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第3章 ~よう
閑話~あのヒ、あのトキ、あのバショで~⑤
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《sideアピス
足には自信があった。本当は文武両道よろしくの何でもできるマンを目指していたが、頭が良いやつもフィジカルに優れたやつもいっぱいいることを知っている。
だから、自分が主人公じゃないことは分かっていたつもりだった
それを誤魔化すかのように口だけは回るようになった。まぁ何もかも、中途半端なレベルで終わってるのが、情けない限りだ。と、自虐をしてる間に商店街まで着く。ルートは絞れている。いつも使う道で間違いないだろう。そして、人目に付かない場所を探す。
「ったく…何度目だ……あのバカ共」
路地裏。誰も来ないような暗いそこでソレは行われていた。『兄』である自分がいち早く駆け付けなければ卑劣な弱いもの虐めを止められない。
「おい、こっちだよ。こっちに来いよ。ハハハ」
「や、やめてよ。か、帰らないと」
「目が見えないんだろ!道案内してやるっていってるんだ」
乾いたような下卑たる笑いに、『兄』以前に人として嫌悪感を抱いて、足が早まり声を荒げる。
「俺の弟になにしてんだぁ!!!」
「やべぇ。アピスだ!逃げろ!!」
土埃に塗れた弟は小さくうずくまっていた。蜘蛛の子を散らすように…とまではいかないが、三人組の悪ガキが逃げ去る。
「■■!大丈夫か!?」
「…お、お兄ぃちゃん?」
小さく震え、まだ何かされるんじゃないのかと本能的に怯えている。それを見てズキリと心が痛む。
「痛い所あるか?」
「全然ないよ!…ついさっき、こっちに引っ張られただけだから……」
<……だけじゃないだろ…!>
言いたくなる否定は、言えばより弟を苦しめると分かっていたから飲み込む。そして俺はできる限り優しく抱き締める。
「…ごめん」
いつもは回るこの口も、どうしても言葉に詰まるとこうも味気ない言葉しかでない…。
「…あはは…なんで、兄さんが謝るの…。兄さんは悪くないよ」
<やめてくれ…俺は…>
「俺は…」
「兄さんは悪くないんだよ……」
首にひんやりとした液体が滴る。
《出てってよ…悪いのは、僕の眼なんだろ……?もう、虐めないでよ…。みんなと同じように見させてよ。なんで、こんな目に合わなきゃいけない…?》
夜に弟が布団で言っていた泣き言は、色んな他者への恨みつらみではなく、誰も責めないために病自体に憎しみを抱くようになった……。人間の心理的防衛機構に基づくものではあるが、あまりにも優しい責任転嫁に声を掛けようにも、本人にとっては聞かれたくない弱音だって反応をされた。
俺には耐え難い悲痛な心の叫びにしか聞こえず、自分の無力さを痛感する始まりに当たる出来事
目一杯、頭をぶん回して仲間だと言い聞かせる。
「…■■。俺は味方だしさ…どんなお前でも、好きなんだぜ…」
「………ぅん」
そう、俺は、目の前で盲目と悪意に立ち向かう弟に何一つしてあげれていない、このままじゃ家族とすら呼べない。主人公どころか、脇役としても使えない。だから…
「…兄さん……いつも…ありがと…」
「……大したことはしてないさ…」
子供同士の喧嘩の抑止力として、大人を使うことがよくあるが、周りの大人で力になってくれる人はいない。弟が誤解されてるのが、辛い。将来のことを考えるにしても、未だに成果が挙げられていないのが現状。ほんと、自分の無能さに飽き飽きする》
足には自信があった。本当は文武両道よろしくの何でもできるマンを目指していたが、頭が良いやつもフィジカルに優れたやつもいっぱいいることを知っている。
だから、自分が主人公じゃないことは分かっていたつもりだった
それを誤魔化すかのように口だけは回るようになった。まぁ何もかも、中途半端なレベルで終わってるのが、情けない限りだ。と、自虐をしてる間に商店街まで着く。ルートは絞れている。いつも使う道で間違いないだろう。そして、人目に付かない場所を探す。
「ったく…何度目だ……あのバカ共」
路地裏。誰も来ないような暗いそこでソレは行われていた。『兄』である自分がいち早く駆け付けなければ卑劣な弱いもの虐めを止められない。
「おい、こっちだよ。こっちに来いよ。ハハハ」
「や、やめてよ。か、帰らないと」
「目が見えないんだろ!道案内してやるっていってるんだ」
乾いたような下卑たる笑いに、『兄』以前に人として嫌悪感を抱いて、足が早まり声を荒げる。
「俺の弟になにしてんだぁ!!!」
「やべぇ。アピスだ!逃げろ!!」
土埃に塗れた弟は小さくうずくまっていた。蜘蛛の子を散らすように…とまではいかないが、三人組の悪ガキが逃げ去る。
「■■!大丈夫か!?」
「…お、お兄ぃちゃん?」
小さく震え、まだ何かされるんじゃないのかと本能的に怯えている。それを見てズキリと心が痛む。
「痛い所あるか?」
「全然ないよ!…ついさっき、こっちに引っ張られただけだから……」
<……だけじゃないだろ…!>
言いたくなる否定は、言えばより弟を苦しめると分かっていたから飲み込む。そして俺はできる限り優しく抱き締める。
「…ごめん」
いつもは回るこの口も、どうしても言葉に詰まるとこうも味気ない言葉しかでない…。
「…あはは…なんで、兄さんが謝るの…。兄さんは悪くないよ」
<やめてくれ…俺は…>
「俺は…」
「兄さんは悪くないんだよ……」
首にひんやりとした液体が滴る。
《出てってよ…悪いのは、僕の眼なんだろ……?もう、虐めないでよ…。みんなと同じように見させてよ。なんで、こんな目に合わなきゃいけない…?》
夜に弟が布団で言っていた泣き言は、色んな他者への恨みつらみではなく、誰も責めないために病自体に憎しみを抱くようになった……。人間の心理的防衛機構に基づくものではあるが、あまりにも優しい責任転嫁に声を掛けようにも、本人にとっては聞かれたくない弱音だって反応をされた。
俺には耐え難い悲痛な心の叫びにしか聞こえず、自分の無力さを痛感する始まりに当たる出来事
目一杯、頭をぶん回して仲間だと言い聞かせる。
「…■■。俺は味方だしさ…どんなお前でも、好きなんだぜ…」
「………ぅん」
そう、俺は、目の前で盲目と悪意に立ち向かう弟に何一つしてあげれていない、このままじゃ家族とすら呼べない。主人公どころか、脇役としても使えない。だから…
「…兄さん……いつも…ありがと…」
「……大したことはしてないさ…」
子供同士の喧嘩の抑止力として、大人を使うことがよくあるが、周りの大人で力になってくれる人はいない。弟が誤解されてるのが、辛い。将来のことを考えるにしても、未だに成果が挙げられていないのが現状。ほんと、自分の無能さに飽き飽きする》
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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