ちょっ……と、ランス殿。そういう言い方は誤解を招きますので」
更に告げたが、相手は口の端を上げるのみであった。
「……まぁ、変に角は立たないかもねぇ……」
「ぼそりとこいつ……っ」
ある意味で正鵠、と言えるかも知れない。
ヴァロワ皇国とリンダール地方は、妙な形での力関係にはなっているのだ。
上がやり合っている訳でもないのが、また拗れていると言えばその通りでもある。
――同格扱いのジャンヌ・ダルクからなら、良い意味で救援要請になる、か。
ため息一つ。
そして残念ではあるが、リンダールでの実績と言うこれ以上ない借りも存在している。
さしものいけ好かない南方の主とて、これすらをも無下には扱えない。
なにより紀宝の言う通り、これならば、ヴァロワ皇側にも、リギャルド側にも悪い印象は与えないだろう。
二者共に利を得られる訳である。
「アタシだけ損してる……」
突っ伏した頭を両側から撫でられた。
「また頭の痛い課題だ。イブリッド殿、早急に手配の段取りを付けよう。ゴルゴダ平原を主戦場とするなら、ウネリカにはこれまで以上に人と物を送らねば」
「私の方もそちらでの協力になるだろうな。いくらか人も貸し出せるが」
「人員配置は私とヨーリウ殿、クラウディー殿で当たろう」
無視して進む話は、既に佳境へと入りつつある。
「あ、起きた」
「心機一転です。しかし、どうも……意見は通ったと見るべきかなぁ」
「それだけ期待している、と言う事では? 姉様」
眉根を詰めるに留めた。
「はぁ……。あぁ、さっき軽く話したけど。部隊の件。そっちも大変なのは知ってるけど。色々と考えたい事とかあって、出来れば、手伝って欲しいんだけど……。良い?」
「えぇ。それ位でしたら。ジャンヌ姉様のこれからに比べれば何て事ありません」
「ありがと。……これから……?」
首を傾げようとした所へ、クタルナの兄から感情の籠もっていない声が届く。
「それではダルク殿。明日にでもリンダールへの書簡、お願いします」
――おのれ……っ。
口には出さない。
全く容赦の無い一言に対し、賛同する様に頷きが広がっていき、ここに期日が確定した。
だが、現状を鑑みれば納得も半分だ。
先の期限も不明瞭であれば、こちらは迅速に動く他ないのだから。
ともあれ、そんな彼に精一杯の笑みを見せながら、
――後で目に物見せてやる……っ。最も、見せるのは私じゃなくてあんたの異母兄妹だけれどねっ!?
負け惜しみに近い感情を乗せた。
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