解放

かひけつ

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第3章 ~よう

心がか②

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☆sideシン
リンは即座にライオンの前足の間に潜り込む。

 「ア゙ォオン!!」

 「ごめん」

ドッ!ぐわ~ん!!

【魂抜】に似た『魂』まで届く【波紋】故に、『魂』が溢れる。それも複数体の『魂』が混ざった言わばキメラだ。キメラの動きは速かった。想定していたんだ。

 「【魂波紋】」

全方位からの攻撃に見えた霊体攻撃は【魂波紋】で一掃する。あくまで牽制として近寄らせないだけでそこに殺傷性はなかった。その時、草陰からの音にオレたちは気づく。

 「リン様!!」

 〔狼だ!〕

狼がとんでもない速さで乱入する。リンは右手と顔だけ狼に捻るように向け…

 【流円弾】を放つ。

運動エネルギーなどから『エネルギー』だけを抽出し、質量ゼロ、変幻自在、仕事発揮した分のみ消費する異能の極致【流弾】。【流弾】は狼を包むように当たっているが、これでは致死性は低い。

 〔油断するなよ!〕

殺したくないから、【流弾】を円柱形にした【流円弾】で、狼の体内までも作用させる。もし、流円で設置してい場合、加速していた狼は顔から先に運動エネルギーを打ち消され、骨が内臓を突き破り、生存は望めない。

 「倒れますよ!!」

ライオンが倒れる直前で狼の真後ろに移動し、狼の首元を小さくチョップする。【波紋】で神経の伝達が一時的に悪くなるようにする。

 「…急ご」

 「あ…はい!」

【流弾】を用いて、ルピカを浮かばせる。『エンターテイナー』はしっかりルピカに張り付くため妖精のように小さくなっている。

 「……。その子達守ってあげて」

リンは立ち去る前に、そっと呼び掛ける。ひれ伏す動物達へお願いしている。動けないライオンと狼を狙った視線があるからだ。

 「今日だけ、優しく。破ったら悪夢、みせる」

パォオオ、ゥオオオオオン、ガーー!!

森が鳴動するほどの声は、賛同したということに留まらず、親愛や忠誠、士気上げ、他の動物への圧などが、バラバラながらも一つになったものだった。

 「ん。またね」

声を後にしたリンはどこかまた垢抜けた印象を受ける。

 〔お疲れ〕

 「まだまだだよ…」

ぶっきらぼうに言って加速し始めるが、リンも何も思わないわけがない。それはそうと、先ほどの狼を遥かに凌ぐ速度での移動。オレもついていくのでやっとだ。

 「真ん中に階段…?」

 「そーーだよッ」

吹き飛ばされないように頑張る『エンターテイナー』は投げやり気味に答える。道なき道を切り開き、崖を飛び越え、川を跨ぐ、アピスの仕掛けた罠であろう数々を超特急でかいくぐる。

 <…あれは…>

バカ広いこの空間にあった黒子ホクロのような異物。初めは見間違いかとすら疑ったが、対面する。

 そこは開けた空間だった。

大きな植物も、他の外敵も、避けるようにぽっかりと空いた空間。

 「ドォ、MA、ぇえEEE!!」

 「な!」

 「…とまれ?」

本拠地で最初に会ったキメラ人間に似ている発音。獣染みたものだったが、姿を一望して理解する。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~                                                    敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu                                                   世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒)                                                    得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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