解放

第3章 ～よう

閑話～あのヒ、あのトキ、あのバショで～③

《☆sideシン
それは…『陽』だまりのような温かさはなく、異能によって安全な空間にと守られたこの場所が、こうも無機質に映るのはなぜだろう。

　そうじゃない

リン、ケイト、オレに、遠くから見守るグルバンとルコ。時間は通常の速度で進んでいるはずなのに凍ったように会話も動きもないのは……仕方ないと言うしかないか……

　＜んなわけねぇーーだろ！！＞

声を出さないために、唇をかむように自傷する。一番の当事者である彼女らを差し置いて、オレだけが被害者面なんてできないため、声は出さなかった。いつもは、誰もいないところで、その多大なるストレスを叫ぶことで発散させていた。

　＜喜ぶべきことはまだ、リンがいる。みんなは、そこまで絶望してるわけではない。まだ…＞

と言葉を綴ろうとして、そうじゃないと悟る。

　＜それで喜んだら、妥協じゃないか。アピスの蛮行を災害や自然の摂理のように容認するのは、あっちゃいけない＞

『非』があるとするならアイツでしかなく、怒りを、悔しさを募らせる……。当然だ。人のありふれた幸せや純粋で優しい望みが踏みにじられるのを何度も、何度も、台無しにされてきた。育てた花壇を踏み荒らされる、いや、思い出深く、大事な自然がいっぱいある山を燃やされたような…………。とにもかくにも、人道的な行為とは到底言えない。

　＜なんでこんなに殺気立ってるかって？？死んだ奴のことをって？？？＞

自分の中で暴走しかける自分と、そうでない自分、様々な感情の奔流が、ここで爆発する。

　＜こ　れ　で　終　わ　り　な　わ　け　な　い　だ　ろ＞

全身全霊の否定。疑問に思っていた一部の感情でさえも、芯から納得感から押し黙る。根拠はない。でも、アピスが死ぬわけがないという圧倒的な説得力が死を連想させない。それほどまで、異常なのだ。そもそも、あいつが自殺を考えること自体が怪しい。いや、おかしい。オレの分身はアピスに見張っていた。爆発も関係ない。霊のような体だからだ。

　アイツは、蒸発した

分身はそうとしか認識できなかった。爆発が強すぎて肉片だけになっても、その確認はできる。熱されて消えたわけでもない。爆弾と一体化していたとしても、説明にならないし、全身をエネルギーに変換した？もしくは、別次元に逃げた？分からないことが多すぎる。

　歯痒い……

考えても、分からない。今、オレができるのは、しなければならないのは、この光景から眼を反らしてはいけない》