解放

かひけつ

文字の大きさ
上 下
99 / 136
第3章 ~よう

ナイ③

しおりを挟む
☆sideシン
山頂のお茶会。リンとルピカを椅子に座らせたケイトは、アピスの土人形を作って問いかける。

 「まず、アピスの行動はなんの意味があったか」

 「こちらの活動を制限させつつ、善人アピール。こちらが下手に勝っても誤解とくのも大変だし、大義名分は取れたから行動しやすい…。これ…おいしい」

 「公表したのは、こちらから、その手をさせないってのもあるじゃろうな。じゃあ、ミラボールの脅威は?」

ケイトはリンに微笑みかけながら、ミラボールを取り出す。ケイトの微笑みは、好きなだけ食べていいと言っていそうだが、リンは食べるのを止めて、眉間にしわを寄せる。

 「圧倒的普及率とリンク機能、と電子機器との最先端。ホログラムから電話、ゲーム、買い物、何から何まで、デバイス統一を起こしかねない程の異常な数と全デバイスに強制P2Pリンクで電脳世界の支配。位置情報の独占による世界規模のマッピング。一つでもやばい。全部乗せ。構造不明」

 「時間の流れを遅くしたフィルムで覆うことで回線遮断を試みるも」

 「アピスが飛んでサーバー役して、対策済み。点移動してきた原理も謎」

 「爆破の原理もそれの応用でしょうね…」

ミラボールをふよふよと空中で泳がせたかと思えば、真っ二つに異能で割く。分解した部品を踊るように取り出し、部品を再度組み直し、ミラボールを再構成する。

 「パッと驚く技術が入っているわけでもない。まぁ最適化したら、リンクとホログラムくらいはできるだろうねぇ」

バキッ!

ミラボールを粉々に破壊し、逆再生のように元に戻す。

 「ミラボールがアピスである可能性は限りなく低いときた…」

 「ん」

 〔さらっと恐ろしいこと、言うなぁ…おい…〕

 「さすれば、異能を持ちのアピスを無力化できたのが一番の戦果なんかねぇ?」

 「『霊体』を縛るのは有効的。ただ、アピスの親玉(?)が見捨てたのは、まだ戦力があるから……。アピスたちに妖精がのも印象的。嫌々、一緒にいるみたい」

その話は聞き覚えがあった。電波塔の時も、リンがそう言ったから確信が持てたんだ。

 〔ソレの理由なら…知ってるぞ〕

 「……」

2人は口を閉ざす。当ててしまうからもしれないから、言い始めたオレの肩身が狭まるとでも言うのだろうか。割とあり得るんだよなぁ…。

 〔アピスは『隣人』を人質にして妖精を従わせている。ルール違反禁忌を何個もやって、理不尽を実現してる。『瞬間移動』もそのせいかだと思う〕

妖精を複数従え、クローン媒体も沢山ある。まるで兵器。龍児と闘っていた時とは、スケールが違う。

 「そうじゃな…『瞬間移動』アレは…物質の再構成じゃない。『トンネル効果』みたいなもんじゃからのぅ」

 「…だよね」

知らない情報出てきたんだが??

 〔な、なんで『トンネル効果』って……?〕

 「小さい粒子とかで起こる現象…それに似てる感じだったから、たぶんそう」

噛み合っているんだよな??

 〔…リンやケイトもできるのか?〕

2人は目を合わせて頷く。

 「無理ね。原理が理解わからないもの」

 <???>

それがトンネル効果ってことじゃないの?とは飲み込む。

 「どう異能を使ったら、あぁなるのか…ね」

 〔なるほど…〕

でも、思う。リンを山頂ここに飛ばした似た原理じゃないのかと。

 「【ワープゲート】と『瞬間移動』は別物ぞ。【ゲート】は『時空』の応用で移動時間をほぼゼロにしてるだけじゃ。タクシーみたいなもんやね。でも、『瞬間移動アッチ』は自然現象のように、『空間』を操作した形跡はない」

 〔…ほぅ?〕

 「『座標』こそ見てるみたいだけど、異能は別のとこに使ってるみたい。結果は『瞬間移動』、そうなる仕掛けに異能を使ってる。おそらくね」

 〔…なんとなく分かった〕

本当に、どちらも大概だ。

カチャン…

ケイトはティーカップを置き、リンに切り出す。

 「はて、アピスが逃げたのは?どう考える?」

 「手の内を曝したくないのと意味がないと思ったから。お母さんの力は脅威に思われてたと思う」

 「正しいと思うわ」

 「でも、お母さんも決め手があったわけじゃない。悪手はわたしの選択肢がなくなること。利害一致で手を引いた」

 「あってると思うわ」

 「……ついていけない」

 「まぁ、無理あるな」

ルピカとグルバンが肩を並べているのが、オレから見たら新鮮で少し嬉しい。それはさておき、

 〔情報戦果はこんなもんかな?〕

 「異議なし」

 「こんなもんじゃな」

 〔これからどうする?〕

 「ば、場所なら知ってます…」

 「海底じゃろ…?」

 「は、はい」

 「親和力が浸透しきっていて、わてでも中は知らんよ」

 「…右に同じ」

 「海面まで【ワープゲート】作るけどいいかしら?」

 「ん」

 「わ、私の記憶ではエレベーターで病院まで行けてたんですが……」

 「『記憶』見るぞ?」

 「あ、お願いします…」

 「ふむ。これも例の応用みたいね」

 「あー。エレベーターと『瞬間移動』か…。なるほど」

 「え…そうだったんですか……?」

 「つまり、直接連結するルートはないし、かと言って【トンネル】もできない」

 「『海水』をどけて、直接建物に…」

 〔目途は立ったな…〕

話が一度途切れる。これはお茶会の終わりを意味していた。

 「ルピカは…どうしたいの?」

 「私はカーセ家に強い恩義があ」

 「責任負わなくていい」

 「…そ、そんなつもりじゃ!」

 「もし、ルピカがわたしたちと無関係だったら、参加しないでしょ?」

 「足手纏いだからですか…?」

 「……」

 「たとえ仕事じゃなくだっても人間性に惹かれています!アピスやつの素性を知っていたら、早いうちに手を打たないといけないことくらい分かります…!」

 「うん」

ルピカは義憤に満ちた顔つきから、メッキが剝がれるように涙の気配が溢れ出る。

 「……ただ…関係がないだなんて、そんな悲しいこと言わないでくださいよ!!私にはもう…この居場所ここしかないんです!!」

 「…うん」

 「足手纏いなのは分かっています!大切なものを失うかもしれないのに『何もしない』なんてできないし、使い捨てで良いから役に立ちたい!!」<盾になるとか、活躍とかいう次元じゃないのは分かっている。でも、奇跡的にリン様が死ぬを阻止できたら…、もし、戦線復帰までの時間稼ぎができるのなら……死んでいた命捧げていい!!>

言っていることと『想って』いることが同時に聞こえる。ルピカの強すぎる『想い』は異能として表出しそうなほど粗ぶっていた。

 「わかるよ…その気持ち」

 「あ…あぁ…!」

リンは受け止めることを選んだ。

 「一緒に行こう」

 「ありがとうございます…」

 「しておるな…リン」

 「うん…」

ケイトが【ゲート】を作っていた。アピスの拠点に一番近い浜辺だそうだ。ルピカも、リンも【ゲート】をくぐる。嫌な予感は唐突に来るものだ。

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

。初期微動なんだ。コレで、だ。異常事態なのは一目瞭然。まさかと思って、【ゲート】をくぐり抜けてみる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 浜辺でも地震が起きている。

オレとケイトは揺れを体感することはないし、冷や汗だって出ない、そのはずなんだ。


 


激しい振動は地球が鳴いているようだ。誰もが直感する。

 これは…前触れだ…。

始まったら、止められない終末の合図。そう思わずにはいられない程の……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...