解放

かひけつ

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第3章 ~よう

心がか⑧

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☆sideシン
階段には『エンターテイナー』だけ。

 「過去見たりできるんだろ…?」

 「まぁ…」

 「見ていい……。その…余計なことした…かもな」

 「…わたしが後から伝えるつもりだった。教え方は…何とも言えない」

 「……」

リンは異能を用いていない。『過去』の観測自体は大したことではないが、リンの【流眼】は残留思念さえも読み取る。ルピカが伝えたかったことすら、異能なしで感じ取ったのだろう。

 「でも、ありがと。言わなきゃいけないことだったから…」

 「……」

なんとなく察する。ルピカは戦線離脱した。

 「…ルピカは、『不義アウトロー』だよ」

 〔アウトロー…?そ、そんな風には…〕

 「…『ネームド』の『不義アウトロー』。アピスの細胞で出来てて、記憶はルピカのものを持ってた」

 〔つまり…元々のルピカは…〕

 「たぶん死んでる」

 〔…『不義アウトロー』ってことは…オレ達の敵になったのか?〕

 「それはない」

口調が強くなったわけでもなく、自然に言い切っているだけだが、信用できると暗に言っている。

 「『真霊』の部屋に行く。エンちゃんはどうする?」

 「…行くだけ行く」

『エンターテイナー』は顔が少しやつれていたが、立ち上がる。

 「肩乗る?」

 「…助かる」

人形のような『エンターテイナー』を肩に乗せ、再び階段を降りる。

 「ねぇ、『真霊』ってどんな人?」

 「…あんまり、関りがなかった…」

 「…あー」

 「…特例的な存在」

 「…?」

 「『真霊』を作るために…生死を彷徨わせ、意識を混濁させ続け、『霊体』に適合するやつを選別してた」

 「どうなったの?」

 「『真霊』ができた。無感情、自主性エゴなし、情動性なし。ただ、『最強ザ・ワン』の次くらいには強い……。『最強ザ・ワン』は『神に最も近い存在』と称していた」

 「へーー」

隠し玉だ。リンが倒したのは『パーフェクトボディー』のみ。現状、敵対しなさそうなのは『エンターテイナー』、『理を司る神の申し子』、『不義アウトロー』の3名。残り7名もここにいると考えられる。

 〔…《半数は敵対しない》って言ってたくないか…?〕

 「…全部知ってるわけじゃない。戦うなら、『最強ザ・ワン』と『真霊』くらい。他は

 「ねぇ。仲良かった『ネームド』とか人物いないの?」

「そんなこと聞くか?」と顔に出しながらも『エンターテイナー』は答える。

 「…『人間的合理性スマート』。世渡り上手」

 「なんか言われたんでしょ?」

 「……はぁ~~。見たきゃ見りゃいいじゃんか…」

 「対等だから」

 「…前も言われた気する」

ジャングル以前であったら、嗤って反撃をもらっただろう。言葉の節々から真意を読まれるなんて、味方でもなければ嫌なことだ。下手したら味方でもっていうレベルでプライバシーを侵害する行為をしている。が、リンの風格と真っ直ぐな想いが、違和感を失くしている。

 「…色んな人格してたら、自分を見失った…。を見てくれる人なんていなかった。あくまで、『アピス』としてか『エンターテイナー』として……」

 「……」

リンは微動だにせず傾聴する。『エンターテイナー』は僅かに揺れる。

 「  

ゾワリ…!

狂人や犯罪常習犯が出す特有のオーラ。

 「違いを作りたくなっていって…努力した。観察や再現に磨きをかけるほど、存在感や仕草で彩るにしろ、『エンターテイナー』として認められる…じゃない…」

陰湿で悲観的、被害妄想を誇張させたような印象を与えかねない独白だが…。

 <これは…>

 「……」

 「《全部含めて、キミだろ?》たったソレだけで救われたんだ…」

 「…素でも話したんだ」

 「あぁ…そんな話してたわけじゃないが、理解者だった」

 「良かったね」

 「…まぁ…そうだな」

リンは『人間的合理性スマート』から、掛けられた言葉が気になっただけで、背景はその言葉を口にするだけで色付くものだ。そう、言う必要はないとも言えた。もちろん、オレに分かりやすく言いたいわけでも、リンに向けてでもないだろう。

 

 <ただ、これは…>

人間性を強く訴えかけてくる。

 <『エンターテイナー』は、悪くない。わざとじゃ…ない>

アピスの計画は悪魔染みている。改めて思う。情を入れたら、殺せるわけがない。

 <これがヤラセだったり、嘘を吐いての罠だったら…よっぽど、楽なものだったのに>

そう思わずにはいられない。同情の余地があれば、許したくなる、優しくしてしまう。勝てるか確定したわけじゃないが、その後の後始末を考えると気が重い。

 〔『ネームド』の生まれ方ってそれぞれどうだったんだ?〕

 「『オリジナル始祖』を基に『工場』で量産。『理を司る神の申し子』と『パーフェクトボディー』は大量のアピスを合体させた上、肉体・記憶・霊体を最適超人化させた人外…。『エンジニアスペシャリスト』もこっち寄り。脳のスペックを追求した感じ」

リンはまるで当事者のようにスラスラと言える。

 「……『人間的合理性スマート』は知識や思考だけさせて、戦闘力は皆無。『不死アンバランス』は、ただの死にたがり。精神操作の影響を強く受けてそう」

 〔精神操作…?〕

 「共通命令で『アピスのために全てを捧げろ』ってやつ」

 〔なるほど…ね〕

 「『パーフェクトボディー』は精神が弱くて、『死にたくない』ってエゴが隠しきれてない…力を持て余した子供だ。本人も無自覚なやつなんだよ…」

 〔お前はないのか…?〕

 「どうだろね…、生きる目的が今ない…」

 「…ごめん。『真霊』に会うの優先する」

 「謝んなくていい。気にすんなよ…」

 <普通の会話が成り立つのも…>

余計なことで、考えがこんがらがるのは良くない。傾聴に徹しよう。

 「『オリジナル始祖』…、もう空っぽなんでしょ?」

 「喋ってるのを見たことがない。ずっと前から壊れてたんじゃないか…?」

 「ふむ」

 「…『エンターテイナー』は量産された中から、頑張ったってだけ。後から、『エンターテイナー』らしいように精神操作、記憶の追加とか改造とかされただけ…そんだけだな」

 「それで小さくれる…と?」

 「外側くらい簡単に作れたし、に入って動かすも良し、僕自身が変形することもあった」

 「…あとは『不義アウトロー』と『最強ザ・ワン』」

 「『不義アウトロー』はルピカの肉体とかから作ったクローンか、アピスをルピカに似せたか。よくは知らん」

 「たぶん…後者」

 「『最強ザ・ワン』は『ネームド』の技術・異能・才能・肉体・記憶とかを統合した究極体。誰の、その真の実力を知らない。たぶん、【瞬間移動テレポ】も持ってるんだろな」

クソゲーじゃないか?改めて思う。『パーフェクトボディー』にはなんとか勝てたが、『真霊』という不安要素がでてきやがった。一瞬とはいえ、邂逅しただけに実力が分かる。『パーフェクトボディー』より何倍も強い。

 「着いたね」

 「…だな」

そんな雑談をしていると、『真霊』の部屋に辿り着く。『真霊』という名前から、[神霊]を想像するのはオレだけじゃない。間違いなく、神や霊オレらを意識して用意しやがった。細心の注意を払って、相対するべきだろう。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~                                                    敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu                                                   世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒)                                                    得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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