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終章
繋げ④
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☆sideリン
時間の進みは早い。あっという間に夜だ。
「リン…これ以上は…」
「…そうだね」
私はメールの返信を一通り済ませ、明日以降のToDoリストをまとめていた。
コンコンコン……ガチャ
「失礼します。リン様!夜は冷えますので、これを」
「ありがと…」
「警備に戻ります」
「うん、お願い……。ルピカもいいよ、おやすみ」
「リン様、おやすみなさい!」
『パーフェクトボディー』だったビルドは警備員、『不義』だったルピカは、人間のルピカと2人で執事をしている。彼らはセキとセイと名乗るようにしている。
ガチャリ…
「……」
2人がいなくなり、静かな室内で寝息が目立つようになる。
「すーーすーーー」
私の膝の上で寝てるのは『トワ』だ。アピスの作ったAIに名前を付けてあげた。
サラサラ……ピト……
撫でてもトワは起きない。抵抗感がない髪質と柔らかい肌の弾力、温もりは『そこに居ること』を確かに教えてくれる。
「…………」
<これ以上は…>
トワを撫でるのを止める。トワはくせ毛ロングで、メガネをかけた幼女のような見た目をしている。ルコに体をお願いする時に、ランダムにしたから、特に意味はない。
メハが『1』だったから…この子は『永遠』
<ずっと一緒にいたいなんて我儘は言わない…>
私でも持ち上げられる重さだから、起こさないように持ち上げベッドまで運ぶ。
「………………リ…ン……さ………」
「………」
<わたしより長生きしてくれたら…それでいい>
ベッドに寝かせ、毛布を被せる。ルピカの用意したコートのような防寒着を纏ってデッキに出る。
ビュォオーーー
「おまたせ……?」
〔今来たよ…リン〕
シンとの再会。お別れを告げに来たことを察する。
「…そっちはどう?」
〔あぁ…、神の力は取り戻したし、神界に戻るよ。現世へ干渉するつもりはないさ…〕
シンの性格的にも、現世に要がなければ来ることはない。
〈……〉
もうシンとは会えない
分かっていたことだから、そうだよね、と納得した。
「そっか」
〔リンは、どうなんだ…?〕
「わたしは……」
私たちの家は、燃えた。だから、家は再建中で『アピス』が住んでたとされる施設で暮らしている。でも、それは話すまでもない。見て分かるし、知っていること。
〈体調から話すのが通例だよね…〉
「おかげさまで元気だよ…」
あれだけの無理難題をこなして、人間を一時的にやめたっていうのに、今のところ何もない。そして、シンの様子からもデメリットを隠してるようにも思えず、私の病気が治っただけのような状態。
〈少しズルいよね…〉
悩んだり、苦しんだりって方向で私以上だって人は抱えきれないくらいいる。ちょっと命を懸けただけで、ほとんど思い通りなんだから、妬まれるような人生なんだろうなとも思う。
私は気にしないフリをする
お母さんが悩んだのも羨望だった。お金や研究に全力を費やしても、その視線から逃れられない。
助ける側に回り正義であることで、心を守るなんて…私だったら考えないし、思わない
お母さんはずっと真面目だったから、自身の行いを偽善と思って好きになれないし、お父さんとの関係も変に背伸びして本音を言えなかったって聞いた。
お母さんは、私じゃない
『アピス』と闘っても、各国のお偉いさんに挨拶しても、トワに会っても、私が分からない。半神化で世界への解釈が変わっても、ルコ姉ちゃんやお母さんと別れても、メハと別れても……分からない。
体は分かりやすい
体調が正常、悪い時。身体の成長も、老化の進行、大体分かる。
感情は分かんない
『気分が悪い』は分かっても、普段が正常と決めつけることができないし、精神の成長は性悪説や性善説で考えるのか、複合のパターンとか個別の可能性だって考えたけど、しっくりこない。
〈……性悪説は…正直大したことない…〉
だって、人間社会を知るだけのこと…
風習や空気読み、常識を刷り込むってだけで成長じゃない。
性善説だったら、欲を始めとした想いが強まっただけ
〈ただ、思考の好みを知っていくだけのこと…〉
性善説も成長って思えない…
性善説にも、性悪説にも、想定された人生じゃないから、それに縛られて考えられる『成長』じゃないのは当然だったのかなって結論になった。
<過去が…同一性が…>
ソレが私を作るなら…私はなんだろう…
メハと遊んだ記憶が、まず思い浮かぶ。
<……でも、これは遊ばせてもらっただけ>
メハを追いかけて電波塔であった数々を思い返す。
<…自分の手で家族を助けたくなるのは、当たり前……。シンが裏で何かしてたのは分かってたけど、あの時から無茶させてたな…>
そして、『アウトロー』との相対、『アピス』の暴走。失うものは、その時点でなくなってた。
<……前に進もうって…躍起になっていた…>
……………私らしくない。同時に浮かぶ疑問。
なんでだっけ……?
前を向かないと、いけなかった。その熱が疑問を生ませなかった。無我夢中だった。
〈…………〉
気付いたら、責任感を肩に背負いながらも、強い自信を眼に宿した大人たちの前で、感情があるフリをして説明や謝罪をする私がいた。
『見た目を整え、言葉を最小限にし、緊張感を与える』
『沈黙でも言葉が続かないフリをしたら、雄弁』
『演出する人間味と合理的な帰結は、流れを作って答えを誘導させるに有効』
『俯いたら、申し訳なさを演出』
『頭を下げるにも適切なタイミング、回数がある』
『お金や利益をチラつかせ、確証に至るプロセスを踏ませれば、対等になれる』
〈コレが成長とは思いたくない…〉
ここまで考えて、ほとんど変わらなかったことを悟る。色々目に入るし、一時的に気に留めるけど、気にならなくなって意識的に忘れられる。
本当に都合の良い身体だ……
成長はしてないんだろうなと自分の頭の中で結論付ける。
〔……そうか〕
長めの沈黙だった。シンと会話していたことを思い出す。
〔……『オリジナル』とヤイグはどうだ…?〕
「…元気だよ。二人共……」
********************
本当に二人共元気であった。衣食住もちゃんとしているし、ある程度は自由にさせている。
<……>
犯罪者として刑に処されるハズだったヤイグは、外に残った『ネームド』以外のアピスを全て統合し生き地獄になっている点を除けば天国ってだけで……
情報過多にならないようにコントロールして、実質、仕事の奴隷
『オリジナル』も今の処遇で不満はないみたいだし、みんなハッピーってね。
********************
〔…は、ハハ…〕
シンは苦笑いをする。少し甘い対応なのと、私が社畜って言ったから、その二つで変な反応になっている。そう顔に書いてある。
〔【リンク】は…健在だな……〕
「…うん」
今でも、霊は視えるし、【リンク】も、【波紋】もできる。【リンク】はメハとの思い出だった。メハが私に電脳世界を楽しませてくれるように、私は全力で遊んで、【リンク】の世界に引き込むことでお返ししてきたつもりだった。
だから、兵器として使いたくなかった
お母さんは厳しいから、修行の時は使わされたけど、『最強』には使わなかった。作られた人格と言うのもあって、あまり【リンク】したくなかったのもあるし、【リンク】が汚されるみたいで嫌だった。
〔…ルコ達…幸せになってたよ〕
「…そっか」
シンの顔から全て察する。アイナと龍成、龍児に真の意味で迎えられた、と。ルコ姉ちゃんは私のことをすごい心配してくれるお姉ちゃんみたいだったから、控えめに言って嬉しい。
〔ソウはいなかった〕
「……うん、だよね」
〈ソウとメハだけかな…〉
救われなかったのは
〔…ぅ〕
私の顔色が曇ったのを察して、シンが気を利かせようとしている。遮るように喋り始めることにした。
「私にとって…ケイトお母さんは、もちろんお母さんだし、お父さんはお父さんだよ。ソウが面倒見てくれた…、他の霊も相手してくれたし、ルコ姉ちゃんは、本当のお姉ちゃんみたいに振る舞ってくれてさ…メハは双子みたいに歳の近い姉妹だったんだよね……」
〔……〕
思い出が花火大会のように浮かんで沈む。一息に言うつもりだったのに、口ごもってしまう。
〈まだ、続きがある。早く言わないと〉
「ルピカはセイもセキも、執事として支えてくれるし、トワは妹みたいに慕ってくれ…ビルドも番犬以上に心強いよ」
関わってくれた人が多いから…家族の定義が緩くなったと思う。
「大神さんも海月さんも対等に接してくれるし、『真霊』っていう理解者ができたし、エンツやスータは遠くに行ったけど連絡はしてくれるってさ……弟思いのアピスとは話が合うし、ヤイグにだって悪いとこだけじゃないんだなって分かったよ」
〔………〕
シンは真剣に聞いていてくれる。分かってる私らしくない喋りだって。
感情がまた分からなくなる
でも、全部吐き出さないと、もう伝える機会なんてないって分かってるから。
「…それもこれも…隣人として…シンがサポートしてくれたからだよ……」
〔……フッ…〕
シンとのお別れは察していた。だから、頭の隅っこで考えてた。関係性と想いを。
〈近所のお兄さんっていうのが、ピッタリだって思った〉
『妖精の隣人』に因んで笑ってくれると思った。腹抱えて笑うなんて思ってない。私がこんなこと言うとは思わないだろうから、きっと忘れにくいハズだ。
あの時を…毎日夢に見る。メハとの出会い、日常、別れ、再会、またお別れ。
思い出す度に、苦しくなる
平行世界でのアピスの揺さぶりや死の経験……、それは他人事のようにどうでもいい。
結果的にどうにかなったし、死は未だに怖くない
どうにもならないのが、霊達とのお別れとメハとソウの『死』。霊は還るべき場所があるからいいとしても、あの二人はそうじゃない。
選択肢がなかった
コンコン…
「リン様…ご飯の時間です」
「…様はいいよ……お願いしたでしょ?」
「ぅ……気をつけます、リン姉さん…」
「おいで…トワ」
ガチャ…
「…ご飯、冷めちゃいますよ?」
《ずっと一緒にいたいなんて我儘は言わない…》
「ちょっとだけ…」
もふぅ……
後ろから優しく抱き着く。
《わたしより長生きしてくれたら…それでいい》
<……………!>
言葉にしないように力を強めていく。
メハにはできなかったモフモフが好き
〈…この時間が一番安らぎをくれるから…〉
分からない感情を忘れるように別に思考を回す。
「……リン姉様……」
「…もう少しだけ…ごめん…」
トワは癖っ毛を気にしているから、これもできなくなるかもしれないと思うと少し切ない。そこまでの余裕が出てやっと先ほどの衝動が和らぐ。程なくして、朝食に向かった。セキとセイの作った料理は美味しかった。
日常が再現されていく…
街や人、国で見てもそうだった。
以前と全く一緒とはいかなくても、それを補うものが基本的にあるのだから…
書類にサインする。
契約が成立することで次のステップに進む
両者間の納得の証が契約書。それが始まりや終わりの役割をする。各々の『しなきゃ』が終わって、契約上でのやりとりを終えれば、あとはいつも通り。
「…99%日常」
99%…。それはみんなの日常が100%じゃないこと。
そして、わたしたち以外はということ…
「リンさん…、これで一先ずは終わりでいいよ。後は俺らでもできる確認して、最終チェックお願いするくらいだから」
「わかった…ありがとアピス」
「…あぁ。ちゃんと休まないとダメだからな?」
「アピスもね…」
「まぁそうだな。とりあえず、お疲れ…」
ガチャ…
そう、前とは違う。ルピカは2人いるし、ビルドがいる、トワがいる、『オリジナル』という秘書がいる。そして、ヤイグの贖罪を監視しないといけない。
これはしたかったこと
わたしの『しなきゃ』はシンが許してくれなかったけど、『したい』はみんなが背中を押してくれた。
衝動だった……
『しなきゃ』なんて、理性的に言えないくらいの熱がずっとあった。『アピス』の『ネームド』に会っても、命乞いをされても、することは決まっていた。
色々あっても、結果的にはほとんど理想通り…
みんなが手伝ってくれて、わたしだって必死にやり尽くして、やっと成立したわけで後悔はない。でも、忙しさは必要以上に考えることをさせないでくれていた
今だってそうだった…
後処理をしなきゃ、頭を下げなきゃ、責任を取らなきゃ……。『しなきゃ』を優先して、逃げてることも分かっていた。
周りの人が増えても、温もりをちゃんと感じても、同じカタチはない
例えるなら、こうだ。放火で家が燃えて、どうしようもなくなるまで家には愛着を持つし別れもしっかりした。自分の家が燃えなくても放火犯を捕まえるつもりだったけど、私怨が強くなりながらも逮捕する。そんな感じ。
燃え尽き症候群に近いのかも
この次も、これからも、『しなきゃ』と『したい』を見つけないといけない。
今の『しなきゃ』はもう終わる
お母さんやお父さんの遺産で、お金は困らない。放送への出演料はもらわないようにしてるから、収入源はないに等しい。自力で稼がないといけない。これが『しなきゃ』。
利益重視なら、得意分野で勝負すること
〈わたしがしたいこと…〉
お母さんからのプレゼントがある。メハとの思い出をバックアップできたからと、データとしてもらった。
《一回だけ見るね》
私はそう言った。何度もみたら、ダメだと思ったから。記憶が薄れてくる時期に見るも良し、心が弱り切った時に見るも良し。
その選択肢があるだけでいい
<…………>
メハの世界が恋しい…な……
自分が与えられ続けた遊戯は愛に溢れていたし、私もすごく好きだった。
「…………」
涙が頬を伝うのが分かる。
そっか………
一つの答えが浮かび上がる。私は考えながら作業する。
〈わたしは…諸行無常とも言われるこの世界を本気で愛せないんだ……〉
だって、みんな死んでしまうから……
だって、形は崩れるものだから………
だって…、絶対なんてないんだから……
〈わたしは……電脳世界は裏切らないって…信じ切ってたんだ……〉
「……できた……」
できはした。同じではない。なんといってもメハがいない。でも、限りなく再現されたもの。
「……………」
こうじゃない……
形は一緒でも、中身が空虚だ。
たぶん……
今の私に刺さっていない。あの時の私に向けて作られたゲームであって、今の私はまた別だ。心の底から好きな世界を創ろう。
「…………フッ…」
それが商品となって広まっても、私とメハが認められるみたいですごくいい。
決めた
〈ゲームを作ろう〉
自然と口角が上がった。ある意味、初めての人生計画。
これまでのは目の前まで『しなきゃ』と『したい』が迫ってきてた
今は、まっさらなキャンバスにポンと放り出された状態。無知で無垢な時に思い描く、非現実的な夢じゃない。
夢のゲームができる人になりたいし、そこまでのプロセスもおおよそ分かる
エンツとは勝負することになる。どっちが先に夢を叶えるかって。
「イイ顔するようになったね…」
〈……………〉
あぁ……なんだそういうことかって、理解する。
なんで、メハと別れて進もうとできたか……
なんで、お母さんが乗り気だったか……
なんで、私が違和感を覚えなかったか……
全部思い出した。
お母さんがメハを作った時の話も、それを聞いて『封印』したことも…
このためだったと悟る。
「……ずっとメハが見てる気がしてたんだよ……」
「……うん、見てたよ」
だから弱音を吐きたくなかった。一人でも生きていけるってアピールしたかった。
「……おかえりなさい…?」
「ただいまかな…?リン」
体はどうなったの?
まっさきに思い浮かぶ疑問が顔に出ていたのか、メハが口に出す。
「体はね……リンとお揃いだよ……」
「…………」
ぎゅぅーーー……
抱き着いて実感する。
ある。ほんとにいる……夢じゃない
「……リンなら…諸行無常は…って言ってデータの方が安心したかな?」
そんなこと…あるわけない……
ずっとずっと強く抱き締める。
会えるだけで贅沢なんだから……無限にとは言わない……
でも、それを言って、じゃあお終いって別れるのもできないから言えない。随分と欲張りになったらしい。
「……よく、頑張ったね……」
私は……本当に、恵まれすぎている。
時間の進みは早い。あっという間に夜だ。
「リン…これ以上は…」
「…そうだね」
私はメールの返信を一通り済ませ、明日以降のToDoリストをまとめていた。
コンコンコン……ガチャ
「失礼します。リン様!夜は冷えますので、これを」
「ありがと…」
「警備に戻ります」
「うん、お願い……。ルピカもいいよ、おやすみ」
「リン様、おやすみなさい!」
『パーフェクトボディー』だったビルドは警備員、『不義』だったルピカは、人間のルピカと2人で執事をしている。彼らはセキとセイと名乗るようにしている。
ガチャリ…
「……」
2人がいなくなり、静かな室内で寝息が目立つようになる。
「すーーすーーー」
私の膝の上で寝てるのは『トワ』だ。アピスの作ったAIに名前を付けてあげた。
サラサラ……ピト……
撫でてもトワは起きない。抵抗感がない髪質と柔らかい肌の弾力、温もりは『そこに居ること』を確かに教えてくれる。
「…………」
<これ以上は…>
トワを撫でるのを止める。トワはくせ毛ロングで、メガネをかけた幼女のような見た目をしている。ルコに体をお願いする時に、ランダムにしたから、特に意味はない。
メハが『1』だったから…この子は『永遠』
<ずっと一緒にいたいなんて我儘は言わない…>
私でも持ち上げられる重さだから、起こさないように持ち上げベッドまで運ぶ。
「………………リ…ン……さ………」
「………」
<わたしより長生きしてくれたら…それでいい>
ベッドに寝かせ、毛布を被せる。ルピカの用意したコートのような防寒着を纏ってデッキに出る。
ビュォオーーー
「おまたせ……?」
〔今来たよ…リン〕
シンとの再会。お別れを告げに来たことを察する。
「…そっちはどう?」
〔あぁ…、神の力は取り戻したし、神界に戻るよ。現世へ干渉するつもりはないさ…〕
シンの性格的にも、現世に要がなければ来ることはない。
〈……〉
もうシンとは会えない
分かっていたことだから、そうだよね、と納得した。
「そっか」
〔リンは、どうなんだ…?〕
「わたしは……」
私たちの家は、燃えた。だから、家は再建中で『アピス』が住んでたとされる施設で暮らしている。でも、それは話すまでもない。見て分かるし、知っていること。
〈体調から話すのが通例だよね…〉
「おかげさまで元気だよ…」
あれだけの無理難題をこなして、人間を一時的にやめたっていうのに、今のところ何もない。そして、シンの様子からもデメリットを隠してるようにも思えず、私の病気が治っただけのような状態。
〈少しズルいよね…〉
悩んだり、苦しんだりって方向で私以上だって人は抱えきれないくらいいる。ちょっと命を懸けただけで、ほとんど思い通りなんだから、妬まれるような人生なんだろうなとも思う。
私は気にしないフリをする
お母さんが悩んだのも羨望だった。お金や研究に全力を費やしても、その視線から逃れられない。
助ける側に回り正義であることで、心を守るなんて…私だったら考えないし、思わない
お母さんはずっと真面目だったから、自身の行いを偽善と思って好きになれないし、お父さんとの関係も変に背伸びして本音を言えなかったって聞いた。
お母さんは、私じゃない
『アピス』と闘っても、各国のお偉いさんに挨拶しても、トワに会っても、私が分からない。半神化で世界への解釈が変わっても、ルコ姉ちゃんやお母さんと別れても、メハと別れても……分からない。
体は分かりやすい
体調が正常、悪い時。身体の成長も、老化の進行、大体分かる。
感情は分かんない
『気分が悪い』は分かっても、普段が正常と決めつけることができないし、精神の成長は性悪説や性善説で考えるのか、複合のパターンとか個別の可能性だって考えたけど、しっくりこない。
〈……性悪説は…正直大したことない…〉
だって、人間社会を知るだけのこと…
風習や空気読み、常識を刷り込むってだけで成長じゃない。
性善説だったら、欲を始めとした想いが強まっただけ
〈ただ、思考の好みを知っていくだけのこと…〉
性善説も成長って思えない…
性善説にも、性悪説にも、想定された人生じゃないから、それに縛られて考えられる『成長』じゃないのは当然だったのかなって結論になった。
<過去が…同一性が…>
ソレが私を作るなら…私はなんだろう…
メハと遊んだ記憶が、まず思い浮かぶ。
<……でも、これは遊ばせてもらっただけ>
メハを追いかけて電波塔であった数々を思い返す。
<…自分の手で家族を助けたくなるのは、当たり前……。シンが裏で何かしてたのは分かってたけど、あの時から無茶させてたな…>
そして、『アウトロー』との相対、『アピス』の暴走。失うものは、その時点でなくなってた。
<……前に進もうって…躍起になっていた…>
……………私らしくない。同時に浮かぶ疑問。
なんでだっけ……?
前を向かないと、いけなかった。その熱が疑問を生ませなかった。無我夢中だった。
〈…………〉
気付いたら、責任感を肩に背負いながらも、強い自信を眼に宿した大人たちの前で、感情があるフリをして説明や謝罪をする私がいた。
『見た目を整え、言葉を最小限にし、緊張感を与える』
『沈黙でも言葉が続かないフリをしたら、雄弁』
『演出する人間味と合理的な帰結は、流れを作って答えを誘導させるに有効』
『俯いたら、申し訳なさを演出』
『頭を下げるにも適切なタイミング、回数がある』
『お金や利益をチラつかせ、確証に至るプロセスを踏ませれば、対等になれる』
〈コレが成長とは思いたくない…〉
ここまで考えて、ほとんど変わらなかったことを悟る。色々目に入るし、一時的に気に留めるけど、気にならなくなって意識的に忘れられる。
本当に都合の良い身体だ……
成長はしてないんだろうなと自分の頭の中で結論付ける。
〔……そうか〕
長めの沈黙だった。シンと会話していたことを思い出す。
〔……『オリジナル』とヤイグはどうだ…?〕
「…元気だよ。二人共……」
********************
本当に二人共元気であった。衣食住もちゃんとしているし、ある程度は自由にさせている。
<……>
犯罪者として刑に処されるハズだったヤイグは、外に残った『ネームド』以外のアピスを全て統合し生き地獄になっている点を除けば天国ってだけで……
情報過多にならないようにコントロールして、実質、仕事の奴隷
『オリジナル』も今の処遇で不満はないみたいだし、みんなハッピーってね。
********************
〔…は、ハハ…〕
シンは苦笑いをする。少し甘い対応なのと、私が社畜って言ったから、その二つで変な反応になっている。そう顔に書いてある。
〔【リンク】は…健在だな……〕
「…うん」
今でも、霊は視えるし、【リンク】も、【波紋】もできる。【リンク】はメハとの思い出だった。メハが私に電脳世界を楽しませてくれるように、私は全力で遊んで、【リンク】の世界に引き込むことでお返ししてきたつもりだった。
だから、兵器として使いたくなかった
お母さんは厳しいから、修行の時は使わされたけど、『最強』には使わなかった。作られた人格と言うのもあって、あまり【リンク】したくなかったのもあるし、【リンク】が汚されるみたいで嫌だった。
〔…ルコ達…幸せになってたよ〕
「…そっか」
シンの顔から全て察する。アイナと龍成、龍児に真の意味で迎えられた、と。ルコ姉ちゃんは私のことをすごい心配してくれるお姉ちゃんみたいだったから、控えめに言って嬉しい。
〔ソウはいなかった〕
「……うん、だよね」
〈ソウとメハだけかな…〉
救われなかったのは
〔…ぅ〕
私の顔色が曇ったのを察して、シンが気を利かせようとしている。遮るように喋り始めることにした。
「私にとって…ケイトお母さんは、もちろんお母さんだし、お父さんはお父さんだよ。ソウが面倒見てくれた…、他の霊も相手してくれたし、ルコ姉ちゃんは、本当のお姉ちゃんみたいに振る舞ってくれてさ…メハは双子みたいに歳の近い姉妹だったんだよね……」
〔……〕
思い出が花火大会のように浮かんで沈む。一息に言うつもりだったのに、口ごもってしまう。
〈まだ、続きがある。早く言わないと〉
「ルピカはセイもセキも、執事として支えてくれるし、トワは妹みたいに慕ってくれ…ビルドも番犬以上に心強いよ」
関わってくれた人が多いから…家族の定義が緩くなったと思う。
「大神さんも海月さんも対等に接してくれるし、『真霊』っていう理解者ができたし、エンツやスータは遠くに行ったけど連絡はしてくれるってさ……弟思いのアピスとは話が合うし、ヤイグにだって悪いとこだけじゃないんだなって分かったよ」
〔………〕
シンは真剣に聞いていてくれる。分かってる私らしくない喋りだって。
感情がまた分からなくなる
でも、全部吐き出さないと、もう伝える機会なんてないって分かってるから。
「…それもこれも…隣人として…シンがサポートしてくれたからだよ……」
〔……フッ…〕
シンとのお別れは察していた。だから、頭の隅っこで考えてた。関係性と想いを。
〈近所のお兄さんっていうのが、ピッタリだって思った〉
『妖精の隣人』に因んで笑ってくれると思った。腹抱えて笑うなんて思ってない。私がこんなこと言うとは思わないだろうから、きっと忘れにくいハズだ。
あの時を…毎日夢に見る。メハとの出会い、日常、別れ、再会、またお別れ。
思い出す度に、苦しくなる
平行世界でのアピスの揺さぶりや死の経験……、それは他人事のようにどうでもいい。
結果的にどうにかなったし、死は未だに怖くない
どうにもならないのが、霊達とのお別れとメハとソウの『死』。霊は還るべき場所があるからいいとしても、あの二人はそうじゃない。
選択肢がなかった
コンコン…
「リン様…ご飯の時間です」
「…様はいいよ……お願いしたでしょ?」
「ぅ……気をつけます、リン姉さん…」
「おいで…トワ」
ガチャ…
「…ご飯、冷めちゃいますよ?」
《ずっと一緒にいたいなんて我儘は言わない…》
「ちょっとだけ…」
もふぅ……
後ろから優しく抱き着く。
《わたしより長生きしてくれたら…それでいい》
<……………!>
言葉にしないように力を強めていく。
メハにはできなかったモフモフが好き
〈…この時間が一番安らぎをくれるから…〉
分からない感情を忘れるように別に思考を回す。
「……リン姉様……」
「…もう少しだけ…ごめん…」
トワは癖っ毛を気にしているから、これもできなくなるかもしれないと思うと少し切ない。そこまでの余裕が出てやっと先ほどの衝動が和らぐ。程なくして、朝食に向かった。セキとセイの作った料理は美味しかった。
日常が再現されていく…
街や人、国で見てもそうだった。
以前と全く一緒とはいかなくても、それを補うものが基本的にあるのだから…
書類にサインする。
契約が成立することで次のステップに進む
両者間の納得の証が契約書。それが始まりや終わりの役割をする。各々の『しなきゃ』が終わって、契約上でのやりとりを終えれば、あとはいつも通り。
「…99%日常」
99%…。それはみんなの日常が100%じゃないこと。
そして、わたしたち以外はということ…
「リンさん…、これで一先ずは終わりでいいよ。後は俺らでもできる確認して、最終チェックお願いするくらいだから」
「わかった…ありがとアピス」
「…あぁ。ちゃんと休まないとダメだからな?」
「アピスもね…」
「まぁそうだな。とりあえず、お疲れ…」
ガチャ…
そう、前とは違う。ルピカは2人いるし、ビルドがいる、トワがいる、『オリジナル』という秘書がいる。そして、ヤイグの贖罪を監視しないといけない。
これはしたかったこと
わたしの『しなきゃ』はシンが許してくれなかったけど、『したい』はみんなが背中を押してくれた。
衝動だった……
『しなきゃ』なんて、理性的に言えないくらいの熱がずっとあった。『アピス』の『ネームド』に会っても、命乞いをされても、することは決まっていた。
色々あっても、結果的にはほとんど理想通り…
みんなが手伝ってくれて、わたしだって必死にやり尽くして、やっと成立したわけで後悔はない。でも、忙しさは必要以上に考えることをさせないでくれていた
今だってそうだった…
後処理をしなきゃ、頭を下げなきゃ、責任を取らなきゃ……。『しなきゃ』を優先して、逃げてることも分かっていた。
周りの人が増えても、温もりをちゃんと感じても、同じカタチはない
例えるなら、こうだ。放火で家が燃えて、どうしようもなくなるまで家には愛着を持つし別れもしっかりした。自分の家が燃えなくても放火犯を捕まえるつもりだったけど、私怨が強くなりながらも逮捕する。そんな感じ。
燃え尽き症候群に近いのかも
この次も、これからも、『しなきゃ』と『したい』を見つけないといけない。
今の『しなきゃ』はもう終わる
お母さんやお父さんの遺産で、お金は困らない。放送への出演料はもらわないようにしてるから、収入源はないに等しい。自力で稼がないといけない。これが『しなきゃ』。
利益重視なら、得意分野で勝負すること
〈わたしがしたいこと…〉
お母さんからのプレゼントがある。メハとの思い出をバックアップできたからと、データとしてもらった。
《一回だけ見るね》
私はそう言った。何度もみたら、ダメだと思ったから。記憶が薄れてくる時期に見るも良し、心が弱り切った時に見るも良し。
その選択肢があるだけでいい
<…………>
メハの世界が恋しい…な……
自分が与えられ続けた遊戯は愛に溢れていたし、私もすごく好きだった。
「…………」
涙が頬を伝うのが分かる。
そっか………
一つの答えが浮かび上がる。私は考えながら作業する。
〈わたしは…諸行無常とも言われるこの世界を本気で愛せないんだ……〉
だって、みんな死んでしまうから……
だって、形は崩れるものだから………
だって…、絶対なんてないんだから……
〈わたしは……電脳世界は裏切らないって…信じ切ってたんだ……〉
「……できた……」
できはした。同じではない。なんといってもメハがいない。でも、限りなく再現されたもの。
「……………」
こうじゃない……
形は一緒でも、中身が空虚だ。
たぶん……
今の私に刺さっていない。あの時の私に向けて作られたゲームであって、今の私はまた別だ。心の底から好きな世界を創ろう。
「…………フッ…」
それが商品となって広まっても、私とメハが認められるみたいですごくいい。
決めた
〈ゲームを作ろう〉
自然と口角が上がった。ある意味、初めての人生計画。
これまでのは目の前まで『しなきゃ』と『したい』が迫ってきてた
今は、まっさらなキャンバスにポンと放り出された状態。無知で無垢な時に思い描く、非現実的な夢じゃない。
夢のゲームができる人になりたいし、そこまでのプロセスもおおよそ分かる
エンツとは勝負することになる。どっちが先に夢を叶えるかって。
「イイ顔するようになったね…」
〈……………〉
あぁ……なんだそういうことかって、理解する。
なんで、メハと別れて進もうとできたか……
なんで、お母さんが乗り気だったか……
なんで、私が違和感を覚えなかったか……
全部思い出した。
お母さんがメハを作った時の話も、それを聞いて『封印』したことも…
このためだったと悟る。
「……ずっとメハが見てる気がしてたんだよ……」
「……うん、見てたよ」
だから弱音を吐きたくなかった。一人でも生きていけるってアピールしたかった。
「……おかえりなさい…?」
「ただいまかな…?リン」
体はどうなったの?
まっさきに思い浮かぶ疑問が顔に出ていたのか、メハが口に出す。
「体はね……リンとお揃いだよ……」
「…………」
ぎゅぅーーー……
抱き着いて実感する。
ある。ほんとにいる……夢じゃない
「……リンなら…諸行無常は…って言ってデータの方が安心したかな?」
そんなこと…あるわけない……
ずっとずっと強く抱き締める。
会えるだけで贅沢なんだから……無限にとは言わない……
でも、それを言って、じゃあお終いって別れるのもできないから言えない。随分と欲張りになったらしい。
「……よく、頑張ったね……」
私は……本当に、恵まれすぎている。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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